支援の輪の中心に、おいしい手打ちうどん 【はなみずき】
2017.05.17
うどん屋「はなみずき」のちらし寿司の張り紙を見つけたのは半年ぐらい前だっただろうか。持ち帰り用パックと、店内では定食として提供するという。水曜日限定。
こういう素朴なおふくろの味系でちらし寿司といったら、やはり素朴で懐かし系のものを思い浮かべる。うどん屋なんだから定食はうどんとのセットと予想される。ここのうどんは生麺を買って食べたことがあるが、とてもおいしかったと記憶している。
したがって、その定食は非常に魅力的といわざるをえない。

ということで、ようやく機会が訪れた水曜日の本日、僕はちらし寿司定食しか考えていなかった。
しかし注文してから店内を見回すと意外にメニューが多いのだった。なかにはうどんセット(ミニうどん、梅しらす丼、小鉢、おしんこ)650円という魅惑の品も。

60代くらいの女性2人で回されており(あとでもっと若い女性も加わる)、年上とみられるお母さんが調理担当のようだ。「手打ちのためゆで時間が10分ほどかかります」という張り紙。たしかにけっこう時間がかかっている。

ちらし寿司定食700円は予想どおりというか期待どおりの内容である。
ちらし寿司に小うどん、小鉢(厚揚げと野菜の煮物)、おしんこの組み合わせ。

ちらし寿司は五目ちらしタイプで、すし飯ににんじん、いんげん、はすなどを混ぜ込み、上に錦糸卵、でんぶ、刻み海苔、とびこが飾り付けられたもの。
昔、わが家ではすしといえばこれだった。高価な食材が使われているわけでもないのに、ちゃんとハレの日の味がしたものだ。

うどんはやや細くしなやかな食感で、程よいコシがある。地粉ではないようだが小麦の風味がよい。
コンブといりこ? だしに薄口しょうゆの上品なつゆ。優しい味わいだ。
薬味のネギはそのつど、提供直前に刻んでいる。

妻は天ざるうどん700円。
天ぷらは、なす、かぼちゃ、舞茸、ししとう、にんじんとたまねぎのかき揚げの5品。おそらく野菜の扱いが適切だから、揚げたてがとてもおいしい。

食べている最中、女の人が入ってきた。客ではないようだ。お店のお母さんと、おかずをもっていくのいかないのとやり合っている。この店は惣菜の販売も行っていて、カウンターに大鉢が並べられている。
「ちらし寿司は?」とその女性。
「今日はどういうわけかよく売れて、あと1個しか残ってないのよ」とお店のお母さん。
「さっき2個あるって言ってたじゃない」
「1個じゃ、けんかになるからもっていかない?」
…すみません、もう1個をワタクシがいまいただいてます。と、よくわからないけど心の中で謝っている私。

しばらくやり合ってから、おかずをいくつかもって、豆腐は売れないからともたずに、その女性は出ていった。
「お騒がせしました」とお母さん。
先ほどの女性(娘と言ってた、と妻)は障害者就労支援事業所の久米川共同作業所の職員で、ほかの施設などを回ってこの店の惣菜を売っているとのこと。食品ロス低減のための大切な取り組みだ。一方、こちらでは作業所でつくられた器が使われている。

それでいろいろ教えてもらったのだが、この店ではたとえば豆腐類は震災の支援活動をきっかけに交流しているという宮城県の豆腐屋のものを使っている。水がいいからおいしい、と。そしていまも被災地支援を続けている。
ここではさまざまな支援活動が有機的につながっているようなのだ。
「うどんも就労支援とかなんですよね?」と、事前情報について聞いてみた。
「それはまた別の話で…」とお母さんが興味深い話をしてくれた。

うどんの師匠(とお母さんが呼ぶ)友広澄男氏が引きこもりの男性の社会復帰を支援すべくうどん作りを教えたのが始まり。師匠はその後青葉町に店を出したが、立地条件が悪く1年ほどでたたむ。そのお店を含め、こちらの女性陣はボランティアで友広氏を支え続けた。
いま、はなみずきのうどんは、そのお弟子さんが師匠の教えどおり手間のかかる製法で打ち続けている。生地を20分こねて2時間寝かせ、それを3回繰り返す。冷蔵庫で一晩寝かせ、翌朝延ばして切る。
「それじゃ商売にならないって言われるんですけどね」と笑う。「それでもおいしいと言ってもらえるとうれしくて」
友広氏は去年の暮れに亡くなったそうだ。その人助けの精神は、“2代目”のうどんと、それを支える多くの人々にしっかり受け継がれている。

[DATA]
はなみずき
東京都東村山市本町4-13-25
[Today's recommendation]

https://youtu.be/WJ4Doe2x97g
うどん屋「はなみずき」のちらし寿司の張り紙を見つけたのは半年ぐらい前だっただろうか。持ち帰り用パックと、店内では定食として提供するという。水曜日限定。
こういう素朴なおふくろの味系でちらし寿司といったら、やはり素朴で懐かし系のものを思い浮かべる。うどん屋なんだから定食はうどんとのセットと予想される。ここのうどんは生麺を買って食べたことがあるが、とてもおいしかったと記憶している。
したがって、その定食は非常に魅力的といわざるをえない。

ということで、ようやく機会が訪れた水曜日の本日、僕はちらし寿司定食しか考えていなかった。
しかし注文してから店内を見回すと意外にメニューが多いのだった。なかにはうどんセット(ミニうどん、梅しらす丼、小鉢、おしんこ)650円という魅惑の品も。

60代くらいの女性2人で回されており(あとでもっと若い女性も加わる)、年上とみられるお母さんが調理担当のようだ。「手打ちのためゆで時間が10分ほどかかります」という張り紙。たしかにけっこう時間がかかっている。

ちらし寿司定食700円は予想どおりというか期待どおりの内容である。
ちらし寿司に小うどん、小鉢(厚揚げと野菜の煮物)、おしんこの組み合わせ。

ちらし寿司は五目ちらしタイプで、すし飯ににんじん、いんげん、はすなどを混ぜ込み、上に錦糸卵、でんぶ、刻み海苔、とびこが飾り付けられたもの。
昔、わが家ではすしといえばこれだった。高価な食材が使われているわけでもないのに、ちゃんとハレの日の味がしたものだ。

うどんはやや細くしなやかな食感で、程よいコシがある。地粉ではないようだが小麦の風味がよい。
コンブといりこ? だしに薄口しょうゆの上品なつゆ。優しい味わいだ。
薬味のネギはそのつど、提供直前に刻んでいる。

妻は天ざるうどん700円。
天ぷらは、なす、かぼちゃ、舞茸、ししとう、にんじんとたまねぎのかき揚げの5品。おそらく野菜の扱いが適切だから、揚げたてがとてもおいしい。

食べている最中、女の人が入ってきた。客ではないようだ。お店のお母さんと、おかずをもっていくのいかないのとやり合っている。この店は惣菜の販売も行っていて、カウンターに大鉢が並べられている。
「ちらし寿司は?」とその女性。
「今日はどういうわけかよく売れて、あと1個しか残ってないのよ」とお店のお母さん。
「さっき2個あるって言ってたじゃない」
「1個じゃ、けんかになるからもっていかない?」
…すみません、もう1個をワタクシがいまいただいてます。と、よくわからないけど心の中で謝っている私。

しばらくやり合ってから、おかずをいくつかもって、豆腐は売れないからともたずに、その女性は出ていった。
「お騒がせしました」とお母さん。
先ほどの女性(娘と言ってた、と妻)は障害者就労支援事業所の久米川共同作業所の職員で、ほかの施設などを回ってこの店の惣菜を売っているとのこと。食品ロス低減のための大切な取り組みだ。一方、こちらでは作業所でつくられた器が使われている。

それでいろいろ教えてもらったのだが、この店ではたとえば豆腐類は震災の支援活動をきっかけに交流しているという宮城県の豆腐屋のものを使っている。水がいいからおいしい、と。そしていまも被災地支援を続けている。
ここではさまざまな支援活動が有機的につながっているようなのだ。
「うどんも就労支援とかなんですよね?」と、事前情報について聞いてみた。
「それはまた別の話で…」とお母さんが興味深い話をしてくれた。

うどんの師匠(とお母さんが呼ぶ)友広澄男氏が引きこもりの男性の社会復帰を支援すべくうどん作りを教えたのが始まり。師匠はその後青葉町に店を出したが、立地条件が悪く1年ほどでたたむ。そのお店を含め、こちらの女性陣はボランティアで友広氏を支え続けた。
いま、はなみずきのうどんは、そのお弟子さんが師匠の教えどおり手間のかかる製法で打ち続けている。生地を20分こねて2時間寝かせ、それを3回繰り返す。冷蔵庫で一晩寝かせ、翌朝延ばして切る。
「それじゃ商売にならないって言われるんですけどね」と笑う。「それでもおいしいと言ってもらえるとうれしくて」
友広氏は去年の暮れに亡くなったそうだ。その人助けの精神は、“2代目”のうどんと、それを支える多くの人々にしっかり受け継がれている。

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はなみずき
東京都東村山市本町4-13-25
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