荻窪ラーメン源流の味 【中華そば 丸信】
2018.12.24
『本屋、はじめました』(苦楽堂刊)の題材である、著者・辻山良雄氏が実際に開業した新刊書店「Title」をのぞきに行こうという。
場所は杉並区桃井1丁目の青梅街道沿い。
寒風吹きすさぶなか、西武新宿線・井荻駅から歩いて向かう。が、お店は開いていない。
時刻は11時50分。12時開店のもよう。

それじゃ、まず街に出て昼ごはんを食べ、帰りに本屋に寄ろうということになった。
ちなみに「Title」はギャラリー、カフェ併設型であり、機会を見てカフェを利用してみたい。

繁華街となると西荻窪か荻窪だが、もうそこから四面道交差点の案内標識が見えているので、荻窪は意外に近そうだ。
そして、四面道で思い出したお店がある。
かつて東京ラーメンの中心地であった荻窪を代表するラーメン店「丸信」。

荻窪・丸信といえば、東京のラーメンの歴史そのものともいわれる“丸長のれん会”の最古参。創業1950年の老舗である。
以前は荻窪に2店あったが、拡張前の駅前ロータリーの店は1991年に閉店し、いまは四面道近くの店のみとなっている。

学生時代の記憶であるが、年末に帰郷するでもなく高校時代の友人で大学も同じになったKE君とこのあたりをぶらついたことがある。当時、彼は中野、僕は吉祥寺に住んでいたので、間をとって荻窪ということだったのかな…?

駅前広場のしょぼい風景に、家族と離れて年末を過ごす不安感を募らせたものだ。
そのとき食べたラーメンが駅前の「丸信」だった。
その記憶から、年末の今日、「丸信」に引き寄せられたのかもしれない。

席数は4人掛けテーブル3卓とカウンター6席。
キツキツに席を配置することなく遊休地の多いホール図面は西早稲田の「伊勢屋」や淡路町の「近江屋」を思わせ、昭和感漂う。

注文は、味玉ラーメン770円とワンタンメン810円。

「丸信」は作家・椎名誠の好きなラーメンとして知られる。
――中央線・荻窪駅前の「丸信」というちょっと立ち喰いそばふうのラーメン屋が一番うまい! と思っている。(中略)荻窪地区ではこの丸信と同じ一角にある「春木屋」というのが有名で「荻窪地区のうまいラーメンは?」というと、この春木屋が「あっどうも、まいど」というような妙に手慣れた顔つきで登場するのである。これがじつにくやしい。(椎名誠、『気分はだぼだぼソース』(1980)より)

「春木屋」には大行列が
当時はそれに、(青梅街道沿いの)「丸福」を加え駅前三国志状態だったが、その後「丸信」はロータリー拡張に伴い、「丸福」はいろいろあってそれぞれ閉店し、「春木屋」が天下統一を果たすわけである。それもだいぶ古い話だが… σ( ̄、 ̄=) ウーム…

ラーメンは昔ながらのあっさりしょうゆ味。節系の香りの広がるだしに、少し甘味のあるかえし。
中太ゆるウェーブの麺が特徴的で、軟らかいようでいてしっかりコシがあり、例えが適切かどうかわからないが、うどん系の乾麺のような感覚(僕は白石温麺を思い出した)。小麦の風味が強く、かん水臭さを感じないということかと思う。

色の濃いしっかり味付けされたメンマは「丸福」を思い出させる。ワンタンは餡が少なめだが皮がおいしく、ツルッとのど越しがよい。味玉は予想外の半熟。

平成最後といわれても何の感慨も湧かないが、昭和最後のころの年の瀬の風景は、ラーメンの味とともに感傷的に思い出されるのである。

[DATA]
中華そば 丸信
東京都杉並区上荻1-24-22
[Today's recommendation]



https://www.youtube.com/watch?v=yHTqP5s12eg
『本屋、はじめました』(苦楽堂刊)の題材である、著者・辻山良雄氏が実際に開業した新刊書店「Title」をのぞきに行こうという。
場所は杉並区桃井1丁目の青梅街道沿い。
寒風吹きすさぶなか、西武新宿線・井荻駅から歩いて向かう。が、お店は開いていない。
時刻は11時50分。12時開店のもよう。

それじゃ、まず街に出て昼ごはんを食べ、帰りに本屋に寄ろうということになった。
ちなみに「Title」はギャラリー、カフェ併設型であり、機会を見てカフェを利用してみたい。

繁華街となると西荻窪か荻窪だが、もうそこから四面道交差点の案内標識が見えているので、荻窪は意外に近そうだ。
そして、四面道で思い出したお店がある。
かつて東京ラーメンの中心地であった荻窪を代表するラーメン店「丸信」。

荻窪・丸信といえば、東京のラーメンの歴史そのものともいわれる“丸長のれん会”の最古参。創業1950年の老舗である。
以前は荻窪に2店あったが、拡張前の駅前ロータリーの店は1991年に閉店し、いまは四面道近くの店のみとなっている。

学生時代の記憶であるが、年末に帰郷するでもなく高校時代の友人で大学も同じになったKE君とこのあたりをぶらついたことがある。当時、彼は中野、僕は吉祥寺に住んでいたので、間をとって荻窪ということだったのかな…?

駅前広場のしょぼい風景に、家族と離れて年末を過ごす不安感を募らせたものだ。
そのとき食べたラーメンが駅前の「丸信」だった。
その記憶から、年末の今日、「丸信」に引き寄せられたのかもしれない。

席数は4人掛けテーブル3卓とカウンター6席。
キツキツに席を配置することなく遊休地の多いホール図面は西早稲田の「伊勢屋」や淡路町の「近江屋」を思わせ、昭和感漂う。

注文は、味玉ラーメン770円とワンタンメン810円。

「丸信」は作家・椎名誠の好きなラーメンとして知られる。
――中央線・荻窪駅前の「丸信」というちょっと立ち喰いそばふうのラーメン屋が一番うまい! と思っている。(中略)荻窪地区ではこの丸信と同じ一角にある「春木屋」というのが有名で「荻窪地区のうまいラーメンは?」というと、この春木屋が「あっどうも、まいど」というような妙に手慣れた顔つきで登場するのである。これがじつにくやしい。(椎名誠、『気分はだぼだぼソース』(1980)より)

「春木屋」には大行列が
当時はそれに、(青梅街道沿いの)「丸福」を加え駅前三国志状態だったが、その後「丸信」はロータリー拡張に伴い、「丸福」はいろいろあってそれぞれ閉店し、「春木屋」が天下統一を果たすわけである。それもだいぶ古い話だが… σ( ̄、 ̄=) ウーム…

ラーメンは昔ながらのあっさりしょうゆ味。節系の香りの広がるだしに、少し甘味のあるかえし。
中太ゆるウェーブの麺が特徴的で、軟らかいようでいてしっかりコシがあり、例えが適切かどうかわからないが、うどん系の乾麺のような感覚(僕は白石温麺を思い出した)。小麦の風味が強く、かん水臭さを感じないということかと思う。

色の濃いしっかり味付けされたメンマは「丸福」を思い出させる。ワンタンは餡が少なめだが皮がおいしく、ツルッとのど越しがよい。味玉は予想外の半熟。

平成最後といわれても何の感慨も湧かないが、昭和最後のころの年の瀬の風景は、ラーメンの味とともに感傷的に思い出されるのである。

[DATA]
中華そば 丸信
東京都杉並区上荻1-24-22
[Today's recommendation]



https://www.youtube.com/watch?v=yHTqP5s12eg