ある意味、存在しない店 【中華 さがみ】
2018.04.18
若いころ、ストレス解消に買い物をするタイプだった。仕事の合間に自転車でふらふらと、古本屋や雑貨店や園芸店を回っていた。
知らない道を走るのが好きなので、変なところで変な店を見つけたりする。それが楽しい。
昼ごはん込みのことも多いので、やはり変なところでヘンなたべもの屋を見つけた。
“ヘンな”というのは、年季が入っていたり、うっそうとしていたり、業態が意味不明だったり、やたらおしゃれだったり、やたらおしゃれでなかったり…。
でも飲食店は園芸店なんかと違ってフラッと入れるものでもない。ヘンな店となればなおさらのこと。
いまはたべもの屋めぐりが中心みたいになっているが、そういえば昔、あのへんでなんかヘンなたべもの屋見たな… と、モヤモヤすることがある。
そのころはいまよりも行動範囲が広かったのでそうそう行ける場所じゃないことが多いが、たまに行ってみると、朽ち果てていたり、跡形もなかったりすることがほとんど。
都県境や市区境の、“ある意味、存在しない”店たち。最後のはさすがに、もうやってないかな…
そういう場合、わざわざ足を運ばなくとも食べログで確認できますよ、という声が聞こえてきそうだが、はい、私もそれはだいぶ前に気づきました。
食べログは徹底的に網羅してあるので、地図をスクロールするだけで昔走ったとおりにシミュレーションできる。
でもそれはおもしろくない。
そもそも、フラフラと変なところに入り込んでヘンなものを見つける、日々移りゆく自然体感を含めreal world styleそのものを楽しんでいるわけだから、バーチャルやシミュレーションとはなじみがよくない。

それに、食べログももちろん万能ではない。
僕が惹かれるたべもの屋は、世間一般的にはマイナー、不人気なところが多い。だから、仕方ないことではあるが、食べログでもきわめて情報が少ないという場合がほとんど。
あまつさえ、地図上にポイントされていないことすらある。
そういう食べログ上、存在しないことになっている店は、自分の行動範囲には意外に多い。
これは県境にあって、他県から地図に入ると境を越える部分についてポイントされないというシステム上の問題である。

ひばりヶ丘駅の再開発が進んでおり、北口駅前はだいぶ道路らしくなり、新座方面に抜ける開通区間と接続した。

その先の保谷志木線との交差点のすぐ向こうにある中華店「さがみ」。
昔ながらの街の中華屋のたたずまいのこちらも、食べログ(東京)の地図に載っていないお店の一つ。
最寄り駅はひばりヶ丘(東京都西東京市)だが住所は埼玉県新座市だからだ。

ネット情報はなく店頭に品書きもないとなれば、さすがにハードルが高い。
正直言うと、通りかかったら入り口の戸が少し開いていて店内の様子がうかがえたので入る気になったのだ。

1時半すぎで、意外なことに? お客さんがいる。1人だけど。
お店の人、意外なことに若い女性。こちらはサービス係で、ちょっと厨房内は見えづらいが調理係も女性。母娘かな…。
テーブル4つの小さいお店。

品ぞろえは麺類が充実しており、ご飯物の部は中華系からカツ丼、オムライスへと正しい街中華の展開を見せる。
セットメニューも7種類となかなかのラインアップ。
セットの中でちょっと迷ったが、迷ったらいちばん安いものを選ぶ。
①セット800円:ラーメン、ギョウザ(3個)、小ライス。

テレビはテレ東の午後ロード『ザ・インターネット』特選サスペンス! 美女に迫る危機!
こういうロバート・ラドラム『暗殺者』(小説のほう)タイプのストーリー、大好き。
子どものころ息をつめて一気に読んだウィリアム・アイリッシュを思い出すから。
セットは、予想以上でもなく、以下でもなく… かというとそうでもなく。
たとえば予想外に漬物付き、とか。
ギョウザも予想よりちょっと大きく、あんもみっちり詰まっている。肉・野菜のバランスよく焼き具合もばっちりの、たいへんおいしいギョウザだ。
ラーメンも、麺は予想よりちょっと多く、チャーシューは予想よりかなり厚い。
チャーシューもラーメンスープも、しょっぱめ。これは予想どおり、というか期待どおりの懐かし味。

ひばりヶ丘北口駅前まで広い道路が開通しようが、駅でどん詰まり、その先は開かずの踏切という状況に変わりはない。
いずれ高架化が完了すればこのお店周辺も大きく変わることが予想されるが、まだしばらくはこんなのんびり感は続くはず。

[DATA]
中華 さがみ
埼玉県新座市栗原4-8-16
[Today's recommendation]

https://youtu.be/bisVtID3q3I


ウィリアム・アイリッシュ / 野長瀬正夫 訳 『深夜の追跡』(金の星社)
William Irish “Deadline at Dawn” 1944


ねりきり(相方作)


若いころ、ストレス解消に買い物をするタイプだった。仕事の合間に自転車でふらふらと、古本屋や雑貨店や園芸店を回っていた。
知らない道を走るのが好きなので、変なところで変な店を見つけたりする。それが楽しい。
昼ごはん込みのことも多いので、やはり変なところでヘンなたべもの屋を見つけた。
“ヘンな”というのは、年季が入っていたり、うっそうとしていたり、業態が意味不明だったり、やたらおしゃれだったり、やたらおしゃれでなかったり…。
でも飲食店は園芸店なんかと違ってフラッと入れるものでもない。ヘンな店となればなおさらのこと。
いまはたべもの屋めぐりが中心みたいになっているが、そういえば昔、あのへんでなんかヘンなたべもの屋見たな… と、モヤモヤすることがある。
そのころはいまよりも行動範囲が広かったのでそうそう行ける場所じゃないことが多いが、たまに行ってみると、朽ち果てていたり、跡形もなかったりすることがほとんど。
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そういう場合、わざわざ足を運ばなくとも食べログで確認できますよ、という声が聞こえてきそうだが、はい、私もそれはだいぶ前に気づきました。
食べログは徹底的に網羅してあるので、地図をスクロールするだけで昔走ったとおりにシミュレーションできる。
でもそれはおもしろくない。
そもそも、フラフラと変なところに入り込んでヘンなものを見つける、日々移りゆく自然体感を含めreal world styleそのものを楽しんでいるわけだから、バーチャルやシミュレーションとはなじみがよくない。

それに、食べログももちろん万能ではない。
僕が惹かれるたべもの屋は、世間一般的にはマイナー、不人気なところが多い。だから、仕方ないことではあるが、食べログでもきわめて情報が少ないという場合がほとんど。
あまつさえ、地図上にポイントされていないことすらある。
そういう食べログ上、存在しないことになっている店は、自分の行動範囲には意外に多い。
これは県境にあって、他県から地図に入ると境を越える部分についてポイントされないというシステム上の問題である。

ひばりヶ丘駅の再開発が進んでおり、北口駅前はだいぶ道路らしくなり、新座方面に抜ける開通区間と接続した。

その先の保谷志木線との交差点のすぐ向こうにある中華店「さがみ」。
昔ながらの街の中華屋のたたずまいのこちらも、食べログ(東京)の地図に載っていないお店の一つ。
最寄り駅はひばりヶ丘(東京都西東京市)だが住所は埼玉県新座市だからだ。

ネット情報はなく店頭に品書きもないとなれば、さすがにハードルが高い。
正直言うと、通りかかったら入り口の戸が少し開いていて店内の様子がうかがえたので入る気になったのだ。

1時半すぎで、意外なことに? お客さんがいる。1人だけど。
お店の人、意外なことに若い女性。こちらはサービス係で、ちょっと厨房内は見えづらいが調理係も女性。母娘かな…。
テーブル4つの小さいお店。

品ぞろえは麺類が充実しており、ご飯物の部は中華系からカツ丼、オムライスへと正しい街中華の展開を見せる。
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セットメニューも7種類となかなかのラインアップ。
セットの中でちょっと迷ったが、迷ったらいちばん安いものを選ぶ。
①セット800円:ラーメン、ギョウザ(3個)、小ライス。

テレビはテレ東の午後ロード『ザ・インターネット』特選サスペンス! 美女に迫る危機!
こういうロバート・ラドラム『暗殺者』(小説のほう)タイプのストーリー、大好き。
子どものころ息をつめて一気に読んだウィリアム・アイリッシュを思い出すから。
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セットは、予想以上でもなく、以下でもなく… かというとそうでもなく。
たとえば予想外に漬物付き、とか。
ギョウザも予想よりちょっと大きく、あんもみっちり詰まっている。肉・野菜のバランスよく焼き具合もばっちりの、たいへんおいしいギョウザだ。
ラーメンも、麺は予想よりちょっと多く、チャーシューは予想よりかなり厚い。
チャーシューもラーメンスープも、しょっぱめ。これは予想どおり、というか期待どおりの懐かし味。

ひばりヶ丘北口駅前まで広い道路が開通しようが、駅でどん詰まり、その先は開かずの踏切という状況に変わりはない。
いずれ高架化が完了すればこのお店周辺も大きく変わることが予想されるが、まだしばらくはこんなのんびり感は続くはず。

[DATA]
中華 さがみ
埼玉県新座市栗原4-8-16
[Today's recommendation]

https://youtu.be/bisVtID3q3I


ウィリアム・アイリッシュ / 野長瀬正夫 訳 『深夜の追跡』(金の星社)
William Irish “Deadline at Dawn” 1944


ねりきり(相方作)

