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毎週木曜はすしの日 【富寿司】

2017.08.10

 東村山本町のすし店「富寿司」に初めて入ったのは去年の暮のこと。まだ1年もたっていない新米客だが、その初回の印象があまりに強烈で、いまだによく覚えている。
そのときのことを少し書いておこうと思う。

その日は長女が休みだったので外で昼ごはんにしようと、特に店を決めるでもなく自転車で久米川駅方面に向かった。すると久米川の手前、空堀川沿いのすし屋の入り口に暖簾が掛かっている。その店、すなわち「富寿司」は、いまでこそオープンにランチ営業を続けているが、そのころは暖簾を見ることも少なかったので、僕は不意に興味を覚えた。
「ここ、やってるみたいよ」と水を向けると、「私もこの店、ずっと気になってた」と長女。
これはもう入るしかないということに。


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思ったより狭い店内は、右にカウンター5席、左に小上がり2卓。カウンターの向こうには、店構えから想像されるよりもいくぶん若いおかみさん。いきなり不思議なことを言う。
「今日はおすしの日ですけど、よろしいですか?」
すし屋なんだから“すしの日”もなにも… と思ったが、たしかにこの店は暖簾はめったに出ないが表にランチメニューの張り紙がしてあって、それはすしではなく焼き魚やしょうが焼きの定食である。つまりおかみさんの言葉は、本日のランチは定食ではなくすしである、と。すししか出せないがそれでよいか? ということを聞いているのである。
僕はすし屋に入ったらまずすしを食べたいという人間なので、そこは躊躇なく「お願いします」と返答する。


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2017.02.07 日替り定食(お刺身)[左]  2017.04.12 定食の焼き魚(鮭の粕漬け)とのしょうが焼[右]


さっそく小鉢が出てきた。それも2つ。自家製コロッケとリンゴ入りサラダ。
続いておかみさんはカウンター席の僕らの目の前で、バットに並んだ柵からすしだねを切り出し始めた。このときになって初めて、この人がにぎるんだ、と気がついた。そういえばほかに店の人の気配はない。
その素朴な突き出しといい、どこかチャーミングなすし職人といい、何かと予想の上をいく展開に、僕はすっかりうれしくなってしまっていた。


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2017.08.10 にぎりすし


しかし気になることが一つ。
お店に入って「すしの日です」「お願いします」のほかに言葉を交わした覚えがない。つまり、すしとはどういう種類のすしで、どれくらいの量で、いかほどのお値段であるのか、いっさい知らされていないのである。
おかみさんが目の前で、僕らのものと思われる、まあ明らかににぎりずしをこしらえている間、僕は壁やテーブルの上なんかをそれとなく探ってみた。しかし、定食の2枚の張り紙以外に何の情報も得られない。
考えてみればここはすし屋だ。怖いといえば相当怖い状況なんじゃないだろうか…。

ネタケース越しににぎりずしが提供される。量は多くないが、ネタはどれも新鮮そのもの。
僕はもう、高くても1500円、2人で3000円くらいだろうと腹をくくっていた。このいろいろ面白い体験をさせてもらって3000円なら安いものだと開き直って、穏やかな気持ちですしを堪能した。
食べ終わるころ、「よかったら食べてください」とおかみさんがブリを1貫ずつ追加してくれた。「ブリのおいしい季節になりましたねー」と。見ると皮付きの柵から1枚ずつ切り出している。おいしいはずだ。


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問題のお会計。
「1200円です」とおかみさん。
実は僕はカウンターの向こう端に座っていた常連客がいましがた出ていくのをこっそりのぞいていて、1000円札を1枚置いてそのへんに散らばっている釣り銭を何枚か回収するセルフ式の会計の様子から、1000円しないんだ、と当たりをつけていた。
だから1人600円と自然に受け止めたが(それにしても安い!)、長女は別に高いと感じることもなく当然のように1人1200円だと思った、とあとで言っていた。

「すしの日っていうのは曜日か何かで決まってるんですか?」と帰りしなに聞いてみた。毎週木曜日がすしの日で、それ以外は定食を出しているとのこと。
「ご飯を2種類用意するのってけっこう大変なの」とおかみさん。「だから1週間に1回だけ、ご飯は全部すし飯にするんですよ」


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それから8カ月近くたった本日8月10日、初回以来2度目となるすしの日での来店となった。妻はずっと来たがっていたのだが、木曜に休みをとるのが難しく、お盆休み期間でようやく実現した次第。


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やはりネタはどれも新鮮で、僕の苦手なサーモンもおいしくいただいた。ブリや中トロまで入って、やっぱり600円。
途中おかみさんは、にぎりのネタのイカをさばいて出たものと言ってエンペラのにぎりをサービスで出してくれた。両面に細かく飾り包丁を入れてあるから食べやすく、鮮度がいいのでエンペラでもとてもおいしい。


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この店はランチタイムの営業時間も不規則だが、夜はもっと謎である。明かりがついているのを見ることはあるが、暖簾が掛かることはない。
この昭和がそのままスライドしてきたようなすし屋で夏の夕方に一杯、なんてこたえられないだろうなと思うのだが。


tomizushi3-38.jpg


[DATA]
富寿司
東京都東村山市本町4-13-94





[Today's recommendation]

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Jane Birkin
『Quoi』




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Re: No title

ご覧いただきありがとうございます。

ほんとに安いですよねー。
これじゃ儲けは出ないだろうな… と思うと頭が下がります。
定食も安くておいしいのでぜひ行ってみてください。

No title

こんにちは。この内容で600円とはスゴイなと思い、
思わず書き込んでしまいました。

寿司屋さんってワタシのような貧乏育ちには
敷居が高くて、家族で行くこともまず無いのですが、
こんなお店のランチだったらリピータになりたい!

でも木曜ってところが確かに難しい・・・
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