懐かしき酒場の情景 【百味 プロぺ店】
2018.08.11
「西武所沢店」に買い物に出かけたら1階が食品売り場に変わっていて驚いた。調べてみると去年の春にはリニューアルしていたらしい。ずいぶんご無沙汰だと思ってはいたが、そこまで来ていなかったとは…。
所沢西武は唯一徒歩で行けるデパートであり、昔はたしかに利用頻度が高かったが、このところデパートでの購買行動そのものが激減している。それは僕らに限ったことではないだろう。なので、この変革はたいへん好ましく映った。
“デパ地下”という用語はもはや“デパート”から独り歩きしているといっていいほど定着した新語であり、かつポジティブな印象を与える。デパ地下と聞いただけで人々は浮足立つ。
いま、食品売り場は人を呼べ、金が落ちるのだ。“百貨”にこだわる時代ではない。

そういう店舗デザインは経営コンサルタントの能力次第でもあるだろう。
が、独自アイデアの一つも浮かばないくせに、やれカイゼンだ、やれトヨタ方式だと、耳にタコの提案で中小企業からガッポリな自称コンサルのなんと多いことか。(←森田美由紀アナ調で)
ここに提案いたします。こうなったら1階にとどまらず、全フロア食品売り場の「西武デパ地下館」を渋谷あたりにどうでしょう、株式会社そごう・西武のエライさん(笑)。

11時すぎに用事が済んで、そうなると行ってみたいお店がある。この時間帯が重要。
12時前なら“飲んでいない客も一人二人”いるかもしれない。
え、なんです? 昼の12時ですよね。“飲んでる人が一人二人”じゃなくて?

チェーン店の見本市のようなプロペ通り中ほどに、そのお店はある。

気をつけていないと派手な看板群に埋もれて見過ごしてしまいそうな手書きの張り紙。
「地元密着 足かけ50年」
横には地下への階段。
しかしながら見過ごされるという心配は無用。
ここ「百味」は所沢でも一、二という有名店であり、客は目をつぶっても、酔っ払っていてもたどり着くことができる。
イマ風に安っちく派手なプロペ通りの地下にこんな空間があるとは… と、情報である程度イメージしていても驚くほど広く、第一印象は… ムカシ風に安っちく地味。
実に懐かしい光景が広がっていた。
昔、六本木の会社に勤めていたころ、路地裏のこういう店でよく昼めし食べたり飲み会したりしてた。上司と2人で昼めしに出て、ビール1杯で興に乗ってそのままだらだら夕方まで大瓶8~9本、会社帰ったら行方不明って大騒ぎになってたんだっけなぁ… ( ̄- ̄;).o0O

若いころはそんなんだったけど、いまは理由なく昼に飲もうという気にはならない。
この店は表の看板でランチサービスのあることは確認していたが、そんなぐだぐだな気配は容易に想像がつくので、踏み込むタイミングを計っていたわけである。
11時開店。
11時30分前で、すでにお客さんは20人強。
わしらの見通しはぜんぜん甘く、飲んでいない人0名。もとい、座敷席の若い夫婦に連れられた幼児1名のみ、非飲酒客。

一方、僕はそういうので浮くというかKYな感じになるのがニガテ。
なので、とりあえず生ビール中ジョッキを頼んで場の空気に紛れ込んだうえで、ビール運んできたおばちゃんに「ご飯だけでもいいの?」と聞いてみる。
おばちゃんは向こうのほうからランチメニュー(お昼の献立)を持ってきてくれる。
天ぷら定食を頼んだら、「天ぷら、まだできないの」とおばちゃん。
そういえば表の看板に“寿し準備中”の紙が貼ってあった。あっちのほうで厚焼き玉子を頼んだ客も断られていた。
カウンターの中には職人さんが3人ほどいるが、すし・天ぷらと専門性の高い和食担当はまだ時間外なのかも。

そのように技能別に職人さんを配備して、こちらのお店は“百の味”を提供しているのかもしれない。
ある意味、フードコートに似ている。それを言うならデパート食堂。
百貨店と百味は“百”の用法が同じ。
「もろもろそろえます」

「刺し身ならできるんだけど」というので、そのまま刺身定食1080円にスライド。
もう一品はコロッケ定食650円
コロッケはたまねぎの風味としっかりした味付けで、ソースをかけなくてもビールに合う感じ。アテとしての役割をわきまえている味。

刺し身はマグロ、カンパチ、タコ。こういう場末感の漂う大衆酒場で出てくる刺し身にしては上々。タコなんか硬いけど、かみしめればしっかりタコの風味が広がる。

「ご飯だけの客って珍しいの?」とおばちゃんに聞いてみた。
「そんなことないよ」とおばちゃん。「飲みながらご飯食べる人もいるし、ご飯だけって人もいっぱい」
今日は土曜日だから飲み率が高いのかもしれない。

僕らが食べている間にも続々とお客さんが入ってきて、12時ごろには広い店内もかなり埋まってしまった。
特別なことをしなくとも、これだけの賑わい。
百貨店も学ぶところが多いんじゃないだろうか。

[DATA]
百味 プロぺ店
埼玉県所沢市日吉町4-3
[Today's recommendation]

https://youtu.be/KCkmIyC6v00


◆ 猫写真はこちら その1 その2 ◆
「西武所沢店」に買い物に出かけたら1階が食品売り場に変わっていて驚いた。調べてみると去年の春にはリニューアルしていたらしい。ずいぶんご無沙汰だと思ってはいたが、そこまで来ていなかったとは…。
所沢西武は唯一徒歩で行けるデパートであり、昔はたしかに利用頻度が高かったが、このところデパートでの購買行動そのものが激減している。それは僕らに限ったことではないだろう。なので、この変革はたいへん好ましく映った。
“デパ地下”という用語はもはや“デパート”から独り歩きしているといっていいほど定着した新語であり、かつポジティブな印象を与える。デパ地下と聞いただけで人々は浮足立つ。
いま、食品売り場は人を呼べ、金が落ちるのだ。“百貨”にこだわる時代ではない。

そういう店舗デザインは経営コンサルタントの能力次第でもあるだろう。
が、独自アイデアの一つも浮かばないくせに、やれカイゼンだ、やれトヨタ方式だと、耳にタコの提案で中小企業からガッポリな自称コンサルのなんと多いことか。(←森田美由紀アナ調で)
ここに提案いたします。こうなったら1階にとどまらず、全フロア食品売り場の「西武デパ地下館」を渋谷あたりにどうでしょう、株式会社そごう・西武のエライさん(笑)。

11時すぎに用事が済んで、そうなると行ってみたいお店がある。この時間帯が重要。
12時前なら“飲んでいない客も一人二人”いるかもしれない。
え、なんです? 昼の12時ですよね。“飲んでる人が一人二人”じゃなくて?

チェーン店の見本市のようなプロペ通り中ほどに、そのお店はある。

気をつけていないと派手な看板群に埋もれて見過ごしてしまいそうな手書きの張り紙。
「地元密着 足かけ50年」
横には地下への階段。
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しかしながら見過ごされるという心配は無用。
ここ「百味」は所沢でも一、二という有名店であり、客は目をつぶっても、酔っ払っていてもたどり着くことができる。
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イマ風に安っちく派手なプロペ通りの地下にこんな空間があるとは… と、情報である程度イメージしていても驚くほど広く、第一印象は… ムカシ風に安っちく地味。
実に懐かしい光景が広がっていた。
昔、六本木の会社に勤めていたころ、路地裏のこういう店でよく昼めし食べたり飲み会したりしてた。上司と2人で昼めしに出て、ビール1杯で興に乗ってそのままだらだら夕方まで大瓶8~9本、会社帰ったら行方不明って大騒ぎになってたんだっけなぁ… ( ̄- ̄;).o0O

若いころはそんなんだったけど、いまは理由なく昼に飲もうという気にはならない。
この店は表の看板でランチサービスのあることは確認していたが、そんなぐだぐだな気配は容易に想像がつくので、踏み込むタイミングを計っていたわけである。
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11時開店。
11時30分前で、すでにお客さんは20人強。
わしらの見通しはぜんぜん甘く、飲んでいない人0名。もとい、座敷席の若い夫婦に連れられた幼児1名のみ、非飲酒客。

一方、僕はそういうので浮くというかKYな感じになるのがニガテ。
なので、とりあえず生ビール中ジョッキを頼んで場の空気に紛れ込んだうえで、ビール運んできたおばちゃんに「ご飯だけでもいいの?」と聞いてみる。
おばちゃんは向こうのほうからランチメニュー(お昼の献立)を持ってきてくれる。
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天ぷら定食を頼んだら、「天ぷら、まだできないの」とおばちゃん。
そういえば表の看板に“寿し準備中”の紙が貼ってあった。あっちのほうで厚焼き玉子を頼んだ客も断られていた。
カウンターの中には職人さんが3人ほどいるが、すし・天ぷらと専門性の高い和食担当はまだ時間外なのかも。

そのように技能別に職人さんを配備して、こちらのお店は“百の味”を提供しているのかもしれない。
ある意味、フードコートに似ている。それを言うならデパート食堂。
百貨店と百味は“百”の用法が同じ。
「もろもろそろえます」

「刺し身ならできるんだけど」というので、そのまま刺身定食1080円にスライド。
もう一品はコロッケ定食650円
コロッケはたまねぎの風味としっかりした味付けで、ソースをかけなくてもビールに合う感じ。アテとしての役割をわきまえている味。

刺し身はマグロ、カンパチ、タコ。こういう場末感の漂う大衆酒場で出てくる刺し身にしては上々。タコなんか硬いけど、かみしめればしっかりタコの風味が広がる。

「ご飯だけの客って珍しいの?」とおばちゃんに聞いてみた。
「そんなことないよ」とおばちゃん。「飲みながらご飯食べる人もいるし、ご飯だけって人もいっぱい」
今日は土曜日だから飲み率が高いのかもしれない。

僕らが食べている間にも続々とお客さんが入ってきて、12時ごろには広い店内もかなり埋まってしまった。
特別なことをしなくとも、これだけの賑わい。
百貨店も学ぶところが多いんじゃないだろうか。

[DATA]
百味 プロぺ店
埼玉県所沢市日吉町4-3
[Today's recommendation]

https://youtu.be/KCkmIyC6v00


◆ 猫写真はこちら その1 その2 ◆