FC2ブログ

糧に込められたおもてなしの心 【天王前 友季亭】

2018.07.14

 武蔵野うどんとは東京都多摩地区~埼玉県南西部、すなわち旧武蔵国の多摩郡~入間郡に伝わるうどん。
ここ武蔵野台地は、かつての多摩川扇状地の上に火山灰が降り積もった高地であるため(関東ローム層)、土壌の透水性が高く、水田耕作に向かない反面、昔から良質な小麦の生産が盛んであった。農家では盆や正月、冠婚葬祭の人寄せなどに畑で収穫した地粉でうどんを打つ習慣があった。


180714 yuritei-12
このあたりではいまも小麦栽培が盛ん(東久留米市南町)


武蔵野うどんという呼称は伝統的なものではなく、武蔵野台地エリアで食されるうどんの総称として比較的最近、そう呼ばれるようになったと思われる。
実際、いまも地域ごとに「村山うどん」「武州うどん」「小平糧うどん」「純手打ちうどん」「糧うどん」などと称されることもある。


180714 yuritei-13
小平ふるさと村 旧神山家住宅主屋


ここで、“糧うどん”の“糧(かて)”とは何か?

――「かてうどん」は、江戸時代から武蔵村山(村山村、中藤村、三ツ木村)および周辺で食べられていた伝統食です。村山うどんに付いている「かて(糧)」とは茹でた季節の地場野菜などをうどんに添えたものです。 ~ “かて”は長ねぎや茗荷、生姜などの薬味とは異なります。村山うどんの会HPより)
――糧うどんは、コシのある冷たい盛りうどんを、温かい醤油味のつけ汁でいただきますが、旬の野菜が添えられているのが特徴。糧うどんの「糧」とは、うどんに添えて食べる旬の野菜のことで、ホウレンソウ、ナス、千切りにした大根などを茹でたものです。「糧」はネギやゴマなどの薬味ではなく、今の言葉でいえば、“トッピング(具)”という感じでしょうか。(こだいら観光まちづくり協会「フラッとNAVI 小平にこないか?」


180714 kate-11180714 kate-12180714 kate-13
180714 kate-15180714 kate-14180714 kate-16
糧いろいろ:左上から、「田舎屋」「関根屋」「宅部うどん」「小島屋」「神明庵 甚五郎」「古奈家」


糧うどんに初めて出会ったのは20年ほど前、所沢市久米のうどん屋「あづまや」で。
武蔵野うどんというものを認識していなかったころのことで、たまたま入ったうどん屋で頼んだつけ汁のうどんには、ゆでた青菜や大根が添えてあった。


180714 yuritei-17
「あづまや」跡


それは自分には意外な具材だったが、相方は「実家のうどんの食べ方と同じ」と言う。
相方の実家は、うどんどころ埼玉県加須に近い。
同じような食文化が広範に広がっていることに興味をひかれ、以降、近くのうどん屋を巡りだしたのだ。


180714 yuritei-15


「あづまや」は10数年前に代替わりし、近所に別名のそば・うどん店を開店。
その情報を目にして、何度か探してみたが一向に見つからず、自分の中ではお店を畳んだものと片づけていたが、つい最近、気まぐれに柳瀬川沿い勢揃橋北側の住宅地に入り込んだ際、不意にそのお店「天王前 友季亭」が出現した。
車道が行き止まりになるそのエリアのいちばん奥まった場所にあった。


180714 yuritei-16-2
180714 yuritei-18 180714 yuritei-19
いまは表通りからわかりやすい案内がある(あとで気づいた)


こんな間近に突然歴史があって実力も伴っていそうなお店が出現したのだから、放っておけるはずがない。
記録的猛暑ではあるが、川べりで涼しそうなイメージもあって、自転車で行ってみた。川べりも何も関係ない暑さだったけど(笑)。


180714 yuritei-28


僕らが自転車で向かう場合、八国山の東を回り込んで松が丘の住宅街を向け、吾妻橋を渡り、そのまま柳瀬川左岸沿いの細道に入り(車両通行不能)、2回曲がると突然お店が出現する。


180714 yuritei-20


これは裏からのアプローチで、あとで表通り側を見てみたら、「あづまや」店舗はまだ残っており、駐車場には「友季亭」看板もあって、あちこちにちゃんとわかりやすい案内が出ていた。
「友季亭」店舗前にも駐車場はあるがそこには住宅街の入り組んだ道を通るので、表通りの駐車場を使ったほうがよさそう。


180714 yuritei-21


店内は、右手に2人テーブル7脚ほど、いろいろ組み合わせて使われている。左が小上がり2間。
ものすごく混んでいて、なんとか空いていた入ってすぐのテーブル席に通される。


180714 yuritei-27


僕らの隣が年配女性2人組。その向こうは大家族2~3組で、同グループかな、かなりやかましい。
注文は、ここはやはり個人的原点である「あずまや」を継承する“かてもりうどん”875円。もう一品は、そばも気になるので“かも汁そば”1080円。


180714 yuritei-22
180714 yuritei-23


まず、かてもりうどん。


180714 yuritei-25


糧が豪華。キャベツ、にんじん、大根、なす、小松菜、山菜の水煮。
おまけのような糧ではなく、かてうどんの名前どおり主役のたたずまいである。


180714 yuritei-24


薬味はねぎ、大根おろし、おろししょうが。ほかにウズラの卵と天かすが付く。
うどんは少し灰色がかったよじれ麺で、武蔵野系では細めで上品な感じ。しっかり締まった食感で、小麦の香りも立つ。


180714 yuritei-26


そばも上品な細麺で、ぱつぱつした食感。甘めで濃厚なかも汁にはこの細麺では弱いかな…。
メニュー表を見直したら田舎そばというものがある。想像するに、挽きぐるみの太麺で…。かも汁はこっちじゃなかったかな?


180714 yuritei-30


一方、普通のそばにも田舎そばにも“かてもり”がある。
お店としても、そこが原点なのかもしれない。


180714 yuritei-31


武蔵野うどんはそもそも人寄せの際に振る舞われたおもてなしの料理。
品数の問題じゃないが、糧へのこだわりはそのまま素朴なもてなしの心の表れのようにも感じられる。


180714 yuritei-14


[DATA]
天王前 友季亭(ゆうきてい)
埼玉県所沢市久米1636-3





[Today's recommendation]

Respighi, Tchaikovsky Alan Gilbert and the New York Philharmonic
『Respighi, Tchaikovsky』
Alan Gilbert and the New York Philharmonic

https://www.youtube.com/watch?v=bKFRXjv2Bjs



chat180714.jpg
◆ 猫写真はこちら


Latest Articles
東京唯一の… 【やさいの食卓 八農菜】 Jul 25, 2021
いまも変わらぬ素朴な味 【内田酒まんじゅう】 Jul 24, 2021
夏の土用です 【うなぎ源八】 Jul 23, 2021
夏の休日 【ますも庵】 Jul 22, 2021
朝ラーふたたび 【十七代目哲麺】 Jul 20, 2021
あつがなついぜ! 【彩雅】 Jul 19, 2021
人と人が出会う… 【つむじ】 Jul 17, 2021
ゲリラ豪雨からの… 【鮮魚とゝや】 Jul 15, 2021
出口は見えるか…!? 【九州ラーメン いし】 Jul 13, 2021
4度目の宣言下で… 【鶏心】 Jul 12, 2021
おいしいそばを存分に 【手繰りや 玄治】 Jul 11, 2021
Vaccinationからの… 【桂花ラーメン 新宿ふぁんてん】 Jul 10, 2021
Ranking
          
          
Category
Category-2