櫻の下で 【櫻華】
2018.03.29
神田川、井の頭公園と、今週立て続けにお花見スポットにニアミスしている。
ほかにこのあたりで桜の名所は? と考えて思い浮かんだのが玉川上水。
小金井の玉川上水堤の桜並木は古くから名勝「小金井桜」として知られた。
その起源は元文2(1737)年、幕府の命により新田開発の一環として玉川上水の両岸に植樹されたヤマザクラの並木。いまも小金井橋を中心に約6.5kmにわたって桜並木が続く。
歌川広重『江戸近郊八景 小金井橋夕照』(1838年ごろ) 川瀬巴水『小金井の桜』(1935年)
近年、車の排気ガスや病虫害、またケヤキをはじめとする高木の成長に伴う生育環境の悪化などにより樹勢の衰え、枯死が目立ち、並木の存続が危ぶまれている。
小金井市は「玉川上水・小金井桜整備活用計画」を策定し、名勝小金井桜復活へ向けた事業を進めている。

小金井橋に行ってみると、橋のたもとには何本か若木が植えられていた。
そこから下流域の右岸には古木の並木が残る。

以前歩道橋があった場所に新たに架けられた平右衛門橋を渡り、左岸を下る。この先は高木がかなり伐採されたようで、両岸とも明るく開けている。関野橋を渡って右岸を引き返す。平右衛門橋の上流の人道橋を渡り、交番横から小金井公園へ。
公園内の売店「グリーンテラスさくら」で昼ごはんもいいかなと思ったのだ。
だがここはちょうど桜エリアで花見客がいっぱい。売店も大混雑。
先ほど前を通った中華料理店「櫻華」が少しずつ意識に浮上。
櫻の華だし、サクラ見に来たわけだからちょうどいいか、と。

公園正門を出て100mちょっと。このお店はいつも混んでいるが、のぞいてみると、1時すぎで奇跡的にもカウンターには1人のみ。その人が入り口側に座っていたこともあって、普段は避けるいちばん奥の席に座った。

なぜいつもは避けるのか。
こちらの店主のおとうさんは、“炎の達人”として多摩地区では広く知られた存在。
カウンターの奥の席の目の前、厨房のちょうどそのあたりに強力バーナーがある。おとうさんの持ち場である。
炒め物の注文が入るたびに、盛んに火の手が上がる。怖くて近寄れない。
いま、何の気なしに奥に踏み込んでしまったのは、聖地の波動の後退を知らず知らずのうちに感じ取っていたからだろうか…。

注文はチャーハン。
ここはいつも3人体制。おとうさんとおかみさんとパート風のおばちゃん。
おばちゃんからオーダーが通っているはずだが、なかなかおとうさんシステムが起動しない。目の前で座ったまま。
ふと頭上の壁にそれを見つけた。
「体力の衰えにより6月30日(土)で閉店させていただきます」
そういうことだったか…。

あらためて目の前の人物の様子をうかがうと、事実、体力の衰えは隠しようもないのだ。
昼のピーク時のあとということもあるだろうが、疲れきって立ち上がる気力もなさそうに見える。

座ったままのおとうさんの横で、おかみさんが中華鍋を振る。
鍋の動きは大きくないが、炒めはていねい。
味は変わらずおいしく、量もいつもながらバカみたくに多い。
黙々とチャーハンをいただく。

この2日でこのような張り紙を5枚見た。
さすがにショックは大きいが、そういうタイミングなのかもしれないと考える。
天皇陛下の生前退位のご意向表明と具体的日程の決定は、昭和の戦士たちの進退に少なからぬ影響を及ぼしているんじゃないだろうか。
昭和が遠くなったと思っていたら、平成も終わる…。潮時。
武蔵野市境1-16-1 中華料理「五十番」(左)、武蔵野市桜堤3-1-6 そば「近江家」(右)
昨日の「ピリカ」のご夫妻もそうだったが、櫻華のおとうさんの表情はとても穏やか。
閉店というとネガティブなイメージだが、ピリカのごあいさつにあるように「引退」と考えればおめでたいこと。
一つの職業を全うしたわけだから。
まだ早いが、おつかれさまでした。

[DATA]
櫻華
東京都小金井市関野町1-6-3
[Today's recommendation]

https://youtu.be/Fsw2NQb5xSA




3月29日、玉川上水堤
神田川、井の頭公園と、今週立て続けにお花見スポットにニアミスしている。
ほかにこのあたりで桜の名所は? と考えて思い浮かんだのが玉川上水。
小金井の玉川上水堤の桜並木は古くから名勝「小金井桜」として知られた。
その起源は元文2(1737)年、幕府の命により新田開発の一環として玉川上水の両岸に植樹されたヤマザクラの並木。いまも小金井橋を中心に約6.5kmにわたって桜並木が続く。
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近年、車の排気ガスや病虫害、またケヤキをはじめとする高木の成長に伴う生育環境の悪化などにより樹勢の衰え、枯死が目立ち、並木の存続が危ぶまれている。
小金井市は「玉川上水・小金井桜整備活用計画」を策定し、名勝小金井桜復活へ向けた事業を進めている。

小金井橋に行ってみると、橋のたもとには何本か若木が植えられていた。
そこから下流域の右岸には古木の並木が残る。

以前歩道橋があった場所に新たに架けられた平右衛門橋を渡り、左岸を下る。この先は高木がかなり伐採されたようで、両岸とも明るく開けている。関野橋を渡って右岸を引き返す。平右衛門橋の上流の人道橋を渡り、交番横から小金井公園へ。
公園内の売店「グリーンテラスさくら」で昼ごはんもいいかなと思ったのだ。
だがここはちょうど桜エリアで花見客がいっぱい。売店も大混雑。
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先ほど前を通った中華料理店「櫻華」が少しずつ意識に浮上。
櫻の華だし、サクラ見に来たわけだからちょうどいいか、と。

公園正門を出て100mちょっと。このお店はいつも混んでいるが、のぞいてみると、1時すぎで奇跡的にもカウンターには1人のみ。その人が入り口側に座っていたこともあって、普段は避けるいちばん奥の席に座った。

なぜいつもは避けるのか。
こちらの店主のおとうさんは、“炎の達人”として多摩地区では広く知られた存在。
カウンターの奥の席の目の前、厨房のちょうどそのあたりに強力バーナーがある。おとうさんの持ち場である。
炒め物の注文が入るたびに、盛んに火の手が上がる。怖くて近寄れない。
いま、何の気なしに奥に踏み込んでしまったのは、聖地の波動の後退を知らず知らずのうちに感じ取っていたからだろうか…。

注文はチャーハン。
ここはいつも3人体制。おとうさんとおかみさんとパート風のおばちゃん。
おばちゃんからオーダーが通っているはずだが、なかなかおとうさんシステムが起動しない。目の前で座ったまま。
![]() | ![]() |
ふと頭上の壁にそれを見つけた。
「体力の衰えにより6月30日(土)で閉店させていただきます」
そういうことだったか…。

あらためて目の前の人物の様子をうかがうと、事実、体力の衰えは隠しようもないのだ。
昼のピーク時のあとということもあるだろうが、疲れきって立ち上がる気力もなさそうに見える。

座ったままのおとうさんの横で、おかみさんが中華鍋を振る。
鍋の動きは大きくないが、炒めはていねい。
味は変わらずおいしく、量もいつもながらバカみたくに多い。
黙々とチャーハンをいただく。

この2日でこのような張り紙を5枚見た。
さすがにショックは大きいが、そういうタイミングなのかもしれないと考える。
天皇陛下の生前退位のご意向表明と具体的日程の決定は、昭和の戦士たちの進退に少なからぬ影響を及ぼしているんじゃないだろうか。
昭和が遠くなったと思っていたら、平成も終わる…。潮時。
![]() | ![]() |
昨日の「ピリカ」のご夫妻もそうだったが、櫻華のおとうさんの表情はとても穏やか。
閉店というとネガティブなイメージだが、ピリカのごあいさつにあるように「引退」と考えればおめでたいこと。
一つの職業を全うしたわけだから。
まだ早いが、おつかれさまでした。

[DATA]
櫻華
東京都小金井市関野町1-6-3
[Today's recommendation]

https://youtu.be/Fsw2NQb5xSA




3月29日、玉川上水堤
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達人の炎のチャーハン 【櫻華】
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Re: おっはーです
つかりこさま
> あの辺は、名所と言われないまでにしても、
> 公園内を含めて桜を充分に楽しめますよね。
↑そうですね。
やはり江戸をキーワードに探っていくと楽しめますよね。
> この前、花小金井のグリーンロードって言うんですか、
> そこに桜を観に行ってみました。
> すごい人出でした。(汗)
↑グリーンロードは別名多摩湖自転車道で、僕のよく使うルートです。
このタイミング、駅南東に向かう小金井公園行きの一般客と、北西のたけのこ公園に向かうローカル客と、要するにどっちも混みますね。
グリーンロード歩きのいちばんのぜいたくは、小平ふるさと村の古民家で土日限定(数量も限定)の「小平糧うどん」を食べることです。
これはイイですよ。
> 人情も味わえる昭和食堂、桜とともに散る、ですかね。
> 来春、また咲きませんかねぇ。
↑うう… そうだといいんですけど…。
> あの辺は、名所と言われないまでにしても、
> 公園内を含めて桜を充分に楽しめますよね。
↑そうですね。
やはり江戸をキーワードに探っていくと楽しめますよね。
> この前、花小金井のグリーンロードって言うんですか、
> そこに桜を観に行ってみました。
> すごい人出でした。(汗)
↑グリーンロードは別名多摩湖自転車道で、僕のよく使うルートです。
このタイミング、駅南東に向かう小金井公園行きの一般客と、北西のたけのこ公園に向かうローカル客と、要するにどっちも混みますね。
グリーンロード歩きのいちばんのぜいたくは、小平ふるさと村の古民家で土日限定(数量も限定)の「小平糧うどん」を食べることです。
これはイイですよ。
> 人情も味わえる昭和食堂、桜とともに散る、ですかね。
> 来春、また咲きませんかねぇ。
↑うう… そうだといいんですけど…。
おっはーです
広重の浮世絵、いいですよね。
関野橋の近くに住んでいたことがあるので、
何か親近感のようなものを感じます。
あの辺は、名所と言われないまでにしても、
公園内を含めて桜を充分に楽しめますよね。
喜平橋の五差路のあたりの桜の風景もきれいですよ。
(もう、散っちゃったかなあ)
この前、花小金井のグリーンロードって言うんですか、
そこに桜を観に行ってみました。
すごい人出でした。(汗)
人情も味わえる昭和食堂、桜とともに散る、ですかね。
来春、また咲きませんかねぇ。
関野橋の近くに住んでいたことがあるので、
何か親近感のようなものを感じます。
あの辺は、名所と言われないまでにしても、
公園内を含めて桜を充分に楽しめますよね。
喜平橋の五差路のあたりの桜の風景もきれいですよ。
(もう、散っちゃったかなあ)
この前、花小金井のグリーンロードって言うんですか、
そこに桜を観に行ってみました。
すごい人出でした。(汗)
人情も味わえる昭和食堂、桜とともに散る、ですかね。
来春、また咲きませんかねぇ。
Re: 櫻華
美雨さま
植樹事業は八代吉宗の時代だそうです。
書いていて気づいたんですけど、「櫻華」のほかに、公園内の売店が「グリーンテラスさくら」、閉店したおそば屋さんの住所が「桜堤」と、この記事に「さくら」の付いた名前が3つも出てくるんですね。
それだけでもいかに桜にゆかりが深いかがわかりました。
小金井南口はすっかり面白みがなくなってしまいましたね。
残っている昭和物件はシャトー小金井くらいでしょうか。
あそこも店子はずいぶん減っていて…。
残っているところだけでも入ってみたいですね。
植樹事業は八代吉宗の時代だそうです。
書いていて気づいたんですけど、「櫻華」のほかに、公園内の売店が「グリーンテラスさくら」、閉店したおそば屋さんの住所が「桜堤」と、この記事に「さくら」の付いた名前が3つも出てくるんですね。
それだけでもいかに桜にゆかりが深いかがわかりました。
小金井南口はすっかり面白みがなくなってしまいましたね。
残っている昭和物件はシャトー小金井くらいでしょうか。
あそこも店子はずいぶん減っていて…。
残っているところだけでも入ってみたいですね。
櫻華
玉川上水から小金井公園に続く桜並木には、歴史だけでなく植樹した人たちの思いが伝わってきますね。
小金井の桜は余計に心打たれます。
この中華屋さんも、そんな思いを大切に屋号にこめ、長きにわたりこの店を営んでこられたのでしょうね。
そんなお店が、ひとつ、またひとつと暖簾をおろしていくのはとても寂しいことですね。
私なども、小金井の南口商店街があとかたもなくなくなってしまったときは、胸にぽっかり風穴があいたような寂しさを覚えたものでした。
hobohoboさんは、昭和の見張り番なんですね。
これからも、しっかりと見守ってくださいね。
小金井の桜は余計に心打たれます。
この中華屋さんも、そんな思いを大切に屋号にこめ、長きにわたりこの店を営んでこられたのでしょうね。
そんなお店が、ひとつ、またひとつと暖簾をおろしていくのはとても寂しいことですね。
私なども、小金井の南口商店街があとかたもなくなくなってしまったときは、胸にぽっかり風穴があいたような寂しさを覚えたものでした。
hobohoboさんは、昭和の見張り番なんですね。
これからも、しっかりと見守ってくださいね。
Re: No title
TORUさま
ここの駐車場は止めにくいですよね。
ほんと、おつかれさまでしたって感じです。
それにしても、このところこういうのが続いて…。
小まめに見て回らないといけない気がしてきました。
ここの駐車場は止めにくいですよね。
ほんと、おつかれさまでしたって感じです。
それにしても、このところこういうのが続いて…。
小まめに見て回らないといけない気がしてきました。
No title
小金井のこの道は休日の夕方に通ることがありますが、結構混むんですよね、、、。しかし昭和も遠くなってきましたね。「引退」と考えると次を楽しんでくださいね!って思いますね。