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新宿ディープゾーンの残影 【長野屋】

2019.03.01

 若いころ、新宿には踏み込むのに勇気の要る場所がいくつもあった。歌舞伎町、ゴールデン街、二丁目、場外馬券、しょん… もとい思い出横丁……。
これらダークサイドはそれぞれにオープン化の方向に変化してきているが、なかでも特に大きな変貌を遂げたのが場外馬券売り場、現・ウインズ新宿周辺である。


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かつてセントラルホテル前の通りは甲州街道陸橋に突き当たり、左に折れたところにある狭い歩行者用トンネルは、特定の人間しか通らない、異界への入り口だった。
その向こうの世界を僕は知らない。


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平成に入り高島屋が開業、南口コンコースが線路の東側に延びて東南口改札ができ、その上にはルミネ2、改札を出て広い階段を下りたGAP前広場は有数の待ち合わせスポットとなり、人の流れは東口から高島屋へ向かう動線と合流。
どん突きのガード下は、いまや新宿の人の流れの要衝である。


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人波に流され雑然たる風景の一部にしか映らない街角も、立ち止まって眺めれば個々の身上が見えてくる。
新たな新宿の中心の五差路の一角に、場末時代の面影を残す大衆食堂。


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食堂「長野屋」は1915年創業。
なんと、100年企業である。


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存在は知っていたが、あらためて立ち止まって眺めてみると、表の品書きの周りにはいろいろな書き込みがなされている。
“材料値上げに耐えきれず、かつ丼、カツカレ、とんかつ……、各50円上げさせていただきます”
厳しい経営環境はどこも変わらない。


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店内は1~6人用のテーブル席のみ30席ほど。
中央のネタケースが懐かしい。


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注文はイカフライ定食。値段は、表のメニュー表では850円、店内は870円(笑)。
実際いくら払ったかは、会計で少しゴタゴタッとなったので覚えていない ( ̄ω ̄;) ウーム…


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入り口左手に上り階段があるが2階が客席として使われている気配はない。調理の物音は聞こえず、ネタケースの向こうで昇降機の到着チャイム音がするので、2階が厨房になっているものと思われる。


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店員はホール係の中国系? 女性と、その女性が「奥さん」と呼ぶ初老のやせた女性の2人体制。ホール係の方は客には誠実に相対するが、奥さんには反抗的である(笑)。
その奥さん、一見神経質そうにも見えるが、いかめしい顔でメニューを眺めている年配客に「どれがいいかなー?」といきなりちょっかい出したりと、実のところ一本外れてるふう ( ̄. ̄;) …


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イカフライはリングタイプではなく大きめの短冊が3本。各半分に包丁が入れてある。
イカは肉厚のモンゴウ系で、火の通しがよく、やわらかでおいしい。ただ、半分に切ってはあるがひと口サイズには大きく、かみちぎろうとしても薄皮がじゃまをする。ちょっと食べづらい。
付け合わせの千切りキャベツの量が少ないのは、不思議とこういう外観の食堂に共通している。みそ汁は豆腐とワカメ。
簡素にして堅牢な組み立ての一食である。


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支払いのとき奥さんが見当たらず、ホールの女性に呼ばれて階段を下りてきた。
「〇〇〇と〇〇〇で…」と階段の途中から、「合計1760円になります」
「えー…!?」と驚くワタクシ。
「ちがうよ」とホール係。
「ごめんなさい、えーと、こっちね」と奥さん。「でもお客さんの前でいまの口の利き方はよくないよ。『ちがうよ』じゃなくて『ちがいます』」
いや、客の前でいきなり接客指導をするのもどうかと思うぞ。


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1000円払ってお釣りを受け取り、「ごちそうさま」と言うと…
「まちがえましたぁ… (・_・、) グス」と小声でつぶやいたあと、(なんちゃって (・ڡ < ) テヘペロ!! )という表情を浮かべる。

間違えたところからすでに“なんちゃって”なのかは定かでないが、長年赤鉛筆相手に鍛え上げてきた接客術はひと癖もふた癖もありそうだ。


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[DATA]
長野屋
東京都新宿区新宿3-35-7





[Today's recommendation]


https://youtu.be/J2bCQMj3D9w



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 変わりゆく新宿

朝のニュースで指揮者アンドレ・プレヴィンの訃報が流れた。プレヴィンはN響首席客演指揮者時代の2012年に実演に接する機会があったが、そのときすでに身体的フレイルな感じだった。享年89歳。


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ジャズピアニストだった若いころの音源が聴きたくてディスクユニオンに行こうとしたら、ビルが解体されていた。両隣がなくなり紀伊國屋ビルがぽつんと立っている。Jazz館の移転先は、「長野屋」のすぐ裏手であった。
『West Side Story』を購入。



https://youtu.be/gc0SU0LfPzw


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