追悼のたぬきそば 【あさひ】

2017.04.11

 両親が東日本大震災で被災し(津波で家屋全壊)、住まいが見つかるまで2カ月近くうちに来ていた。狭い家にこもっていてもどこか悪くされそうだから、なるべく散歩してもらうようにした。午前中散歩に出て、そのまま外で昼食をとってくるという生活だったようだ。

あるとき、昼すぎに帰ってきた父親が本棚を見てニヤついてる。「どしたの?」と聞くと、一冊の本を指さしてニヤニヤ。
東海林さだお『タヌキの丸かじり』
「言っちゃダメ」と口止めする母親。父は構わずべらべらしゃべる。

その日、あるそば屋に入ったと。
お品書きを見ていた母が「あらららら…」
注文をとりに来た女性店員に思い切って聞いてみる。
「本当にタヌキ、入ってるんでがすか?」
「はい。入ってますよー」
「あらららら…」

父は面白そうだから黙ってなりゆきを見守ることにしたという。ノリのいい店員も面白がってイジリにかかったという。
「タヌキ、食べてみます?」
「…おいしいのすか?」
「はい。おいしいですよー」
「いやぁ… んでもおなか壊しそうだからやめとくっちゃ」

実話である。6年前のちょうどいまごろの話だ。
当時77歳だったと思うが、そんな年までたぬきそばを知らずに過ごしていたというのもすごい話だが、そういう人である。天然というかマイペース。その母も去年亡くなり、入れ違いにうちに猫が来た。


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断片的な情報をつなぎ合わせると、そのときのそば屋はこの「あさひ」だと思われる。
メニューを見ると、たぬき軸の1頭ながし的なミニ丼セットが充実している。ミニ丼の種類は、牛丼、いか天、カツ丼、親子、かき揚げ、えび天、えびとじ天丼など。
Bのミニいか天丼とたぬきそば900円(+税)を注文。
普段、わざわざたぬきそばを食べようと考えることはほぼないので、なんだか因縁めいたものを感じなくもない。そういえば今日は震災月命日だ。
味は普通だが量がすごい。そばもどんぶりも、少なめのところならフルサイズに近い。900円はきついなと感じたが、この内容なら全然高くない。

店主らしき人とその息子らしき人が厨房にいて、フロアには高齢の女性店員が1人。くだんの店員さんはこの人だろうか。接客は丁寧でとても気持ちがよい。ここで母のまねをする度胸は、もちろんない。


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[DATA]
あさひ
東京都東村山市恩多町4-27-2



                                        

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ニホンヤモリ


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