500円ランチの実力 【風の色】
2017.07.12
青梅街道沿い、駅でいうとJR武蔵野線新小平駅と西武多摩湖線青梅街道駅の間のマンション1階の定食屋「風の色」。
こちらの売りは何といっても500円と750円という2つの低価格帯で提供するランチ定食。

500円ランチが生姜焼き、鶏唐揚げ、チキンカツ、コロッケ、ベーコンエッグ、サバ唐揚げの6種、おすすめ定食750円がハンバーグ、肉野菜炒め、豚キムチ炒め、トンカツ、ポークソテー、アジの開き、ホッケの開きの7種と、安いだけでなく種類も豊富である。
好みの問題だが、500円のほうがより魅力的に感じるという不思議なクラス分けではあるが。

この値段の魅力からときどき利用させてもらっているが、好みの問題で500円ランチの上から3つをローテーションする流れの中で、今日は豚肉の生姜焼き定食。
おそらく誰もがそう感じると思うが、店名に引っかかるものがある。もろ昭和の喫茶店のネーミングセンスである。そして店先の看板に“喫茶”“家庭料理”とある。元は喫茶店兼定食屋の2枚看板だったと推察される。
さらに証拠物件として、こちらのお父さんのファッションアイテムを提出したい。ポロシャツに黒いエプロン姿。もう昭和の喫茶店のマスターにしか見えない。
この店自体は十数年だと思うから、この地ではないにしろ、どこかでそういう業態で営業していたと僕は推理を働かせている。
昼の定食は明らかに“家庭料理”部門なので、お母さんの担当である。混み合う時間帯は息子さんとおぼしき若い男性が調理を手伝う。
お父さんはというと、サービスとレジ、および(マスターなだけに)常連との軽妙なトーク担当である。
ここにマスターの仕事を再現してみる。
客(わし)が来たのでカウンター席から立ち上がってお冷やを出す。カウンターの向こうの厨房に入って煮物と漬物を器にとる。続いて主菜に添えるキャベツの千切りを丸キャベツからスライサーで切り出す。(ここでカウンター席でひと休み) 生姜焼きができあがりそうなので中に入ってご飯をよそい、再び回り込んでわしの後ろで待機。お母さんが生姜焼きを1枚1枚丁寧に盛り付けて皿をお盆に載せ、ご飯とみそ汁を… みそ汁がない! 「あ、忘れた」と背後でマスター。おいおい。
気を取り直して、お母さんがみそ汁を用意してお盆が整い、配膳台からマスターが「おまちどお」と僕の前に下ろす。
実にこまごまと動き回っているのである。

さて、上記の“マスターお仕事拝見”でさりげなく触れているように、煮物の盛り付けもキャベツの切り出しも全部そのつど。いつでも出せるように用意されているものは一つもないのである。500円でその丁寧な仕事ぶりには本当に頭が下がる。
これを取り仕切る調理担当のお母さんも、一見愛想がなさそうだが、客とのやりとりなんか実に丁重で優しそうである。
生姜焼きは、脂身を落とした薄い豚のロース肉5枚。フレッシュなおろしショウガが効いていて、しょうゆベースに酒少々といった感じのシンプルな味付け。まさに家庭料理だ。
500円定食の副菜にタケノコの土佐煮というのは驚きだが、こちらも上品な味わい。
やや硬めで僕好みの炊き上がりのご飯、煮詰まって少ししょっぱいが優しい味のみそ汁と、全体にとても満足度の高い定食である。
立地条件がいいとは思えないがいつもそこそこお客が入っている理由は値段だけではないだろう。

常連や絡みやすそうな客がいないのでどこか退屈そうな本日のマスター。喫茶店機能が残っているかはわからないが、飲み屋と化すであろう夜はいつも生き生きと働いているんだろうな。

[DATA]
風の色
東京都小平市小川町2-1290
[Today's recommendation]

https://youtu.be/IsVqO83OYow
青梅街道沿い、駅でいうとJR武蔵野線新小平駅と西武多摩湖線青梅街道駅の間のマンション1階の定食屋「風の色」。
こちらの売りは何といっても500円と750円という2つの低価格帯で提供するランチ定食。

500円ランチが生姜焼き、鶏唐揚げ、チキンカツ、コロッケ、ベーコンエッグ、サバ唐揚げの6種、おすすめ定食750円がハンバーグ、肉野菜炒め、豚キムチ炒め、トンカツ、ポークソテー、アジの開き、ホッケの開きの7種と、安いだけでなく種類も豊富である。
好みの問題だが、500円のほうがより魅力的に感じるという不思議なクラス分けではあるが。

この値段の魅力からときどき利用させてもらっているが、好みの問題で500円ランチの上から3つをローテーションする流れの中で、今日は豚肉の生姜焼き定食。
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おそらく誰もがそう感じると思うが、店名に引っかかるものがある。もろ昭和の喫茶店のネーミングセンスである。そして店先の看板に“喫茶”“家庭料理”とある。元は喫茶店兼定食屋の2枚看板だったと推察される。
さらに証拠物件として、こちらのお父さんのファッションアイテムを提出したい。ポロシャツに黒いエプロン姿。もう昭和の喫茶店のマスターにしか見えない。
この店自体は十数年だと思うから、この地ではないにしろ、どこかでそういう業態で営業していたと僕は推理を働かせている。
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昼の定食は明らかに“家庭料理”部門なので、お母さんの担当である。混み合う時間帯は息子さんとおぼしき若い男性が調理を手伝う。
お父さんはというと、サービスとレジ、および(マスターなだけに)常連との軽妙なトーク担当である。
ここにマスターの仕事を再現してみる。
客(わし)が来たのでカウンター席から立ち上がってお冷やを出す。カウンターの向こうの厨房に入って煮物と漬物を器にとる。続いて主菜に添えるキャベツの千切りを丸キャベツからスライサーで切り出す。(ここでカウンター席でひと休み) 生姜焼きができあがりそうなので中に入ってご飯をよそい、再び回り込んでわしの後ろで待機。お母さんが生姜焼きを1枚1枚丁寧に盛り付けて皿をお盆に載せ、ご飯とみそ汁を… みそ汁がない! 「あ、忘れた」と背後でマスター。おいおい。
気を取り直して、お母さんがみそ汁を用意してお盆が整い、配膳台からマスターが「おまちどお」と僕の前に下ろす。
実にこまごまと動き回っているのである。

さて、上記の“マスターお仕事拝見”でさりげなく触れているように、煮物の盛り付けもキャベツの切り出しも全部そのつど。いつでも出せるように用意されているものは一つもないのである。500円でその丁寧な仕事ぶりには本当に頭が下がる。
これを取り仕切る調理担当のお母さんも、一見愛想がなさそうだが、客とのやりとりなんか実に丁重で優しそうである。
生姜焼きは、脂身を落とした薄い豚のロース肉5枚。フレッシュなおろしショウガが効いていて、しょうゆベースに酒少々といった感じのシンプルな味付け。まさに家庭料理だ。
500円定食の副菜にタケノコの土佐煮というのは驚きだが、こちらも上品な味わい。
やや硬めで僕好みの炊き上がりのご飯、煮詰まって少ししょっぱいが優しい味のみそ汁と、全体にとても満足度の高い定食である。
立地条件がいいとは思えないがいつもそこそこお客が入っている理由は値段だけではないだろう。

常連や絡みやすそうな客がいないのでどこか退屈そうな本日のマスター。喫茶店機能が残っているかはわからないが、飲み屋と化すであろう夜はいつも生き生きと働いているんだろうな。

[DATA]
風の色
東京都小平市小川町2-1290
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https://youtu.be/IsVqO83OYow
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