ただのラーメン、されどラーメン 【大吉】
2017.02.18
東久留米という街は、川の崖線の上と下で異なる様相を呈するが、このあたりは駅から丘の上へと動線ができている(いた?)。
234号前沢保谷線と黒目川を結ぶ通り(門前大橋通り)には年季の入ったそば屋、すし屋、ラーメン屋が並び、向かいにはレトロな喫茶店もある。昭和的・団地的必須飲食店ひとそろい。
ラーメン「大吉」は暖簾もなくひっそり営業中で、初めての客には入りにくいことこの上ない。

壁のメニューを眺めていたら店主と目が合った。
「写真、いいですか?」と聞くと、「いいよ、別に。でもこんなのただのラーメンだよ。むかーしの」と言う。
「それがいいんですよ」と僕。
こそばゆいような不思議な表情を浮かべ、店主は「あのころ150円くらいじゃなかったかな…」と昔話を始めた。

――15歳で工場勤めをして、給料日にはきつねうどんとかたぬきそばとかラーメンとか。150円くらいだったと思うよ。そんな食べ物なの、これは。そんなものしかなかったんだけどね。でもあのころは面白かった。ほんと、面白かったなぁ…。いまはちっとも面白くない。
店主は「面白くない」と繰り返した。
(だから僕はその面白かった時代の空気に包まれて生気を取り戻したくて、ここみたいな場所を巡り歩いているんですよ)
と心の中で応えた。

ここの支那ソバは品がある。うまく言えないが、昔ながらのラーメンのうちでも上級という部類。
うまくいえないが、閉店した阿佐谷の「蓬莱軒」を思い出した。

[DATA]
大吉
東京都東久留米市東本町12-5

https://www.youtube.com/watch?v=nQ_4937eNv4
東久留米という街は、川の崖線の上と下で異なる様相を呈するが、このあたりは駅から丘の上へと動線ができている(いた?)。
234号前沢保谷線と黒目川を結ぶ通り(門前大橋通り)には年季の入ったそば屋、すし屋、ラーメン屋が並び、向かいにはレトロな喫茶店もある。昭和的・団地的必須飲食店ひとそろい。
ラーメン「大吉」は暖簾もなくひっそり営業中で、初めての客には入りにくいことこの上ない。

壁のメニューを眺めていたら店主と目が合った。
「写真、いいですか?」と聞くと、「いいよ、別に。でもこんなのただのラーメンだよ。むかーしの」と言う。
「それがいいんですよ」と僕。
こそばゆいような不思議な表情を浮かべ、店主は「あのころ150円くらいじゃなかったかな…」と昔話を始めた。

――15歳で工場勤めをして、給料日にはきつねうどんとかたぬきそばとかラーメンとか。150円くらいだったと思うよ。そんな食べ物なの、これは。そんなものしかなかったんだけどね。でもあのころは面白かった。ほんと、面白かったなぁ…。いまはちっとも面白くない。
店主は「面白くない」と繰り返した。
(だから僕はその面白かった時代の空気に包まれて生気を取り戻したくて、ここみたいな場所を巡り歩いているんですよ)
と心の中で応えた。

ここの支那ソバは品がある。うまく言えないが、昔ながらのラーメンのうちでも上級という部類。
うまくいえないが、閉店した阿佐谷の「蓬莱軒」を思い出した。

[DATA]
大吉
東京都東久留米市東本町12-5

https://www.youtube.com/watch?v=nQ_4937eNv4