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時をかける絶品カレー 【どっぽ】

2018.06.09

 20世紀半ば以降、隆盛を極めた喫茶店は、1982~83年ころには店舗数約16万を数えた。まさにわれわれの学生時代がピークだったわけで、その後減少に転じ、世紀末にかけてじわじわ衰退していく。1999年の店舗数は約9万4000と、10万店を切っている。(数字は(一社)全日本コーヒー協会 統計資料 等を参照)


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1980年代、喫茶店はどこにでも存在し、僕らは当たり前のように喫茶店を使った。コーヒーだけじゃなく食事にも利用した。
当時の喫茶店メシといえば、ピラフ、スパゲティ、ピザトーストといった、調理にさほど技術を要さない簡易なものが中心。
なかには自家製のカレーを出す店もあって、そういうところはワンランク上というか、知性や思想性のバックグラウンドのようなものをちらつかせていたようにも思われたが、カレー=インド=ヒッピーみたいな連想から、ひと回り上の世代の文化への憧れの念からそう感じるところがあったのかもしれない。


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いまでも古い喫茶店の店先に“カレー”の文字を見かけるとグッとくるものがある。
実際に食べてみると、家庭のカレーのようなありきたりなたべもので拍子抜けしたりする。ヒッピーコミュニティの残り香を感じさせ… というわけには、なかなかいくものじゃない。


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青梅街道を移動中、“喫茶 ランチ”の置き看板を発見した。
「こんなとこにそんなもの、あったか?」と、矢印のとおり脇道に入る。20mほど先に“コーヒー カレー”の電飾スタンド看板。
こういう“カレー”の文字にグッとくるのである。


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行ってみると、民家の裏口のような細い通路になっている。これはいわゆる自宅開放型カフェだな、と判断した。
通路を進んだら、もうお店に入らざるを得ない状況になりそうで、その先の探索を断念。ひと月ほど前の話だ。


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左は青梅街道からのアングル、右は反対側から。スタンド看板の位置に“裏口”がある


本日、東大和市駅付近を散歩中にそのお店のことを思い出した。
行くだけ行ってみようと、ハミングホールの北側の住宅街に入る。青梅街道とは逆側からのアプローチで、あてずっぽうに入ったのだが、しばらく進むと住宅地の真ん中に前に見たのと同じような看板がある。


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矢印に従って左に折れ、少し歩く。
風格のあるレストラン風のお店が出現した。忽然と。


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この前は一本隣の道から店の裏側を見ていたわけだ。
自宅開放型どころか店先に3台分の駐車スペースを備えた立派な独立店舗である。
しかも新しくはなさそう。


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入り口右脇の通路が裏の道路に通じている


なぜこのお店の存在にこれまで気づかなかったのか不思議でしょうがない。
まるで時空を超えていままさに出現したばかりであるかのようだ。


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店内はゆったりと広く、駐車場側の窓際に2人掛けテーブル6脚、右奥に8人掛けテーブル、カウンター5席。先客は年配女性の単独客2人で両端に陣取っているので、必然的に窓際の中ほどに座る。


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お店の人はご夫婦かな、60代くらいの男女。注文をとりに来たおばさまがテーブル2つをくっつけて広くしてくれた。
本日のランチBどっぽのカレーライス ①サラダ付き(×2)を注文。


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BGMはジャズピアノ。
壁は天然木やコルク材、天井の中央部は吹き抜けのように一段高い天窓になっている。
自家製ジャムや焼き菓子が売られていたり、室内楽の案内(なんと、店内で演奏!)があったりと、文化の香り漂う空間。
隠れ家感たっぷりで、懐かしさに浸ってまったりとなる。


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運ばれてきたカレーを見て、「吉祥寺カレーだね」と相方。


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黒っぽい色合いといい、ざらッとしたボディ感といい、「まめ蔵」「くぐつ草」「武蔵野文庫」に代表される吉祥寺カフェカレーにそっくりなのである。


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オリジナル配合のスパイスが香り、ココアのような苦味が少々。タマネギの甘味が強いが、それ以上に特徴的なのがビーフかな? 肉系のコク味が強いこと。味のバランスがよくとてもおいしいカレーだ。


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付け合わせのラッキョウ、ニンジンの甘酢、切り干し大根のハリハリ漬け風も、自家製の優しい味。
デザートの梅ゼリーも、もちろん自家製。


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明るく健全そのものの運営スタイルはヒッピー的要素とは結び付かないが、80年代喫茶店文化のDNAは間違いなく受け継がれていると感じる。

「どれぐらいやられてるんですか?」と支払いのときに聞いてみた。
「38年になります」とご主人。
まさしく、われら80's世代。


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それにしても僕がまったく気づかなかったのはいよいよ腑に落ちない。
やはりこの店には時空魔法がかかっているに違いない。


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[DATA]
どっぽ
東京都東大和市南街1-19-5





[Today's recommendation]


https://youtu.be/hqXpaTu8UrM



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