聖地を代表する武蔵野うどん 【ますや】
2017.04.08
武蔵野うどんの聖地、東村山を代表する老舗「ますや」。
「じゃがいも」のところでも書いたが、ますやは地元を代表する名店であり、われわれの誇りでもある。
稲作に向かない武蔵野台地では小麦主食の文化圏が形成されていた。うどんはハレの日の行事食であり、寄り合いや人寄せ(冠婚葬祭)のときにうどんを打って出す習慣があった。
大ざっぱにいうと、そうした流れをくむのが武蔵野うどんである。

武蔵野うどんブームに伴って“コシ信仰”みたいな流れができ、武蔵野うどんはコシが命、みたいにいつの間にかなっていた。
それはちょっと違うんじゃないか、と僕は思う。

初めてますやに入ったとき、ひと口食べて「ゆで置きなんだ…」とがっかりした。モ
ソモソと食べ進めるうちに「ん?」となった。
それまであまり意識したことのない感覚というか、麺がおいしいのである。甘味と香りがどんどん引き立ってくる。

自分はそれまで麺というものはコシが第一、いやコシがすべてと考えていたフシがあって、そういう感覚を初めて味わった。そのうどんにはまさに蒙を啓かれる思いがした。
コシよりも何よりも、麺は味が第一なのではないか? 以来、うどんを食べるときはそう意識するようになった。

「何にする?」とますやのおばちゃん。
「温かいのと冷たいの」と僕。
温盛り(妻)と冷盛り(僕)という意味だ。
壁に料理写真が掛けてあり、一応「肉汁うどん」とかいう名前があるのだが、よくわからないので以前どおりのやり方で注文する。これでたぶん以前どおりの品が出てくるはず。常連客は注文を聞かれもしないし。

肉汁うどん(たぶん)700円。
天ぷらはゴボウとニンジン、糧はホウレンソウ。豚肉のコクと香りが立つ肉汁。

この麺はゆで置きでもかなりしっかりしており、ところどころ意外なほどの歯応えを残す。たぶん水分・塩分が絶妙なのだと思う。
これを基準に、ちょっと水っぽいとか硬すぎとか、ちょうどいいとか、無意識のうちにも定めながらうどんというものを食べているような気がする。

地粉の素朴な香りとゴボウの土くささの相性の良さ。
そこに自家製の柚子胡椒を入れて混然一体となったところをモソモソと食べる幸せ。
ますやのうどんはズルズルではなくモソモソとなる。

交通量の多い交差点付近に位置するにもかかわらず、店内は不思議なほど静かだ。外の時間と中のそれでは流れる速度が異なるため物理的非干渉のようなことが起きている、のかもしれない。
支払いを済ませて「ごちそうさま」とあいさつすると、おばちゃんが「甘茶飲んでいきな」
「ん?」と妻と顔を見合わせる。「えーと…? あ、そうか!」
「そうだよ、今日はお釈迦さまだ」
ありがたく甘茶をごちそうになり、晴れやかな気分でお店を後にした。

[DATA]
ますや
東京都東村山市久米川町4-33-10

2017.04.08 あずきや/東京都東村山市諏訪町1-29-34
うぐいす餅100円、玄米まんじゅう90円、茶まんじゅう70円、草もち80円(いずれも特売日[第2土日]価格)

久米川辻を下った徳蔵寺に花祭りのお参りに

https://youtu.be/LyXI7IYrSjM
武蔵野うどんの聖地、東村山を代表する老舗「ますや」。
「じゃがいも」のところでも書いたが、ますやは地元を代表する名店であり、われわれの誇りでもある。
稲作に向かない武蔵野台地では小麦主食の文化圏が形成されていた。うどんはハレの日の行事食であり、寄り合いや人寄せ(冠婚葬祭)のときにうどんを打って出す習慣があった。
大ざっぱにいうと、そうした流れをくむのが武蔵野うどんである。

武蔵野うどんブームに伴って“コシ信仰”みたいな流れができ、武蔵野うどんはコシが命、みたいにいつの間にかなっていた。
それはちょっと違うんじゃないか、と僕は思う。

初めてますやに入ったとき、ひと口食べて「ゆで置きなんだ…」とがっかりした。モ
ソモソと食べ進めるうちに「ん?」となった。
それまであまり意識したことのない感覚というか、麺がおいしいのである。甘味と香りがどんどん引き立ってくる。

自分はそれまで麺というものはコシが第一、いやコシがすべてと考えていたフシがあって、そういう感覚を初めて味わった。そのうどんにはまさに蒙を啓かれる思いがした。
コシよりも何よりも、麺は味が第一なのではないか? 以来、うどんを食べるときはそう意識するようになった。

「何にする?」とますやのおばちゃん。
「温かいのと冷たいの」と僕。
温盛り(妻)と冷盛り(僕)という意味だ。
壁に料理写真が掛けてあり、一応「肉汁うどん」とかいう名前があるのだが、よくわからないので以前どおりのやり方で注文する。これでたぶん以前どおりの品が出てくるはず。常連客は注文を聞かれもしないし。

肉汁うどん(たぶん)700円。
天ぷらはゴボウとニンジン、糧はホウレンソウ。豚肉のコクと香りが立つ肉汁。

この麺はゆで置きでもかなりしっかりしており、ところどころ意外なほどの歯応えを残す。たぶん水分・塩分が絶妙なのだと思う。
これを基準に、ちょっと水っぽいとか硬すぎとか、ちょうどいいとか、無意識のうちにも定めながらうどんというものを食べているような気がする。

地粉の素朴な香りとゴボウの土くささの相性の良さ。
そこに自家製の柚子胡椒を入れて混然一体となったところをモソモソと食べる幸せ。
ますやのうどんはズルズルではなくモソモソとなる。

交通量の多い交差点付近に位置するにもかかわらず、店内は不思議なほど静かだ。外の時間と中のそれでは流れる速度が異なるため物理的非干渉のようなことが起きている、のかもしれない。
![]() | ![]() |
支払いを済ませて「ごちそうさま」とあいさつすると、おばちゃんが「甘茶飲んでいきな」
「ん?」と妻と顔を見合わせる。「えーと…? あ、そうか!」
「そうだよ、今日はお釈迦さまだ」
ありがたく甘茶をごちそうになり、晴れやかな気分でお店を後にした。

[DATA]
ますや
東京都東村山市久米川町4-33-10

2017.04.08 あずきや/東京都東村山市諏訪町1-29-34
![]() | ![]() |

![]() | ![]() |

https://youtu.be/LyXI7IYrSjM
- 関連記事
-
- ニューノーマルな日常とは 【ますや】
- おもてなしの心 【ますや】
- 真夏のパラドックス 【ますや】
- 普通にいちばん好きな店 【ますや】
- 聖地を代表する武蔵野うどん 【ますや】
Sponsored Link