異世界体感型カフェカレー 【くぐつ草】
2019.02.11
老舗喫茶店に美味なるカレーあり、と誰か言ったかどうか知らないが、東京の有名カレー店は喫茶店をベースとしている店が多い。
インドカレー全盛の昨今、欧風カレーの流れをくむクラシックなカレーは主流の座を追われ、やはり衰退著しいオールドファッションな喫茶店のレシピに辛うじてDNAの継承を認めることができる、といったガラパゴス的構図かもしれない。

カフェカレーの発信地ともいわれる吉祥寺にあって三大カレーと称されるのが、「まめ蔵」、「武蔵野文庫」と、この「くぐつ草」。

調べてみると、「くぐつ草」は1979年創業。
ん…? となった。
昔から当たり前のように存在していたので、もっと古いと思っていた。
ということは僕が吉祥寺に住んでいたころはまだ新しいお店だったということになる。「まめ蔵」も1978年オープンと知ったときは同じような戸惑いを感じたが、要するに自分もそっちのガラパゴス側に属するゾウガメのたぐいであると。
1975「サムタイム」、1976「ゆりあぺむぺる」、1977「多奈加亭」、1980「レモンドロップ」、1983「ロゼ」… この時代、吉祥寺のカフェ文化は一気に花開いたようだ。

すれ違えないような狭い階段を下り、非力な人間にはびくともしない重い鉄の扉を開けると、別世界が広がる。

トンネルか坑道のごとくアーチ形に掘り抜かれた地下空間。意外な広さに驚かされる。
実は一度入ったことがあるが、それこそ35年も前の話なのでまったく覚えておらず、しっかり驚かされた(笑)。
1組順番待ちがあったが、この広さならすぐ空くだろうと後ろに並ぶ。
ところが、ものすごく回転が遅い。
女性客(それも若い人)がほとんどでめいめい会話を楽しんでいらっしゃるので、声がトンネル空間に反響して「ガヤガヤ」と聞こえる。
BGMにジャズが流れているが、「ガヤガヤ」にかき消される。

本を読みながらカレーをものすごいゆっくりペースで食べている若い女性客がいる。この暗さで読書はムリだろ… と一瞬眉をひそめるが、自分も若いころ神保町の「さぼうる」で本読むふりしてたのやらなんやかんや思い出し、頬が緩むおじさんであった。

注文はくぐつ草カレー1150円×2(1つオムカレーにしようと思ったが売り切れだった)。

カレーはよく煮込んでタマネギの糖分を凝縮させたような甘さが特徴的。スパイスも効いていて、ホールのままのものがけっこう口にさわり、かむといろんな香りがする。やや辛い。

肉はポークでごろごろと塊が入っているほか、煮崩れた繊維質の含有量も多い。
このように意外にワイルドなカレーである。

吉祥寺のど真ん中にこんな地下空間が存在すること自体が驚き。
まさにパラレルワールドであり、狭い階段、重い扉は次元のひずみを体感させる仕掛け。うさぎ穴、衣装だんす、あかがね色の表紙の本… ファンタジー小説の導入部によく使われる手法だ。
再び扉をくぐり、地上に出たら、違う世界に迷い込んじゃってるかもよ。

[DATA]
くぐつ草
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-7-7 島田ビルB1F
http://www.kugutsusou.info/
https://twitter.com/kugutsuso
[Today's recommendation]



https://youtu.be/bSXRvgFea-0
老舗喫茶店に美味なるカレーあり、と誰か言ったかどうか知らないが、東京の有名カレー店は喫茶店をベースとしている店が多い。
インドカレー全盛の昨今、欧風カレーの流れをくむクラシックなカレーは主流の座を追われ、やはり衰退著しいオールドファッションな喫茶店のレシピに辛うじてDNAの継承を認めることができる、といったガラパゴス的構図かもしれない。

カフェカレーの発信地ともいわれる吉祥寺にあって三大カレーと称されるのが、「まめ蔵」、「武蔵野文庫」と、この「くぐつ草」。

調べてみると、「くぐつ草」は1979年創業。
ん…? となった。
昔から当たり前のように存在していたので、もっと古いと思っていた。
ということは僕が吉祥寺に住んでいたころはまだ新しいお店だったということになる。「まめ蔵」も1978年オープンと知ったときは同じような戸惑いを感じたが、要するに自分もそっちのガラパゴス側に属するゾウガメのたぐいであると。
1975「サムタイム」、1976「ゆりあぺむぺる」、1977「多奈加亭」、1980「レモンドロップ」、1983「ロゼ」… この時代、吉祥寺のカフェ文化は一気に花開いたようだ。

すれ違えないような狭い階段を下り、非力な人間にはびくともしない重い鉄の扉を開けると、別世界が広がる。

トンネルか坑道のごとくアーチ形に掘り抜かれた地下空間。意外な広さに驚かされる。
実は一度入ったことがあるが、それこそ35年も前の話なのでまったく覚えておらず、しっかり驚かされた(笑)。
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1組順番待ちがあったが、この広さならすぐ空くだろうと後ろに並ぶ。
ところが、ものすごく回転が遅い。
女性客(それも若い人)がほとんどでめいめい会話を楽しんでいらっしゃるので、声がトンネル空間に反響して「ガヤガヤ」と聞こえる。
BGMにジャズが流れているが、「ガヤガヤ」にかき消される。

本を読みながらカレーをものすごいゆっくりペースで食べている若い女性客がいる。この暗さで読書はムリだろ… と一瞬眉をひそめるが、自分も若いころ神保町の「さぼうる」で本読むふりしてたのやらなんやかんや思い出し、頬が緩むおじさんであった。

注文はくぐつ草カレー1150円×2(1つオムカレーにしようと思ったが売り切れだった)。

カレーはよく煮込んでタマネギの糖分を凝縮させたような甘さが特徴的。スパイスも効いていて、ホールのままのものがけっこう口にさわり、かむといろんな香りがする。やや辛い。

肉はポークでごろごろと塊が入っているほか、煮崩れた繊維質の含有量も多い。
このように意外にワイルドなカレーである。

吉祥寺のど真ん中にこんな地下空間が存在すること自体が驚き。
まさにパラレルワールドであり、狭い階段、重い扉は次元のひずみを体感させる仕掛け。うさぎ穴、衣装だんす、あかがね色の表紙の本… ファンタジー小説の導入部によく使われる手法だ。
再び扉をくぐり、地上に出たら、違う世界に迷い込んじゃってるかもよ。

[DATA]
くぐつ草
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-7-7 島田ビルB1F


[Today's recommendation]



https://youtu.be/bSXRvgFea-0