約束の半マーボ 【揚子江】
2017.06.28
久米川界隈で最もディープな中華屋「揚子江」。
外観は、まあこのぐらいの状態はなくもないな… というレベルの老朽ぶりだが、中がすごい。どうすごいかって、コンクリートむき出しの床とかベニヤの壁とかのインパクトがすごい。ほかにも、まあいろいろ。
去年初めて入って、本日は2度目の来店。

食べ終えて出てきた人と入れ違いに入って、客は僕1人。
店主は「ちょっとこれ置いてくるから」と言って、僕と入れ違いに出前に行ってしまった。

4卓のテーブル席のうち、手前左に座る。注文をとりに来たお店のおかあさんに、(間違えられないように)入り口のガラス戸に裏返しに透けて見える張り紙を指さしながら、「炒飯半マーボ」と告げる。
おかあさんは材料の下ごしらえをしたあと、こっちに出てきてエアコンの前でリモコンをいじってる。そういえば冷房が効いていないようだが、そのおぼつかない手つきに不安がよぎる。
店主、速攻で帰還。
「急いでます?」と聞かれ、「大丈夫」と答える。
「カッパ脱がさせて。もう汗だくで」と店主。「雨の日は嫌んなっちゃう」
「もう雨上がってますよね」と僕。「どのへんまで出前に行くんですか?」
「そんな遠くは行かないよ」
「そのへんのアパートとか?」
「いまね、アパートの人、あんまり食べられないの」
「ああ、高齢化で…」
「それと、コンビニできちゃったから、アパートの人ほとんど来ない」

冷風が流れてきてホッとしていると、いったん厨房に入った店主が、「冷房効かないって?」とかおかあさんと話しながら出てきた。それでさっきリモコンいじってたのか。
「効いてる効いてる」と僕。
「効いてる? ほんとに?」と店主。「買ったばっかりなんだけど、なんだか調子悪くてさ」
「さっきいちばん暑いときに入ってきたお客さんに逃げられたの」とおかあさん。「暑い暑いって」

ようやく腰を据えて調理に取りかかる。
注文は炒飯半マーボ850円。

まず炒飯とスープが出される。前回も思ったのだが、この炒飯は僕の好みのど真ん中だ。最近いろんな炒飯を食べているが、味付けはここがいちばん好きかもしれない。
具はチャーシューと卵のみ。パラパラでフワフワな仕上がり。

続いてマーボ豆腐。
ツルンとした絹ごし豆腐に片栗粉のとろみの感じは、和風というか家庭的な味を連想させるが、食べてみると家では出せない味。
具は豆腐、ひき肉、干し椎茸、香味系はほぼショウガのみ。花椒を効かせた本格四川とは別物だが、使うみそや酒が違うのか、そのシンプルな材料でしっかり中華の味である。唐辛子の辛さがあとでちょっと来る。
ただ、味付けが濃いので、炒飯より白いご飯がほしくなる。

実は前回、この炒飯半マーボを頼んで違うものが来た。店主が激怒し(オーダー間違えたおかあさんに)、われわれがなだめるはめに。僕は間違って出てきた8割チャーハンラーメンセットで満足したのだが、店主は支払いのときもまだぶつくさ言ってる。
「食べたいもの食べられなくて悪かったね。いつも言ってるんだけどさ、集中してないから間違えるんだよ、まったく」
「いいからいいから。今度マーボ食べに来るからさ」

そう言って、7カ月が過ぎてしまった。
もちろん店主はそのときのことを覚えていないだろう。でも約束が果たせてよかった。

お勘定に席を立つと、厨房から出てきた店主がテレビを見始めた。日本陸上選手権の再放送。男子3000m SC決勝のいいところらしいので、並んで一緒に見る。最後の直線で1人が抜け出し、勝負あった感じ。
「いやー、富士通の人は強いねー」と店主。エアコンを指さして「これはダメだけど」
「富士通なの?」
「そう(笑)」

[DATA]
揚子江
東京都東村山市萩山町5-2-5
[Today's recommendation]

https://youtu.be/JxlLa1XC4x0
久米川界隈で最もディープな中華屋「揚子江」。
外観は、まあこのぐらいの状態はなくもないな… というレベルの老朽ぶりだが、中がすごい。どうすごいかって、コンクリートむき出しの床とかベニヤの壁とかのインパクトがすごい。ほかにも、まあいろいろ。
去年初めて入って、本日は2度目の来店。

食べ終えて出てきた人と入れ違いに入って、客は僕1人。
店主は「ちょっとこれ置いてくるから」と言って、僕と入れ違いに出前に行ってしまった。

4卓のテーブル席のうち、手前左に座る。注文をとりに来たお店のおかあさんに、(間違えられないように)入り口のガラス戸に裏返しに透けて見える張り紙を指さしながら、「炒飯半マーボ」と告げる。
おかあさんは材料の下ごしらえをしたあと、こっちに出てきてエアコンの前でリモコンをいじってる。そういえば冷房が効いていないようだが、そのおぼつかない手つきに不安がよぎる。
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店主、速攻で帰還。
「急いでます?」と聞かれ、「大丈夫」と答える。
「カッパ脱がさせて。もう汗だくで」と店主。「雨の日は嫌んなっちゃう」
「もう雨上がってますよね」と僕。「どのへんまで出前に行くんですか?」
「そんな遠くは行かないよ」
「そのへんのアパートとか?」
「いまね、アパートの人、あんまり食べられないの」
「ああ、高齢化で…」
「それと、コンビニできちゃったから、アパートの人ほとんど来ない」

冷風が流れてきてホッとしていると、いったん厨房に入った店主が、「冷房効かないって?」とかおかあさんと話しながら出てきた。それでさっきリモコンいじってたのか。
「効いてる効いてる」と僕。
「効いてる? ほんとに?」と店主。「買ったばっかりなんだけど、なんだか調子悪くてさ」
「さっきいちばん暑いときに入ってきたお客さんに逃げられたの」とおかあさん。「暑い暑いって」

ようやく腰を据えて調理に取りかかる。
注文は炒飯半マーボ850円。

まず炒飯とスープが出される。前回も思ったのだが、この炒飯は僕の好みのど真ん中だ。最近いろんな炒飯を食べているが、味付けはここがいちばん好きかもしれない。
具はチャーシューと卵のみ。パラパラでフワフワな仕上がり。

続いてマーボ豆腐。
ツルンとした絹ごし豆腐に片栗粉のとろみの感じは、和風というか家庭的な味を連想させるが、食べてみると家では出せない味。
具は豆腐、ひき肉、干し椎茸、香味系はほぼショウガのみ。花椒を効かせた本格四川とは別物だが、使うみそや酒が違うのか、そのシンプルな材料でしっかり中華の味である。唐辛子の辛さがあとでちょっと来る。
ただ、味付けが濃いので、炒飯より白いご飯がほしくなる。

実は前回、この炒飯半マーボを頼んで違うものが来た。店主が激怒し(オーダー間違えたおかあさんに)、われわれがなだめるはめに。僕は間違って出てきた8割チャーハンラーメンセットで満足したのだが、店主は支払いのときもまだぶつくさ言ってる。
「食べたいもの食べられなくて悪かったね。いつも言ってるんだけどさ、集中してないから間違えるんだよ、まったく」
「いいからいいから。今度マーボ食べに来るからさ」

そう言って、7カ月が過ぎてしまった。
もちろん店主はそのときのことを覚えていないだろう。でも約束が果たせてよかった。

お勘定に席を立つと、厨房から出てきた店主がテレビを見始めた。日本陸上選手権の再放送。男子3000m SC決勝のいいところらしいので、並んで一緒に見る。最後の直線で1人が抜け出し、勝負あった感じ。
「いやー、富士通の人は強いねー」と店主。エアコンを指さして「これはダメだけど」
「富士通なの?」
「そう(笑)」

[DATA]
揚子江
東京都東村山市萩山町5-2-5
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https://youtu.be/JxlLa1XC4x0
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