とんかつをめぐる点と線 【一力】
2019.07.13
三鷹通りの武蔵野郵便局の前を走っていて、向かいの「割烹 一力」に暖簾が掛かっているのに気づいた。
このお店は夜しか営業していないものと思っていたので興味を引かれ、その先の横断歩道を渡って引き返した。
入り口の引き戸に“おすすめ定食”の品書きが掛けてある。
“やわらかとんかつ定食”の文字。
いろいろな思いが頭の中を駆け巡った。

夜のみの営業と思い込んでいたにもかかわらず、この「一力」の存在はだいぶ前から認識していた。
昔よく入ったとんかつ屋と同じ名前だったからだ。

しかし、こちらの看板は“ふぐ・うなぎ”。
業種がかなり違うのでたまたま店名が同じとしか考えたことはなかったが、“とんかつ”の文字を見て「もしや…?」と思ってしまったのだ。

伊勢丹吉祥寺店(=F&Fビル、現コピス吉祥寺)の地下にあった「とんかつ 一力」は、吉祥寺在住時にいちばん頻繁に通ったお店の一つ。かすかな記憶では、同じF&F地下で一度移転したが、伊勢丹閉店(2010年)の5年ほど前に地下飲食店街が総入れ替えとなるまでは営業を続けていたと思う。F&F退去後の去就を知らない。

こちら「割烹 一力」、お店のつくりは座敷席がメインのまさに割烹風で、座卓が4卓。
ほかに窓際の狭い通路の奥に3人掛けテーブル、カウンター5席。
カウンターの端の席に座り、やわらかとんかつ定食780円を注文。

配膳台の向こうの調理場のご主人とホール係のおかみさんをチラチラと、何度見直しても見覚えはない。
そりゃそうだ。ふぐ・うなぎの割烹では、とんかつ屋からの転身には技能のタイプが違いすぎる。
だいいちお店の匂い。久米川「ながしま」や閉店した東久留米「浜波」などと同じ、長年魚を扱ってきた料理屋特有の匂いが染み付いている。
ここは魚と豆腐の揚げ出しやサバ塩焼きを頼むのが正解だったんだろうな… と、ひとり苦笑。
やわらかとんかつ定食は、思ったよりはるかに充実した内容だった。

メインの皿の付け合わせ野菜はキャベツ・ニンジン・紫キャベツのミックス、マカロニサラダは魚肉ソーセージ入り。十分厚みのあるとんかつは、やわらかで食べやすい。みそ汁は豆腐とワカメ。
そして小鉢が3つも。白菜漬けとキュウリのぬか漬け、大根葉とジャコのおろし和え、酢みそ和えはこんにゃくかと思ったら、おきゅうと。
これだけおかずがそろっていたらご飯が足りなくなりそうだが、ちょうどいいバランス… というくらい、つまりご飯がかなり多い。
これで780円。おそれいりました <(_ _)>

「昔、吉祥寺に同じ名前のとんかつ屋があったんですけど…」
違うとは思ったが一応聞いてみた。昔そういうことはできなかったが、年をとると厚かましくなる。
はじめまったく知らない様子だったが、伊勢丹地下と言うとお二人とも徐々に記憶が蘇っていったようだ。
「ほら、同じ名前のお店があるよって言ってたじゃない」とおかみさん。
「うちが始めた平成3年にはまだあって、いつの間にかなくなってましたね…」とご主人。「いまどこにあるんですか?」
「それがわからないんです」と僕。「表にとんかつって出てたから、もしやと…」

「おいしかったんですか?」
「おいしかったんです。でもこっちのほうがもっとおいしいです」と、こういうことも、若いころは絶対言えなかったよなぁ…(笑)。
「ありがとうございます(笑)」と、一見近寄り難い職人オーラのご主人、話してみればすごくgentleで。
時を経て感動の再会、とはいかなかったが、おかげでとてもいいお店と出会うことができた。

[DATA]
一力
東京都武蔵野市中町3-3-1
[Today's recommendation]


◆ 猫写真はこちら その1 その2 その3 ◆

https://youtu.be/mXtE2Rku7AE
三鷹通りの武蔵野郵便局の前を走っていて、向かいの「割烹 一力」に暖簾が掛かっているのに気づいた。
このお店は夜しか営業していないものと思っていたので興味を引かれ、その先の横断歩道を渡って引き返した。
入り口の引き戸に“おすすめ定食”の品書きが掛けてある。
“やわらかとんかつ定食”の文字。
いろいろな思いが頭の中を駆け巡った。

夜のみの営業と思い込んでいたにもかかわらず、この「一力」の存在はだいぶ前から認識していた。
昔よく入ったとんかつ屋と同じ名前だったからだ。

しかし、こちらの看板は“ふぐ・うなぎ”。
業種がかなり違うのでたまたま店名が同じとしか考えたことはなかったが、“とんかつ”の文字を見て「もしや…?」と思ってしまったのだ。

伊勢丹吉祥寺店(=F&Fビル、現コピス吉祥寺)の地下にあった「とんかつ 一力」は、吉祥寺在住時にいちばん頻繁に通ったお店の一つ。かすかな記憶では、同じF&F地下で一度移転したが、伊勢丹閉店(2010年)の5年ほど前に地下飲食店街が総入れ替えとなるまでは営業を続けていたと思う。F&F退去後の去就を知らない。

こちら「割烹 一力」、お店のつくりは座敷席がメインのまさに割烹風で、座卓が4卓。
ほかに窓際の狭い通路の奥に3人掛けテーブル、カウンター5席。
カウンターの端の席に座り、やわらかとんかつ定食780円を注文。

配膳台の向こうの調理場のご主人とホール係のおかみさんをチラチラと、何度見直しても見覚えはない。
そりゃそうだ。ふぐ・うなぎの割烹では、とんかつ屋からの転身には技能のタイプが違いすぎる。
だいいちお店の匂い。久米川「ながしま」や閉店した東久留米「浜波」などと同じ、長年魚を扱ってきた料理屋特有の匂いが染み付いている。
ここは魚と豆腐の揚げ出しやサバ塩焼きを頼むのが正解だったんだろうな… と、ひとり苦笑。
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やわらかとんかつ定食は、思ったよりはるかに充実した内容だった。

メインの皿の付け合わせ野菜はキャベツ・ニンジン・紫キャベツのミックス、マカロニサラダは魚肉ソーセージ入り。十分厚みのあるとんかつは、やわらかで食べやすい。みそ汁は豆腐とワカメ。
そして小鉢が3つも。白菜漬けとキュウリのぬか漬け、大根葉とジャコのおろし和え、酢みそ和えはこんにゃくかと思ったら、おきゅうと。
これだけおかずがそろっていたらご飯が足りなくなりそうだが、ちょうどいいバランス… というくらい、つまりご飯がかなり多い。
これで780円。おそれいりました <(_ _)>

「昔、吉祥寺に同じ名前のとんかつ屋があったんですけど…」
違うとは思ったが一応聞いてみた。昔そういうことはできなかったが、年をとると厚かましくなる。
はじめまったく知らない様子だったが、伊勢丹地下と言うとお二人とも徐々に記憶が蘇っていったようだ。
「ほら、同じ名前のお店があるよって言ってたじゃない」とおかみさん。
「うちが始めた平成3年にはまだあって、いつの間にかなくなってましたね…」とご主人。「いまどこにあるんですか?」
「それがわからないんです」と僕。「表にとんかつって出てたから、もしやと…」

「おいしかったんですか?」
「おいしかったんです。でもこっちのほうがもっとおいしいです」と、こういうことも、若いころは絶対言えなかったよなぁ…(笑)。
「ありがとうございます(笑)」と、一見近寄り難い職人オーラのご主人、話してみればすごくgentleで。
時を経て感動の再会、とはいかなかったが、おかげでとてもいいお店と出会うことができた。

[DATA]
一力
東京都武蔵野市中町3-3-1
[Today's recommendation]


◆ 猫写真はこちら その1 その2 その3 ◆

https://youtu.be/mXtE2Rku7AE
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Re: No title
つかりこさま
言われて初めて気づきましたが、そういやそうですね。
子どものころからそれとなく見聞きしてきた名字です。
人質会社…
昔そういうの多かったですね(いまも?)
学生時代にバイトしてた某放送局には某ホテルのご子息がいらっしゃいました。
あと某百貨店には某外様藩の末裔。僕から見れば主君ですわ。
こちら非財閥割烹の定食、大注目です。
言われて初めて気づきましたが、そういやそうですね。
子どものころからそれとなく見聞きしてきた名字です。
人質会社…
昔そういうの多かったですね(いまも?)
学生時代にバイトしてた某放送局には某ホテルのご子息がいらっしゃいました。
あと某百貨店には某外様藩の末裔。僕から見れば主君ですわ。
こちら非財閥割烹の定食、大注目です。
No title
僕は、「一力」と聞くと別の “点” を思い出すんです。
あまりはっきり書くと、個人情報保護的観点でやばいのですが・・・
その昔、某大手広告会社の社員と一緒にクライアントのところへ
打ち合わせに行ったんですよ。
その方、このお店の名前と同じ苗字だったのですが。
名刺交換した時、クライアントの一人が、
「珍しいお名前ですね。東北に同じ苗字の大財閥なんかがあったりしますよね、
新聞社をやってる」と言うと、
その人、「あ、それ実家です」だと!
さすが、「人質会社」だわ、と驚いた一件でした。
宮城ご出身なので、ご存知ですよねぇ?
(はっきり書いてるじゃんよー・汗・汗・汗)
もっと驚いたのは、その同じ大手広告会社の別の営業担当と
クライアントに打ち合わせに行った時、
やはり、相手が名刺を見て、「珍しいお名前ですねー、たしか皇室に
こういう苗字があったはずですが」という問いに、
「あ、それウチです」という人もいました。
実家が、二条城の近くだそうです。(汗)
そこまで、人質にするのかい、と思った第二件もありました。
カツがでかい!いろいろ付いて安い!財閥的じゃない!
いい店ですねー。
あまりはっきり書くと、個人情報保護的観点でやばいのですが・・・
その昔、某大手広告会社の社員と一緒にクライアントのところへ
打ち合わせに行ったんですよ。
その方、このお店の名前と同じ苗字だったのですが。
名刺交換した時、クライアントの一人が、
「珍しいお名前ですね。東北に同じ苗字の大財閥なんかがあったりしますよね、
新聞社をやってる」と言うと、
その人、「あ、それ実家です」だと!
さすが、「人質会社」だわ、と驚いた一件でした。
宮城ご出身なので、ご存知ですよねぇ?
(はっきり書いてるじゃんよー・汗・汗・汗)
もっと驚いたのは、その同じ大手広告会社の別の営業担当と
クライアントに打ち合わせに行った時、
やはり、相手が名刺を見て、「珍しいお名前ですねー、たしか皇室に
こういう苗字があったはずですが」という問いに、
「あ、それウチです」という人もいました。
実家が、二条城の近くだそうです。(汗)
そこまで、人質にするのかい、と思った第二件もありました。
カツがでかい!いろいろ付いて安い!財閥的じゃない!
いい店ですねー。
Re: No title
hippoponさま
この値段、素晴らしいですよね。
とんかつだけでもお値段以上、て感じでした。
駿河台下あたりでとんかつというと、錦華通り入り口の古い洋食屋で食べた記憶が…
あとはだいたい「いもや」という、いつまでも学生ノリから抜け出せないままでした。
たぶんそのへん、何もかもなくなってるんでしょうね。
この値段、素晴らしいですよね。
とんかつだけでもお値段以上、て感じでした。
駿河台下あたりでとんかつというと、錦華通り入り口の古い洋食屋で食べた記憶が…
あとはだいたい「いもや」という、いつまでも学生ノリから抜け出せないままでした。
たぶんそのへん、何もかもなくなってるんでしょうね。
Re: No title
ツキさま
三鷹駅からそれほど遠くないけど隠れ家感がある、落ち着けるお店だと思います。
このとんかつ定食から推して、天ぷらや刺し身の定食はかなり期待できるんじゃないでしょうか。
近いうちにもう一度行ってみたいです。
三鷹駅からそれほど遠くないけど隠れ家感がある、落ち着けるお店だと思います。
このとんかつ定食から推して、天ぷらや刺し身の定食はかなり期待できるんじゃないでしょうか。
近いうちにもう一度行ってみたいです。
No title
おいしそ、、
大きなとんかつ、、太ってるけど 白いご飯と がっつりいただいてみたい。
これ値段があまりにも素晴らしくないですか!
少し前に神田駿河台あたりの散歩。学生と小さなお店がいっぱいで
とんかつ、、見なかった、、
カレー屋は行列が出来てましたけど、、
大きなどんぶりでご飯、、学食が無理で苦労したんです、
今ははやいですよ~~。
ほんとおいしそぅ、、
大きなとんかつ、、太ってるけど 白いご飯と がっつりいただいてみたい。
これ値段があまりにも素晴らしくないですか!
少し前に神田駿河台あたりの散歩。学生と小さなお店がいっぱいで
とんかつ、、見なかった、、
カレー屋は行列が出来てましたけど、、
大きなどんぶりでご飯、、学食が無理で苦労したんです、
今ははやいですよ~~。
ほんとおいしそぅ、、
No title
おきゅうとですか。親方は、九州の方なんでしょうか。
皿を並べればトレーからはみ出るラインナップに、画像でもわかる厚いトンカツ。
凛と構えたお店に、落ち着いたご夫婦。居心地良さげなところを見つけましたね。
皿を並べればトレーからはみ出るラインナップに、画像でもわかる厚いトンカツ。
凛と構えたお店に、落ち着いたご夫婦。居心地良さげなところを見つけましたね。