来し方が凝縮されたそば屋のカレー 【しなの】
2018.03.09
このところなぜかそば屋に入る機会が多くなっていて、このブログの記事用に過去のそば屋の写真を網羅的にチェックしていたら、久米川の「しなの」の品書きにカレーがあることに気づいた。こういうお店のカレーは絶対おいしいだろうな… と想像したら、無性に食べたくなったのだ。
なにしろそこいらのカレーじゃない。“カーレライス”である。

「しなの」は久米川駅南口、「西友久米川店」脇の道(西友通り商店街)を抜けて左折、西武新宿線の踏切(小平第5踏切)手前に位置する。
看板には“古来の自家製造の店”とあって、それがどういうものかは知らないが、実際この店のそばは独特。ウェーブがかかって、ねっとりとした歯応えである。

しかし、やはりというか、古来製法とはいえソバ・ウドンのみでは心もとないとでもいうのか、“街そば”の例に漏れず品書きが多彩。
特に中華部門は人気で、ラーメン類がよく出ている印象を受ける。
もちろん御飯の部も、ソースカツ丼まで手がけるフトコロの深さは注目に値する。
そしてこういう展開においてHub的役割を担っているのがカレーだったりするのである。

1時15分を回って昼のピーク時は過ぎているが、それなりに覚悟を決めないと入れないお店である。意外に客入りがいい。で、クセの強そうな常連さんが多いという経験則。
もう一つ、この店は何の気なしに暖簾をくぐった瞬間、時空の狭間に飛ばされそうになるから要注意。
このあたりの印象というか考察のようなものを以前書いているが、とにかくこの店のタイムスリップ感は半端ない。昭和ノスタルジーをお求めの方にはまたとない優良物件である。

13:17――おそるおそる引き戸を開けて、そっと店内をうかがう。
お客さん、ゼロ。やれやれ…。
本日は戦略がシンプルかつ明快なので迷いようがない。
カツカレーがあればカツカレー。なければ以前撮ったメニュー写真で見つけてあるエッグカレー。
カウンター上の壁に額付き黒板の品書きが3枚――“自家製造の手打そば・うどん”“中華の部”“御飯物”
ありました、ロース肉カツカレー。
1050円。高いな…。
迷ってしまった(笑)。

結局、お試しに1000円超はリスキーと判断、エッグカレー720円に。
エッグカレーは品書きで“カーレライス”の横にあって、正式には“エックカレー”。
カタカナ文字の濁音・拗音・長音の扱いに昔の人は不得手で、こういうほのぼの表現をよく見かける。ラメーンとかチャーシュ麺とかスパゲッテーとか。

そのエックカレー、予想に反して目玉焼きのせ。いや、勝手にスライスゆで卵を想像していただけだが。
ご飯はきっちりメロン形のライス型で盛り付けてある。丸皿は鮮やかなターコイズブルーで、カレーを取り囲む青・白・黄のコントラストが美しい。横には真っ赤な福神漬け。

写真を撮らせてもらっていると、おかあさんが「最近、皆さん写真撮ってるけど、どうするのかしら?」と。
「どうだ、おいしそうだろう! と自慢するんですよ」と僕。
「でもうちなんか年寄りの作るものだからねぇ…」
と戸惑いの表情を浮かべる。
こういうやりとりは、いつも複雑な気持ちにさせられる。

「どれぐらいやられてるんですか?」
「昭和45年からだから… 昭和って64年までよね? もう49年ぐらいになるのかしら…」
「もう50年ですね。こないだ、向こうのラーメン屋さんが、『もう残ってるの、うちとおそば屋さんだけ』って言ってました」
「あらま(笑)。ラーメン屋って… 『狩勝』さん?」
「そう」
「狩勝さん、がんばってるからね。何年ぐらいになるって?」
「40年って」
「じゃ、うちのほうが早いのね(笑)」
カレーは、50年分のいろんなものが濃縮したような、甘く優しい味わい。
このカレーでカレーうどんにしたらさぞおいしかろう… と、ここを経由して次に展開するのがそば屋のカレー。
古きよき時代を巡り歩くような楽しさが、街のそば屋の魅力である。

[DATA]
しなの
東京都東村山市萩山町4-1-22
[Today's recommendation]


Ralph Vaughan Williams
『Fantasia on theme by Thomas Tallis, rtc.』
Sir John Barbirolli(Cond)/ Sinfonia Of London, etc
https://www.youtube.com/watch?v=ANyy5_Zpbr0


◆ 猫写真はこちら ◆
このところなぜかそば屋に入る機会が多くなっていて、このブログの記事用に過去のそば屋の写真を網羅的にチェックしていたら、久米川の「しなの」の品書きにカレーがあることに気づいた。こういうお店のカレーは絶対おいしいだろうな… と想像したら、無性に食べたくなったのだ。
なにしろそこいらのカレーじゃない。“カーレライス”である。

「しなの」は久米川駅南口、「西友久米川店」脇の道(西友通り商店街)を抜けて左折、西武新宿線の踏切(小平第5踏切)手前に位置する。
看板には“古来の自家製造の店”とあって、それがどういうものかは知らないが、実際この店のそばは独特。ウェーブがかかって、ねっとりとした歯応えである。

しかし、やはりというか、古来製法とはいえソバ・ウドンのみでは心もとないとでもいうのか、“街そば”の例に漏れず品書きが多彩。
特に中華部門は人気で、ラーメン類がよく出ている印象を受ける。
もちろん御飯の部も、ソースカツ丼まで手がけるフトコロの深さは注目に値する。
そしてこういう展開においてHub的役割を担っているのがカレーだったりするのである。

1時15分を回って昼のピーク時は過ぎているが、それなりに覚悟を決めないと入れないお店である。意外に客入りがいい。で、クセの強そうな常連さんが多いという経験則。
もう一つ、この店は何の気なしに暖簾をくぐった瞬間、時空の狭間に飛ばされそうになるから要注意。
このあたりの印象というか考察のようなものを以前書いているが、とにかくこの店のタイムスリップ感は半端ない。昭和ノスタルジーをお求めの方にはまたとない優良物件である。

13:17――おそるおそる引き戸を開けて、そっと店内をうかがう。
お客さん、ゼロ。やれやれ…。
本日は戦略がシンプルかつ明快なので迷いようがない。
カツカレーがあればカツカレー。なければ以前撮ったメニュー写真で見つけてあるエッグカレー。
カウンター上の壁に額付き黒板の品書きが3枚――“自家製造の手打そば・うどん”“中華の部”“御飯物”
ありました、ロース肉カツカレー。
1050円。高いな…。
迷ってしまった(笑)。

結局、お試しに1000円超はリスキーと判断、エッグカレー720円に。
エッグカレーは品書きで“カーレライス”の横にあって、正式には“エックカレー”。
カタカナ文字の濁音・拗音・長音の扱いに昔の人は不得手で、こういうほのぼの表現をよく見かける。ラメーンとかチャーシュ麺とかスパゲッテーとか。

そのエックカレー、予想に反して目玉焼きのせ。いや、勝手にスライスゆで卵を想像していただけだが。
ご飯はきっちりメロン形のライス型で盛り付けてある。丸皿は鮮やかなターコイズブルーで、カレーを取り囲む青・白・黄のコントラストが美しい。横には真っ赤な福神漬け。

写真を撮らせてもらっていると、おかあさんが「最近、皆さん写真撮ってるけど、どうするのかしら?」と。
「どうだ、おいしそうだろう! と自慢するんですよ」と僕。
「でもうちなんか年寄りの作るものだからねぇ…」
と戸惑いの表情を浮かべる。
こういうやりとりは、いつも複雑な気持ちにさせられる。

「どれぐらいやられてるんですか?」
「昭和45年からだから… 昭和って64年までよね? もう49年ぐらいになるのかしら…」
「もう50年ですね。こないだ、向こうのラーメン屋さんが、『もう残ってるの、うちとおそば屋さんだけ』って言ってました」
「あらま(笑)。ラーメン屋って… 『狩勝』さん?」
「そう」
「狩勝さん、がんばってるからね。何年ぐらいになるって?」
「40年って」
「じゃ、うちのほうが早いのね(笑)」
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カレーは、50年分のいろんなものが濃縮したような、甘く優しい味わい。
このカレーでカレーうどんにしたらさぞおいしかろう… と、ここを経由して次に展開するのがそば屋のカレー。
古きよき時代を巡り歩くような楽しさが、街のそば屋の魅力である。

[DATA]
しなの
東京都東村山市萩山町4-1-22
[Today's recommendation]


Ralph Vaughan Williams
『Fantasia on theme by Thomas Tallis, rtc.』
Sir John Barbirolli(Cond)/ Sinfonia Of London, etc
https://www.youtube.com/watch?v=ANyy5_Zpbr0


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Re: ちはー
つかりこさま
そうなんですよ。
どういう製法なのか、ユニークな縮れそばなんです。
中華麺みたいにもんで寝かせるんでしょうか?
いろいろ楽しめるお店ですよ。
怖さもありますけど(笑)。
そうなんですよ。
どういう製法なのか、ユニークな縮れそばなんです。
中華麺みたいにもんで寝かせるんでしょうか?
いろいろ楽しめるお店ですよ。
怖さもありますけど(笑)。
Re: こんにちは
くろすけさま
ものすごく煮込んであって、具はほとんど崩れているようなカレーでした。
僕基準ですが、辛さは全然ないですね。
野菜の甘味が強い感じです。
あと福神漬けがすごく甘かったです(笑)。
型押ししてあるライスって、洋食屋さんのワンプレートランチみたいなのではときどきありますけど、カレーはずいぶん久々に見たような気がします。
いろいろ懐かしいお店です。
ものすごく煮込んであって、具はほとんど崩れているようなカレーでした。
僕基準ですが、辛さは全然ないですね。
野菜の甘味が強い感じです。
あと福神漬けがすごく甘かったです(笑)。
型押ししてあるライスって、洋食屋さんのワンプレートランチみたいなのではときどきありますけど、カレーはずいぶん久々に見たような気がします。
いろいろ懐かしいお店です。
ちはー
文中リンクで、しなのさんの過去ログを拝見しましたが、
おおーっ、この蕎麦の麺はユニークですねー。
太めでちぢれてる?!
これは、逆にそそられますわー。
おおーっ、この蕎麦の麺はユニークですねー。
太めでちぢれてる?!
これは、逆にそそられますわー。
こんにちは
懐かしい感じのカレーですね^^
個人的に強い辛さが苦手なもので・・・最近は辛さを強調したり、スパイスの
種類を売りにしたりで、外でカレーを食べる機会は皆無に近くて^^;
こちらのお店ではいかがだったのでしょう?
それと、ライスの型押しも懐かしいですね
アルマイトの奴、自宅にもありました・・・ケチャップライスとかに使ったり。
ハンバーグでもご飯のこの形にして出すと、洋食屋さんに行った気分に
なったものでした。
何か、探してみたくなりました^^
個人的に強い辛さが苦手なもので・・・最近は辛さを強調したり、スパイスの
種類を売りにしたりで、外でカレーを食べる機会は皆無に近くて^^;
こちらのお店ではいかがだったのでしょう?
それと、ライスの型押しも懐かしいですね
アルマイトの奴、自宅にもありました・・・ケチャップライスとかに使ったり。
ハンバーグでもご飯のこの形にして出すと、洋食屋さんに行った気分に
なったものでした。
何か、探してみたくなりました^^