激安とんかつの怪? 【とん八】
2017.07.31
東村山駅東口、大踏切に向かう一方通行の途中にあるとんかつ店「とん八」。
この店に入るのは20年ぶりくらいである。その間、目新しいお店を開拓するのに忙しくて、この店は忘却の彼方に追いやってしまっていた。

20年ぶりだからといって別に怖いことはないよな、とおそるおそる引き戸を開けると、いきなり稲川淳二の背後霊が目に飛び込んできた。

いや、稲川淳二は背後のテレビに映っているだけなんだが、その下のカウンター席の老人がじっと僕を見つめている。
何か物言いたげな表情なので、こちらも聞く態勢をとって、しばらくそのまま正対してしまった。
これがただの客のようで、いま食べ終わったところらしいと気づくのに5秒くらいかかった。
僕はその3つほど手前のいすに腰を下ろした。
すると老人は、「やっと1人来たから、もう帰るかぁ」と言っておもむろに立ち上がるのであった。

そういえばそんな話を聞いたことがある。
次の客が来るまでは決して出ることのできない店。
この老人も20年ほど前に店に入り、囚われ、そのころちょうど僕ぐらいの年格好だったが次の客が訪れることなく月日は流れ…
「じいさん! ちょっと待ったぁ!!」

「水にしますか、熱いお茶にしますか」と店主。
「お茶をお願いします」と僕。「えーと、とんかつ定食」

店内は特に変わった様子はない。
あんまり暑いのでつい幻覚を…。
いや、少し想像力を働かせはしたが、情景描写はだいたいそんな感じ。
じいさんもそんなようなことをつぶやいていた。

店内は思っていたよりもゆったりとしたつくりで、和風の内装・調度は趣がある。お品書きの価格を見ても、ランチを除き、ちょっとした高級店並みの設定になっている。夜は案外にぎわうのかもしれない。
店主は70前後か? 足元は見えないが下駄の音が聞こえ、粋な包丁人風である。
気になる情報として、東村山市料理飲食店組合のホームページに「土方歳三家より5代目が店主です」とある。これはいったい…?
特に土方歳三家の“家”はどういう用法なのか、気になるところではある。

とんかつ定食680円。
お新香(大根、きゅうり)、冷ややっこに続いてメインの皿、ご飯にみそ汁。これで680円。とんかつ専門店の定食としては、僕の経験では最安値じゃないだろうか。

とんかつはカラッと揚がっていて、肉の味が濃く脂身は軽くてもたれない。ソースは黒っぽく濃厚そうだが、意外にあっさり味で、スパイスの配合が懐かし系。
ご飯がおいしく、自家製ぬか漬けがいい箸休めになる。

食べ終わり、席を立ってレジのある出入り口のほうに向かうと、何か見えない壁のようなものに遮られ… と、そんなわけもなくあっさり店を出る。
1週間ぶりに暑さがぶり返し、セミの声が騒がしい。

[DATA]
とん八
東京都東村山市本町2-5-2
[Today's recommendation]

https://youtu.be/cPCLFtxpadE




タマムシ(東村山市恩多町)
東村山駅東口、大踏切に向かう一方通行の途中にあるとんかつ店「とん八」。
この店に入るのは20年ぶりくらいである。その間、目新しいお店を開拓するのに忙しくて、この店は忘却の彼方に追いやってしまっていた。

20年ぶりだからといって別に怖いことはないよな、とおそるおそる引き戸を開けると、いきなり稲川淳二の背後霊が目に飛び込んできた。

いや、稲川淳二は背後のテレビに映っているだけなんだが、その下のカウンター席の老人がじっと僕を見つめている。
何か物言いたげな表情なので、こちらも聞く態勢をとって、しばらくそのまま正対してしまった。
これがただの客のようで、いま食べ終わったところらしいと気づくのに5秒くらいかかった。
僕はその3つほど手前のいすに腰を下ろした。
すると老人は、「やっと1人来たから、もう帰るかぁ」と言っておもむろに立ち上がるのであった。

そういえばそんな話を聞いたことがある。
次の客が来るまでは決して出ることのできない店。
この老人も20年ほど前に店に入り、囚われ、そのころちょうど僕ぐらいの年格好だったが次の客が訪れることなく月日は流れ…
「じいさん! ちょっと待ったぁ!!」

「水にしますか、熱いお茶にしますか」と店主。
「お茶をお願いします」と僕。「えーと、とんかつ定食」

店内は特に変わった様子はない。
あんまり暑いのでつい幻覚を…。
いや、少し想像力を働かせはしたが、情景描写はだいたいそんな感じ。
じいさんもそんなようなことをつぶやいていた。

店内は思っていたよりもゆったりとしたつくりで、和風の内装・調度は趣がある。お品書きの価格を見ても、ランチを除き、ちょっとした高級店並みの設定になっている。夜は案外にぎわうのかもしれない。
店主は70前後か? 足元は見えないが下駄の音が聞こえ、粋な包丁人風である。
気になる情報として、東村山市料理飲食店組合のホームページに「土方歳三家より5代目が店主です」とある。これはいったい…?
特に土方歳三家の“家”はどういう用法なのか、気になるところではある。

とんかつ定食680円。
お新香(大根、きゅうり)、冷ややっこに続いてメインの皿、ご飯にみそ汁。これで680円。とんかつ専門店の定食としては、僕の経験では最安値じゃないだろうか。

とんかつはカラッと揚がっていて、肉の味が濃く脂身は軽くてもたれない。ソースは黒っぽく濃厚そうだが、意外にあっさり味で、スパイスの配合が懐かし系。
ご飯がおいしく、自家製ぬか漬けがいい箸休めになる。

食べ終わり、席を立ってレジのある出入り口のほうに向かうと、何か見えない壁のようなものに遮られ… と、そんなわけもなくあっさり店を出る。
1週間ぶりに暑さがぶり返し、セミの声が騒がしい。

[DATA]
とん八
東京都東村山市本町2-5-2
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