激安うな丼と食堂史をめぐる冒険 【エイトランド】
2019.06.12
五日市街道西久保三丁目交差点と武蔵野市立高齢者総合センターの間の通り西側は、グリーンパーク商店街というちょっとおもしろいつくりの商店街になっている。どうおもしろいかというと、バス通りと平行して細いショッピングロードが通り、その間建物1軒分の幅しかなく、商店は軒並み表裏2つのはいり口を設けているといったような。
もっとも、往時のことは知らないが、シャッター化が進み現役の店舗数は物件数ほど多くない。

飲食店もやはり多くなく、その希少種の一つが「エイトランド」。
商店街の五日市街道寄りにある定食&弁当・仕出し屋である。

レギュラーメニューのほかに日替わり弁当、本日の目玉(いちおし)、◯月限定いちおしのサービス品が店先に掲示してあり、その激安ぶりは道行く人の足を止めさせるに十分なインパクトがある。しかし足は止めさせても、入りづらいことこの上ない引き戸の曇りガラスの面持ちが、もう一歩踏み出すのを躊躇させる。

本日のいちおしは、うな丼800円。
どうです、この値段。
梅雨時の憂さ晴らしというか、夏の初めの景気づけというか、この時期に一度うなぎを食べておくのもいいかも… といった軽いノリでやっつけられる価格設定である。
ということで、初入店。
店内は、テーブル席が4×2、2×1、カウンターが5席という構成。
正面のテレビではワイドショー。その横に張ってある調理師免許証のお名前が想像どおり(店名はその直訳)だったので、思わずニンマリ。

先客は常連風のおばちゃん1名、僕と向かい合う形で真ん中のテーブルに鎮座。
スタッフは思っていたより若そうなご夫婦? で、お二人ともあたりが柔らかくとても感じがよい。

うな丼はあっという間に出てきた。
そのへんのところ、多くを期待しているわけではないので別に驚きはないが、丼でなく重で出されたのは意外。そして、思ったよりうなぎが大きい。
みそ汁にざる豆腐のようなものが入っていると思ったら卵白だ。こういうみそ汁、昔あったなぁ… と懐かしさがこみ上げる。
小鉢はひじき。

うなぎの味付けは写真の色合いからも想像がつくと思うが、タレがかなり濃い。そのままでは濃すぎるが、ほぐしてひつまぶしのようにご飯と混ぜて食べればちょうどよい。
ふっくらしていて、値段を考えれば十分満足できるうな丼だ。

このお店、いかにも年季が入っていそうだが、実はそれほど古くない。
10数年前、五日市街道の400mほど東の場所から移転してきた。
食べ終わり、背後のいすに腰掛けている奥さんに聞いてみた。
「ここって、前はラーメン屋だった…?」
「そう… ですね」
以下、会話形式で。
奥さんA:ええ、うちの前はラーメン屋さんでした。もう10年以上も前のことですけど。
常連さんB:中野かどこかから…
わしh:荻窪の…
B:あ、そうそう。なんて名前だったっけ?
A:丸福。
h:荻窪の丸福。有名なお店だったんですよ。
B:らしいわねー。真っ黒なスープの(笑)。1回くらいしか入ったことないけど、どんな味だったかしらね。
h:僕も1回しか入ったことないです。
A:うちが入るとき、そのまま上から看板掛けたんです。だから丸福さんの看板はまだ掛かったままですよ。
h:えー!? それはすごいな。
B:いつの間にかいなくなっちゃったけど。丸福さん、お捜し?
h:いや、そういうわけでは…。でも気になりますよね。あれほどの有名店がここではヒッソリという感じでやってたじゃないですか。どういった事情だったのか…

そうです。
1980年代の最初のラーメンブームの発信地・荻窪のトップの座に君臨し日本一とまで称された「丸福」。
われわれの世代のラーメン好きで知らない人はいないという有名店が2005年に閉店後、短期間店を出していたのがこの物件。
僕は一度ここの「丸福」で食べたことがあるが、おばちゃんの言うようにいつの間にかいなくなっちゃったので、あれはマボロシか… と。
それが確かめられただけでも入ったかいがあったというもの。
大衆食堂史に残る事件の舞台といったら大げさか…。
(「丸福」に関してはこちらの記事をご参照ください)

[DATA]
エイトランド
東京都武蔵野市緑町1-4-3
[Today's recommendation]


◆ 猫写真はこちら その1 その2 その3 ◆

https://youtu.be/EWIgEtkE3GA
五日市街道西久保三丁目交差点と武蔵野市立高齢者総合センターの間の通り西側は、グリーンパーク商店街というちょっとおもしろいつくりの商店街になっている。どうおもしろいかというと、バス通りと平行して細いショッピングロードが通り、その間建物1軒分の幅しかなく、商店は軒並み表裏2つのはいり口を設けているといったような。
もっとも、往時のことは知らないが、シャッター化が進み現役の店舗数は物件数ほど多くない。

飲食店もやはり多くなく、その希少種の一つが「エイトランド」。
商店街の五日市街道寄りにある定食&弁当・仕出し屋である。

レギュラーメニューのほかに日替わり弁当、本日の目玉(いちおし)、◯月限定いちおしのサービス品が店先に掲示してあり、その激安ぶりは道行く人の足を止めさせるに十分なインパクトがある。しかし足は止めさせても、入りづらいことこの上ない引き戸の曇りガラスの面持ちが、もう一歩踏み出すのを躊躇させる。

本日のいちおしは、うな丼800円。
どうです、この値段。
梅雨時の憂さ晴らしというか、夏の初めの景気づけというか、この時期に一度うなぎを食べておくのもいいかも… といった軽いノリでやっつけられる価格設定である。
ということで、初入店。
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店内は、テーブル席が4×2、2×1、カウンターが5席という構成。
正面のテレビではワイドショー。その横に張ってある調理師免許証のお名前が想像どおり(店名はその直訳)だったので、思わずニンマリ。

先客は常連風のおばちゃん1名、僕と向かい合う形で真ん中のテーブルに鎮座。
スタッフは思っていたより若そうなご夫婦? で、お二人ともあたりが柔らかくとても感じがよい。

うな丼はあっという間に出てきた。
そのへんのところ、多くを期待しているわけではないので別に驚きはないが、丼でなく重で出されたのは意外。そして、思ったよりうなぎが大きい。
みそ汁にざる豆腐のようなものが入っていると思ったら卵白だ。こういうみそ汁、昔あったなぁ… と懐かしさがこみ上げる。
小鉢はひじき。

うなぎの味付けは写真の色合いからも想像がつくと思うが、タレがかなり濃い。そのままでは濃すぎるが、ほぐしてひつまぶしのようにご飯と混ぜて食べればちょうどよい。
ふっくらしていて、値段を考えれば十分満足できるうな丼だ。

このお店、いかにも年季が入っていそうだが、実はそれほど古くない。
10数年前、五日市街道の400mほど東の場所から移転してきた。
食べ終わり、背後のいすに腰掛けている奥さんに聞いてみた。
「ここって、前はラーメン屋だった…?」
「そう… ですね」
以下、会話形式で。
奥さんA:ええ、うちの前はラーメン屋さんでした。もう10年以上も前のことですけど。
常連さんB:中野かどこかから…
わしh:荻窪の…
B:あ、そうそう。なんて名前だったっけ?
A:丸福。
h:荻窪の丸福。有名なお店だったんですよ。
B:らしいわねー。真っ黒なスープの(笑)。1回くらいしか入ったことないけど、どんな味だったかしらね。
h:僕も1回しか入ったことないです。
A:うちが入るとき、そのまま上から看板掛けたんです。だから丸福さんの看板はまだ掛かったままですよ。
h:えー!? それはすごいな。
B:いつの間にかいなくなっちゃったけど。丸福さん、お捜し?
h:いや、そういうわけでは…。でも気になりますよね。あれほどの有名店がここではヒッソリという感じでやってたじゃないですか。どういった事情だったのか…

そうです。
1980年代の最初のラーメンブームの発信地・荻窪のトップの座に君臨し日本一とまで称された「丸福」。
われわれの世代のラーメン好きで知らない人はいないという有名店が2005年に閉店後、短期間店を出していたのがこの物件。
僕は一度ここの「丸福」で食べたことがあるが、おばちゃんの言うようにいつの間にかいなくなっちゃったので、あれはマボロシか… と。
それが確かめられただけでも入ったかいがあったというもの。
大衆食堂史に残る事件の舞台といったら大げさか…。
(「丸福」に関してはこちらの記事をご参照ください)

[DATA]
エイトランド
東京都武蔵野市緑町1-4-3
[Today's recommendation]


◆ 猫写真はこちら その1 その2 その3 ◆

https://youtu.be/EWIgEtkE3GA