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幾千もの川を越え 【千曲食堂】

2019.03.17

 西武新宿線の鷺ノ宮駅で降りて散歩するのに、いつもなら阿佐谷に向かうところを、逆方向に行ってみることにした。西武池袋線練馬駅方面、未知の世界である。
途中、典型的な東京郊外の住宅街で特筆すべきことはないが、しいて特徴を挙げればその典型的というところ。子どものころ想像していた東京の町というのはこんな感じだったかもなぁ… という上品で平和な空気感が漂っている。


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練馬区指定文化財・南蔵院鐘楼門


前方に出現した高い建物を目印に進む。
着いてみれば、それは練馬区役所。1996年竣工、地上21階建て。
区役所から駅方面への歩道橋の架かる目白通りを渡ると、いきなり繁華街に。たまに自転車で通ってここの駅前は栄えている印象だったが、商業地域がそれほど広いわけではないのかも。


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おぼろげな記憶で細い路地へ。
以前、そのあたりで偶然見つけたのが「千曲食堂」。それはネット上で見覚えのある外観で、ラーメンなら「栄屋ミルクホール」、洋食なら「キッチンぶるどっく」というような、いわばSランクの昭和食堂として記憶されていたものであった。


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11時半で、ちらっとのぞいてみるとお客さんの気配はない。いまなら入れる… 気がした。
聞こえの高い「千曲食堂」に潜入しようとの野心を抱いてやって来たわけではないが、その空虚感には排他的ニュアンスはなくむしろ寂しげでもある。


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ところが、「ほかに誰もいないと入りづらくない…?」と相方。
たしかにそのとおりで、物事には二面性がある… と(笑)。そもそもの目的の一つが食べもの屋の探索でもあるし。


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で、駅周辺をひと通り見て回ったが、これといったお店は見つからない。
“これといった”とはすなわち“千曲食堂以上にインパクトのある”ということ。歩いているうちにもそのブラックホール的吸引力はどんどん強まっていくようであった。
12時半、再び「千曲食堂」。


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カウンター9席の細長い店内。
ご高齢のおかみさんが1人で切り盛りしているようだ。


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いたるところ、外観から想像していた以上に年季が入っている。外見はアレでも入ってみれば意外に小ぎれいということが多く、こういう正真正銘なのは久しぶり。僕なんか昭和40年代の光景がフラッシュバックしちゃったりなんかして ( ̄  ̄;) ムム…


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オーダーシステムは、単品料理+定食(ご飯、みそ汁、お新香)200円というもの。
目の前のネタケースに仕込んである大きいコロッケに、まず一品めは決まり。あとはバランスを考えたつもりで焼肉と玉子焼。3品とも350円。それに定食×2。


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あとで思ったが、バランスを考えるなら野菜で、おひたしやおかずケースに並んでいるホウレンソウの卵とじといったものも頼めばよかった。


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壁の品書きの短冊の上に並ぶ大入り額のたぐいを見て「あれ…?」と思った。
いずれも宛名が“宝華さん江”。中華料理店らしい。
気になるので聞いてみた。


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「主人の店なんです」とおかみさん。「肩を痛めてできなくなっちゃって。それで、かあちゃんにできることをやっていくしかない(笑)って、このお店を始めたんですよ」
中華屋さんで肩の故障は厳しい。中華鍋の炒め物もラーメンの湯切りも、肩の動きが基本だ。
食堂の名前はおかみさんのお母さんの故郷、長野の千曲川から。


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3品ほぼ同時にできあがる。
コロッケは、小判形の形状で俵形の厚みがあるというか… 独特の形状&サイズである。衣はカラッと、中はホクホク。タネはほぼジャガイモで、ちょうどよいバランス感覚でひき肉がちらほら。素朴なおいしさで、いくらでも食べられそう。2個350円はお得だ。


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豚バラの焼肉も甘めの優しい味付け。玉子焼は軽く味が付いているが、しょうゆかソースをかけて食べる、なんだか懐かしいおかずだ。


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「その中華屋さんはどこでやられてたんですか?」
「ここなんです。食堂の前は中華屋で、でも1年くらいしかやらなかったけど…」
中華屋にしたらこの物件は小さすぎるかと思って聞いてみたんだが、小商いからスタートという時代だったかもしれない。


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「それで、食堂は何年くらいに?」
「59年。始めたのが昭和35年で…」
「35年… まだ生まれてない(笑)」
「あらそう? ずいぶん長くやってきたものですね(笑)」


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[DATA]
千曲食堂
東京都練馬区豊玉北5-32





[Today's recommendation]

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https://youtu.be/6cKXMGEF_XY


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