日常に溶け込む昭和なルーチン 【信濃屋】
2019.06.04
日本中でいちばん多いそば屋の名前は「信濃屋」なんじゃないかと、ふと考えたことがある。
いったい何店くらいあるのか、食べログで調べてみた。
“全国の信濃屋に関連するお店”(そば×信濃屋で検索) 検索結果:16件
思ったほど多くない…。
なぜそんなことを考えたかというと、小平市内だけでも「信濃屋」が2店あるからだ。小川駅西口の店と、天神町の鈴天通り商店街入り口の店。加えて、かつて回田道からちょっと入った鈴木町の住宅街にあったそば屋も、そんな名前だったように思う。
小平だけでそんなにあるんだから全国には何百軒もあるに違いないと考えたのだが、偶然に生じた偏りということ…?

検索ワードをちょっと変えてみた。
“全国の信濃に関連するお店”(そば×信濃で検索) 検索結果:82件
「信濃屋」に「信濃」「しなの」「信濃庵」等を加えればこれだけの数に上る。
これを有名どころと比べると、江戸そば三大系譜とされる「藪」「更科」「砂場」がそれぞれ7店、64店、37店、それらを数で上回る「長寿庵」で81店(調査年不明、長寿庵ブログより)。
“拡大「信濃屋」”はそのさらに上をいくわけである。

「信濃屋」という屋号はいわゆる“のれん会”的なつながりのあるものではなく、それぞれが独立に興った単一店舗群じゃないかと思う(たぶん…)。
「そばといえば信濃だろ」といったノリであちこちにできちゃった、みたいな。中華でいえば北京飯店、うどんでいえば讃岐屋のような。
それだけに、いちばん覚えてもらえない名前かもしれない。“そば屋と同義”みたいなニュアンスだから「そば屋」としか呼ばれなかったり…。
普通の中の普通、街そばの中の街そば。

本日は“天神町のそば屋”に。
実際、僕の中ではずっとそういう名称のお店だった。
店先の“冷したぬき”の短冊に惹かれた。夏になると食べたくなるたべもの。ぶっかけ系のそばはあまり食べないが、なぜか冷やしたぬきそばだけは好きなのである。

店内は思ったより小さく、4人掛けテーブル3卓、2人掛けテーブル1卓。

そして、思ったよりいい感じに年季が入っている。
ご飯の部や中華の部といったバリエーションに富んだ品ぞろえも好ましい。
普通の中の普通は外ヅラであって、どの店もそれなりに個性的だったりするあたり、街そばは侮れないものがあるのだ。

年配のおかあさん1人で切り盛りしているもよう(後ほど僕と入れ違いにご主人が出前より帰還)。

ホールの隅に置かれたアンティークな釣り銭機が現役のレジスターとして使われている。
その下にある壺のようなものは“土たんぽ”といい、そばつゆを作るとき、仕上げ工程(寝かせたかえしとだしを合わせ、さらに1日寝かせ、最後に湯煎にかける)で使われる道具だ。
おかあさんはこの土たんぽから柄杓と漏斗を使ってつゆをそば徳利に充填している。
つゆは自分でぶっかけるスタイルかと思ったらそうではなかったので、これは調理の一工程である。

そんな十年一日のごとき段取りを経て提供された冷したぬきそば。
どこまでもフツウのそれが3割おいしく感じられる、地球の午後3時。

[DATA]
信濃屋
東京都小平市天神町1-214
[Today's recommendation]


◆ 猫写真はこちら その1 その2 その3 ◆

https://youtu.be/0iaAMTPRCvY
日本中でいちばん多いそば屋の名前は「信濃屋」なんじゃないかと、ふと考えたことがある。
いったい何店くらいあるのか、食べログで調べてみた。
“全国の信濃屋に関連するお店”(そば×信濃屋で検索) 検索結果:16件
思ったほど多くない…。
なぜそんなことを考えたかというと、小平市内だけでも「信濃屋」が2店あるからだ。小川駅西口の店と、天神町の鈴天通り商店街入り口の店。加えて、かつて回田道からちょっと入った鈴木町の住宅街にあったそば屋も、そんな名前だったように思う。
小平だけでそんなにあるんだから全国には何百軒もあるに違いないと考えたのだが、偶然に生じた偏りということ…?

検索ワードをちょっと変えてみた。
“全国の信濃に関連するお店”(そば×信濃で検索) 検索結果:82件
「信濃屋」に「信濃」「しなの」「信濃庵」等を加えればこれだけの数に上る。
これを有名どころと比べると、江戸そば三大系譜とされる「藪」「更科」「砂場」がそれぞれ7店、64店、37店、それらを数で上回る「長寿庵」で81店(調査年不明、長寿庵ブログより)。
“拡大「信濃屋」”はそのさらに上をいくわけである。

「信濃屋」という屋号はいわゆる“のれん会”的なつながりのあるものではなく、それぞれが独立に興った単一店舗群じゃないかと思う(たぶん…)。
「そばといえば信濃だろ」といったノリであちこちにできちゃった、みたいな。中華でいえば北京飯店、うどんでいえば讃岐屋のような。
それだけに、いちばん覚えてもらえない名前かもしれない。“そば屋と同義”みたいなニュアンスだから「そば屋」としか呼ばれなかったり…。
普通の中の普通、街そばの中の街そば。


本日は“天神町のそば屋”に。
実際、僕の中ではずっとそういう名称のお店だった。
店先の“冷したぬき”の短冊に惹かれた。夏になると食べたくなるたべもの。ぶっかけ系のそばはあまり食べないが、なぜか冷やしたぬきそばだけは好きなのである。

店内は思ったより小さく、4人掛けテーブル3卓、2人掛けテーブル1卓。

そして、思ったよりいい感じに年季が入っている。
ご飯の部や中華の部といったバリエーションに富んだ品ぞろえも好ましい。
普通の中の普通は外ヅラであって、どの店もそれなりに個性的だったりするあたり、街そばは侮れないものがあるのだ。

年配のおかあさん1人で切り盛りしているもよう(後ほど僕と入れ違いにご主人が出前より帰還)。


ホールの隅に置かれたアンティークな釣り銭機が現役のレジスターとして使われている。
その下にある壺のようなものは“土たんぽ”といい、そばつゆを作るとき、仕上げ工程(寝かせたかえしとだしを合わせ、さらに1日寝かせ、最後に湯煎にかける)で使われる道具だ。
おかあさんはこの土たんぽから柄杓と漏斗を使ってつゆをそば徳利に充填している。
つゆは自分でぶっかけるスタイルかと思ったらそうではなかったので、これは調理の一工程である。

そんな十年一日のごとき段取りを経て提供された冷したぬきそば。
どこまでもフツウのそれが3割おいしく感じられる、地球の午後3時。

[DATA]
信濃屋
東京都小平市天神町1-214
[Today's recommendation]


◆ 猫写真はこちら その1 その2 その3 ◆

https://youtu.be/0iaAMTPRCvY