魔法を授かる弟子、その後 【村山ホープ軒 東大和店】
2018.01.30
東大和市駅近くの「村山ホープ軒 東大和店」は最も頻繁に通うラーメン屋。
前回、ちょっとした事件が起きていた。
いつものお母さんがおらず、代わりにパートらしい若い女性の姿。
十数年通い続けて初めて見る光景であった。

ぎこちなく餃子を鉄鍋に並べる姿を見て、ふと“魔法使いの弟子”という言葉が思い浮かんだ。
ラーメンという魔法を授かる見習い、という構図。
このタイトルで広く知られる音楽は、フランスの作曲家ポール・デュカス(1865-1935)がゲーテのバラード『魔法使いの弟子(Der Zauberlehrling)』にインスピレーションを得て1897年に作曲した交響詩『魔法使いの弟子(L’apprenti sorcier, scherzo symphonique)』。
ウォルト・ディズニーのアニメーション映画『ファンタジア』に使われ有名になった。
ミッキーマウスが青い三角帽子をかぶっているアレ。
この1940年のディズニー映画の筋はゲーテの詩に忠実と考えてよい(2010年作品と違って)。

1882年ごろ、S. Barth
ラーメン屋の見習いのぶかぶかゴム長靴が、そのアニメのキャラクターを連想させた。
店主は老魔法使い。

今年最初の村山ホープ。弟子は健在か、興味津々で出かけた。
1時すぎでけっこう混んでいる様子。いったん退却、周囲の気になる居酒屋・スナックランチなどを確認ののち再度来店。

スタッフは店主1人であった。
弟子、辞めちゃったかな?
店内を見回すと、以前あったパート募集の張り紙がない。この店の客入りを考えると1人で回すのは厳しいと思うが…。

注文は、ラーメン700円+もやし130円。
思い返してみると、時間帯によって店主1人ということはあったような気がする。ここは金曜以外は午後休憩がないので、客の少ない時間に2人体制ではあまりにも効率が悪い。

調理場の奥に人の気配。
弟子登場か?
と思ったら、お母さんだった。
いや、お元気そうで何より。何よりなんだが…。
もう一つの“魔法使いの弟子”のお話の逆をいったような…。

アイルランドの幻想文学作家でファンタジー小説の先駆者ロード・ダンセイニ(1878-1957)の『魔法使いの弟子(The Charwoman’s Shadow)』(1926)。
ゲーテとは無関係のダンセイニの“スペイン物”の長編小説。
原題をそのまま訳せば『掃除女の影』となる。
錬金術や黒魔術といった神秘の世界とラブロマンスを織り交ぜた傑作ファンタジー。
クライマックスシーンには最高にハッピーな魔法と素晴らしい知略が。
美しいファンタジー小説ととんこつラーメンをごちゃ混ぜにして、ダンセイニファンの方にはスマンスマン。
ただ、弟子の成長物語も見てみたかったかな… と。

[DATA]
村山ホープ軒 東大和店
東京都東大和市南街4-13-12
[Today's recommendation]

https://youtu.be/jNaNDXyXRFo
📘

ロード・ダンセイニ
『魔法使いの弟子』(ハヤカワ文庫FT)
訳:荒俣宏、カバー:萩尾望都


東大和市駅近くの「村山ホープ軒 東大和店」は最も頻繁に通うラーメン屋。
前回、ちょっとした事件が起きていた。
いつものお母さんがおらず、代わりにパートらしい若い女性の姿。
十数年通い続けて初めて見る光景であった。

ぎこちなく餃子を鉄鍋に並べる姿を見て、ふと“魔法使いの弟子”という言葉が思い浮かんだ。
ラーメンという魔法を授かる見習い、という構図。
このタイトルで広く知られる音楽は、フランスの作曲家ポール・デュカス(1865-1935)がゲーテのバラード『魔法使いの弟子(Der Zauberlehrling)』にインスピレーションを得て1897年に作曲した交響詩『魔法使いの弟子(L’apprenti sorcier, scherzo symphonique)』。
ウォルト・ディズニーのアニメーション映画『ファンタジア』に使われ有名になった。
ミッキーマウスが青い三角帽子をかぶっているアレ。
この1940年のディズニー映画の筋はゲーテの詩に忠実と考えてよい(2010年作品と違って)。

1882年ごろ、S. Barth
ラーメン屋の見習いのぶかぶかゴム長靴が、そのアニメのキャラクターを連想させた。
店主は老魔法使い。

今年最初の村山ホープ。弟子は健在か、興味津々で出かけた。
1時すぎでけっこう混んでいる様子。いったん退却、周囲の気になる居酒屋・スナックランチなどを確認ののち再度来店。

スタッフは店主1人であった。
弟子、辞めちゃったかな?
店内を見回すと、以前あったパート募集の張り紙がない。この店の客入りを考えると1人で回すのは厳しいと思うが…。

注文は、ラーメン700円+もやし130円。
思い返してみると、時間帯によって店主1人ということはあったような気がする。ここは金曜以外は午後休憩がないので、客の少ない時間に2人体制ではあまりにも効率が悪い。

調理場の奥に人の気配。
弟子登場か?
と思ったら、お母さんだった。
いや、お元気そうで何より。何よりなんだが…。
もう一つの“魔法使いの弟子”のお話の逆をいったような…。

アイルランドの幻想文学作家でファンタジー小説の先駆者ロード・ダンセイニ(1878-1957)の『魔法使いの弟子(The Charwoman’s Shadow)』(1926)。
ゲーテとは無関係のダンセイニの“スペイン物”の長編小説。
原題をそのまま訳せば『掃除女の影』となる。
錬金術や黒魔術といった神秘の世界とラブロマンスを織り交ぜた傑作ファンタジー。
クライマックスシーンには最高にハッピーな魔法と素晴らしい知略が。
美しいファンタジー小説ととんこつラーメンをごちゃ混ぜにして、ダンセイニファンの方にはスマンスマン。
ただ、弟子の成長物語も見てみたかったかな… と。

[DATA]
村山ホープ軒 東大和店
東京都東大和市南街4-13-12
[Today's recommendation]

https://youtu.be/jNaNDXyXRFo
📘

ロード・ダンセイニ
『魔法使いの弟子』(ハヤカワ文庫FT)
訳:荒俣宏、カバー:萩尾望都


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