fc2ブログ

時空を超えるチキンかつ 【かつ秀】

2017.09.12

 昭和的食堂に足を踏み入れた瞬間、周りの空間がグニャッとひずむような感覚を覚えることがある。
それが特に強かったのが久米川のそば屋 「しなの」
そこでは内装や照明の具合、店・客双方側の登場人物のキャラなどによって、見事に昭和40年代的空間が実現していた。

僕がグニャリ体験と呼ぶそういう感覚は、暖簾をくぐった瞬間、自分の中の時間軸といま視界に飛び込んできた光景との乖離によってもたらされる平衡感覚の喪失(目眩)なんじゃないかと思っている。


katsuhide2-34.jpg


初めて入ったとき、「しなの」と同じぐらいグニャリとなったのが、萩山のとんかつ屋「かつ秀」。


katsuhide2-38.jpg


ここは外観もだいぶ年季が入っているが、内部のしつらえは素人目にもひと昔もふた昔も前のものだ。照明はオレンジのランプシェードにより昼どきにして落日の色、『三丁目の夕日』的演出効果を上げている。

聴覚効果としてはNHKラジオ第1。
不意に『ひるのいこい』テーマ曲が流れたりして、いやおうなしに昭和に飛ばされる(「掘り出されたタイムカプセル」参照)。


katsuhide2-35.jpg


ちなみに「しなの」も「かつ秀」も東村山市萩山町だが、ほかにも 「ふじのや」「あさひ」「揚子江」 と、ディープな物件を列挙することができる。
萩山町自体、次元の狭間であるかのようだ。


katsuhide2-36.jpg


本日、入り口の引き戸は網戸になっている。
店内が丸見えで、こうなるとグニャリ効果は得られない。
しかし、盛夏はさすがに冷房を使うだろうが、いまぐらいの季節は網戸で十分という、人にも環境にも優しい対応といえる。


katsuhide2-32.jpg


小さな店で、4人掛けテーブル×2、壁(鏡)に向かった2人掛けテーブル×1、カウンター4席。
テーブル・カウンターの天板も壁も、店内はいつもピカピカに磨き上げられて木材が飴色の光沢を放ち、歳月の経過を感じさせる。
BGはやはりNHK第1で、こういう空間で聴いていると時の彼方より届けられる音声のような錯覚を覚える。


katsuhide2-18.jpg


注文はチキンかつ定食800円。
カツは中サイズが2枚。付け合わせはいつものポテトサラダではなくスパゲティサラダ(リンゴ入り)が別皿で。きゅうりのぬか漬け、豆腐とネギの味噌汁という内容。


katsuhide2-31.jpg


こちらは市内でいちばんおいしいとんかつ屋と勝手に決めていて(といっても専門店は5軒もないんだが…)、個人的評価としては都心の名店にも引けをとらない… かもしれない(採点等は上のリンクより前の記事を参照してください)。
そのようにロースかつはおすすめの逸品だが、チキンかつ定食も味・ボリュームともたいへん満足のいく内容であった。


katsuhide2-33.jpg


それにしても、店頭に札が出てる冷やし中華が気になるなぁ。もうシーズンオフだけど。


katsuhide2-37.jpg


[DATA]
かつ秀
東京都東村山市萩山町1-2-3





[Today's recommendation]


https://youtu.be/oW2QZ7KuaxA



chat170912-22.jpg



miyaginohagi-22.jpg
秋の七草・萩;ミヤギノハギ(萩山公園)


掘り出されたタイムカプセル 【かつ秀】

2017.03.27

 1月にふらっと入ってとても気に入った店。
いつの時代の建造か、店内のつくりの古さは相当で、その時代のまま残っている感じ。そういう場所へ踏み入ると、一瞬クラッとくる。その感覚が僕は好きだ。
この店は掃除が行き届いており、テーブルやカウンターはピカピカに磨き上げられている。クラッときてピカッとなるのはもっと好きだ。


katsuhide21.jpg


外観、店内の状況から予想されるとおり、この店も高齢のたぶんご夫婦で回している。おとうさんは寡黙な職人タイプで、おかあさんは話し好き。
このおかあさん、ラジオのニュースの項目一つ一つにご自身の見解をもっている。トランプ次期大統領、トヨタ自動車からマニー・ラミレスまで、いちいち何か意見を言う。すごい博識、というか好奇心の強い人なんだと思う。おとうさんも別にうるさがるでもなく、ときどきニコニコと相づちを打っている。
こうやって何十年もこの小さな店を2人仲よく切り盛りしてきたんだろうな。


katsuhide23.jpg


ニュースが終わって次の番組のテーマ音楽が流れだした。
『ひるのいこい』
えっ… まだやってたの? 懐かしすぎでしょう。
あとで調べたら昭和27年放送開始だから65年番組だ。テーマ曲も変わらず。


katsuhide26.jpg


古関裕而作曲のこの曲が素晴らしい。
ちなみに同様に昭和の農村風景を想起させる名曲『新日本紀行』後期のテーマ曲(冨田勲作曲)は昭和44年だから、それよりさらに17年さかのぼった曲想ということになる。
このお店にして、この曲。その偶然の一致はほとんど奇跡に近い。鳥肌ものの体験をした。

――ここまでが1月の話。


katsuhide24.jpg


そのとき食べたロースかつ定食1000円がおいしかったので今回もそれにした。チキンかつという手もあったのだが、ロースかつで『東京とんかつ会議』の基準で採点してみようと考えたのだ。
このお店は肉、ご飯、お新香が秀逸と前回感じたが、今回もその感想は変わらない。


katsuhide111.jpg


〈採点〉 肉3、衣2、油1、キャベツ2、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁2、(特記:ポテトサラダ3)の計21点。

山本益博氏採点の高田馬場「成蔵」上ロースカツ定食と並んでしまった(笑)。


katsuhide22.jpg


[DATA]
かつ秀
東京都東村山市萩山町1-2-3





[Today's recommendation]


https://youtu.be/pE-MaH03k0E


Latest Articles
どこか遠くへ 【たから家 本店】 Oct 01, 2023
ホスピタリティの心 【魚人】 Sep 30, 2023
見どころいっぱい 【国立天文台―その2】 Sep 29, 2023
日本の天文学研究の中心 【国立天文台】 Sep 28, 2023
王道! 大衆食堂 【三喜食堂】 Sep 27, 2023
見て、触れて、体感できる広報施設 【陸上自衛隊広報センター りっくんランド】 Sep 26, 2023
古河名物といえば 【田村屋 西口店】 Sep 24, 2023
手淹れコーヒーと地元野菜のプレートランチ 【Sane cafe & gallery】 Sep 23, 2023
古河城遺構の観光拠点 【お休み処 坂長】 Sep 22, 2023
古河藩重臣のための屋敷 【鷹見泉石記念館】 Sep 22, 2023
ハーバルライフ提案型施設 【生活の木 薬香草園】 Sep 21, 2023
わらじタンタンとは? 【中国味界 海燕】 Sep 19, 2023
Ranking
          
          
Category
Category-2