おしることニラ焼きと、常滑焼と 【うたたね】
2018.03.24
出かける前に郵便受けをのぞくと1通の手紙が届いている。
差出人は「うたたね」とある。
あ、お願いしていた案内かな、と思った。
出先の昼食の席で開けてみた。
卯月(第9回)落語の会「喫茶庵・うたたね ―ねぼけ会―」のチラシ。
演目は安田康子さんの『天狗裁き』。
B5判の三つ折りが長形4号白無地の二重和封筒に入っているあたり、古風な折り目正しさを感じる。

メッセージを記したはがき2枚が同封してあった。
1枚は落語会とお食事会のご案内とお誘い。もう1枚には次のように書いてある。
「店のお客様より、うたたねの紹介文をみせて頂きました。本当に有難うございました」
どなたかこのブログの以前の記事をご覧になった方が、うたたねの店主さんに教えてくださったということのようなのだ。

このブログを始めてまもなく1年になるが、このような反応をいただいたのは初めて。
店主さんはインターネットをやらない方だから、僕の発信がアナログ変換されて返ってきたわけである。
その不確かなようでいて必然的にも思えるプロセスには情報伝達の抱える課題と対策がいろいろ含まれるようでもあるし、それだけにかけがえのないメッセージにも感じられる。

そもそも、こちらからごあいさつに伺うのが筋なのではないかという気もする。
冬の間に一度おしるこをいただこうと思っていて、1カ月ほど前の日曜日に一度伺ったが、休みだった。日曜はレコード鑑賞会を行うので喫茶は休みと聞いていたことを思い出した。
あれこれ勘案すれば、土曜日の今日、伺うしかないようだ。

店主さんがにこやかに迎えてくれる。
「載せていただいてありがとうございます」
「いえ… 勝手なことしてすみませんでした」
みたいなやりとり。
おしるこを2つお願いする。
たくさんの焼き物や絵に囲まれ、ほっと落ち着く空間。

ちょうど冬枯れの藤棚を通して柔らかな西日が差し込み、うらうらとする。
石油ストーブの上で鉄瓶がことこと。
店先の植え込みに大株のクリスマスローズがシングルピンクの花を咲かせ、何輪か大テーブルの花生けにアオモジ、クロモジと一緒に挿してある。
粒あんのおしるこは、しっかり甘く懐かしい味。
箸休めに、厚むきの大根の千切りを使った浅漬けキムチ。

お茶の追加は小さな急須で。
「これでも2人分は入るんですよ」と店主さん。「もう亡くなりましたけど、常滑の陶芸家さんの作品で…」
形はかわいらしいが、窯変藻掛け? の荒々しい模様が印象的だ。
ほかにも同じ作家さんの急須をいくつか見せていただいた。どれも模様のタイプが異なる。

驚いたのが、高さ30cmはありそうな大急須。お店の何周年だかのお祝いにいただいたとのこと。
「急須としても使えますけど、お花を生けるほうがいいですよね」

おしるこが終わるころ、ニラ焼きを出してくれる。
「この間教えてもらったんですけど、簡単なんですよ。小麦粉と卵、あとみそを入れます」
「子どものころ、こういうの作ってもらってました。懐かしい。うちの場合、ニラ入ってませんでしたけど(笑)」
いつも何かサービスを付けてくれる。

外で高齢のご婦人がじっとガラス戸の張り紙をにらんでいる。
「チラシ読んでるんじゃない?」と店主さん。
僕が少し引き戸を開けると、笑いながら「こんにちわ」と入ってきた。
ちょうどお暇をする頃合い。

せっかくお誘いいただいた落語の会だが、月曜なのでちょっと厳しい。
次の機会にまたご案内くださるようお願いをして、お店をあとにした。

[DATA]
陶器・喫茶 うたたね
東京都東村山市富士見町5-5-47
[Today's recommendation]

https://www.youtube.com/watch?v=NjH6z89W6Qs


出かける前に郵便受けをのぞくと1通の手紙が届いている。
差出人は「うたたね」とある。
あ、お願いしていた案内かな、と思った。
出先の昼食の席で開けてみた。
卯月(第9回)落語の会「喫茶庵・うたたね ―ねぼけ会―」のチラシ。
演目は安田康子さんの『天狗裁き』。
B5判の三つ折りが長形4号白無地の二重和封筒に入っているあたり、古風な折り目正しさを感じる。

メッセージを記したはがき2枚が同封してあった。
1枚は落語会とお食事会のご案内とお誘い。もう1枚には次のように書いてある。
「店のお客様より、うたたねの紹介文をみせて頂きました。本当に有難うございました」
どなたかこのブログの以前の記事をご覧になった方が、うたたねの店主さんに教えてくださったということのようなのだ。

このブログを始めてまもなく1年になるが、このような反応をいただいたのは初めて。
店主さんはインターネットをやらない方だから、僕の発信がアナログ変換されて返ってきたわけである。
その不確かなようでいて必然的にも思えるプロセスには情報伝達の抱える課題と対策がいろいろ含まれるようでもあるし、それだけにかけがえのないメッセージにも感じられる。

そもそも、こちらからごあいさつに伺うのが筋なのではないかという気もする。
冬の間に一度おしるこをいただこうと思っていて、1カ月ほど前の日曜日に一度伺ったが、休みだった。日曜はレコード鑑賞会を行うので喫茶は休みと聞いていたことを思い出した。
あれこれ勘案すれば、土曜日の今日、伺うしかないようだ。

店主さんがにこやかに迎えてくれる。
「載せていただいてありがとうございます」
「いえ… 勝手なことしてすみませんでした」
みたいなやりとり。
おしるこを2つお願いする。
![]() | ![]() |
たくさんの焼き物や絵に囲まれ、ほっと落ち着く空間。

ちょうど冬枯れの藤棚を通して柔らかな西日が差し込み、うらうらとする。
石油ストーブの上で鉄瓶がことこと。
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店先の植え込みに大株のクリスマスローズがシングルピンクの花を咲かせ、何輪か大テーブルの花生けにアオモジ、クロモジと一緒に挿してある。
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粒あんのおしるこは、しっかり甘く懐かしい味。
箸休めに、厚むきの大根の千切りを使った浅漬けキムチ。

お茶の追加は小さな急須で。
![]() | ![]() | ![]() |
「これでも2人分は入るんですよ」と店主さん。「もう亡くなりましたけど、常滑の陶芸家さんの作品で…」
形はかわいらしいが、窯変藻掛け? の荒々しい模様が印象的だ。
ほかにも同じ作家さんの急須をいくつか見せていただいた。どれも模様のタイプが異なる。

驚いたのが、高さ30cmはありそうな大急須。お店の何周年だかのお祝いにいただいたとのこと。
「急須としても使えますけど、お花を生けるほうがいいですよね」

おしるこが終わるころ、ニラ焼きを出してくれる。
「この間教えてもらったんですけど、簡単なんですよ。小麦粉と卵、あとみそを入れます」
「子どものころ、こういうの作ってもらってました。懐かしい。うちの場合、ニラ入ってませんでしたけど(笑)」
いつも何かサービスを付けてくれる。

外で高齢のご婦人がじっとガラス戸の張り紙をにらんでいる。
「チラシ読んでるんじゃない?」と店主さん。
僕が少し引き戸を開けると、笑いながら「こんにちわ」と入ってきた。
ちょうどお暇をする頃合い。

せっかくお誘いいただいた落語の会だが、月曜なのでちょっと厳しい。
次の機会にまたご案内くださるようお願いをして、お店をあとにした。

[DATA]
陶器・喫茶 うたたね
東京都東村山市富士見町5-5-47
[Today's recommendation]

https://www.youtube.com/watch?v=NjH6z89W6Qs


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Re: うたたね
美雨さま
住宅街の片隅にある隠れ家感いっぱいのお店です。
まったりして、本当にうたたねしそうになります。
知る限り国分寺と吉祥寺には古い名曲喫茶が残っていますが、こういう距離感でクラシック音楽に接することができる場はそんなにないかもしれませんね。
そういえば国立の「月草」という土日限定の名曲喫茶では、音楽の後ろでユーリー・ノルシュテイン作品が流れてましたよ(笑)。
住宅街の片隅にある隠れ家感いっぱいのお店です。
まったりして、本当にうたたねしそうになります。
知る限り国分寺と吉祥寺には古い名曲喫茶が残っていますが、こういう距離感でクラシック音楽に接することができる場はそんなにないかもしれませんね。
そういえば国立の「月草」という土日限定の名曲喫茶では、音楽の後ろでユーリー・ノルシュテイン作品が流れてましたよ(笑)。
うたたね
こんな和風のクラシック喫茶があるんですね。
とかく名曲喫茶には、こじゃれたというか気取ったお店も多い中、
ここは美しいメロディーに癒され寝落ちしちゃっても許していただけそうな
嬉しいまったり感がありますね。^^
常滑焼の下半分にお店の歴史を感じます。
桜もみごろ、本当にうたたねしたくなる春の宵です。^^
私も昨日は墨田川でお花見でした。
浅草は日本人と同じくらい外国人がいました。
世界的にサクラブームのようですね^^
とかく名曲喫茶には、こじゃれたというか気取ったお店も多い中、
ここは美しいメロディーに癒され寝落ちしちゃっても許していただけそうな
嬉しいまったり感がありますね。^^
常滑焼の下半分にお店の歴史を感じます。
桜もみごろ、本当にうたたねしたくなる春の宵です。^^
私も昨日は墨田川でお花見でした。
浅草は日本人と同じくらい外国人がいました。
世界的にサクラブームのようですね^^