心温まる特盛り定食 【呑喰処 やぐら】
2017.04.16
サイクリングの流れで洋菓子店「ナイトー」に。ここのブルーベリー生シューは、「福栄堂」のブルーベリー大福、「玉川屋」のブルーベリーあんドーナツに続いて小平ブルーベリーブランドでわが家的認定品となっている。
ここ小平団地北口商店街は北多摩地区において最も魅力的な衰退商店街の一つである。古い飲食店や食料品店がいくつも現存していることに加え、個性派新規店も見逃せない。高度成長期の路地裏商店街に特徴的な迷路感も残す。ナイトーなんか行ったことのない人は地図を見ながらでもたどり着けないのではないか。秘境の最奥という感じだ。
今年最初の夏日となったこの日、陽気のせいで気持ちが高揚し冒険心がくすぐられる。それは昼食のお店選びにも少なからず影響を及ぼす。いくつか見て回ったうち、特別にディープそうな定食屋に入ることになった。

呑喰処「やぐら」。
ぱっと見はランチ営業もやっている飲み屋という雰囲気だが、意外なことにラーメン関係が充実している。20種類ほどのラーメンに、ラーメンセットは松・竹・梅・菊・桜の5種類。
ほかにカレー類、丼物類、定食など。ただし定食はお品書きにあるものではなくサービス定食しかできないとのこと。そうはいってもこのサービス定食だけで10種類もある。全品刺身付きで、1000円のところ800円にサービス。
妻がサービス定食(ヒレカツ)800円、僕はラーメンセット松(ラーメン・半ライス・唐あげ・漬物)800円に。

店内はカウンターのみ8席程度。
われわれの前に2人客が2組入っており、そこそこにぎわいはあるが、みんな年いってる。
向こうのじいさんはジョッキでビール飲んでる。
テレビでは『NHKのど自慢』。古い食堂に入るようになると、40年ぐらい縁のなかったこの番組を視聴する機会が増える。
13番『悲しい酒』に、お店のお母さんが調理場から身を乗り出す。壁に美空ひばりの写真が貼ってあるからよっぽど好きなんだろうな。鐘三つだ。

カウンター越しに提供されたサービス定食を見て顔がひきつった。
しばしぼうぜんとその全容を眺めていた妻が、
「とーちゃんのはラーメンと唐揚げだっけ? ご飯は?」とヒソヒソ。
「付く。半ライス…」と、“半”にすがる自分。

「重いから気をつけてね」と、お母さんがカウンター奥の配膳台にドンとお盆を載せる。
慎重に持ち上げないとひっくり返しそうなくらい重い。ラーメンどんぶりが異様にでかい。
そして半ライスは、茶わんのサイズもご飯の盛りも、妻のサービス定食となんら変わりはない。“半”はどこかに葬り去られていた。

はっきり言って、これは各2人前はある。
構成し直すと、ヒレカツ定食、刺身定食、唐揚げ定食、ラーメンの4食。そのようにばらしても4人誰からも文句は出ないと思う。マグロの刺身は8切れもあるし、ヒレカツも唐揚げも十分1人前はある。ご飯は大盛りレベルだ。

幸いなことに、麺の量はどんぶりサイズ相当とまではいかず“麺普通にちょい増し”くらい。
そして幸いなことに、このラーメンはおいしい。予想していた昔っぽい中華そばタイプではなく、むしろモダンに洗練されている。よけいな甘味・うま味のないすっきりスープ。ネギは小口、チャーシューはほろっと崩れる。
この店にして、どういう経緯でこのラーメンに至っているのか興味深い。

意外なことに、ほかの料理もだいたいそんな感じだ。揚げ物は油そのもの・油切れともよいからもたれず、味付けも上品でくどくない。街の定食屋のイメージであるギトギト・濃厚とはだいぶ様子が違う。刺身でさっぱり感、キムチで刺激を、という構成もいいんじゃないかと思えてくる。
おかげでこの4人分を2人でクリアすることができた(ほぼわしが食べたんだが)。
わしの食べた量は、ラーメン:全部、唐揚げ:かーちゃん1個食す以外全部、ヒレカツ:1.5枚、刺身:3切れ、漬物、ご飯:デフォの1.7倍!

途中、お店のお父さんがカウンターの向こうから「ご飯、足りてる?」と妻に声をかけてきた。そちらからは見えないだろうけど、その時点で妻のご飯はまったく減っていなかったので笑うしかなかった。珍しく若い(?)客が来て、たくさん食べさせたいと張り切ってる感じ。
しばらくして「ご飯、足りなかったら言ってね」と僕も聞かれ、「十分すぎるぐらいに足りてます」と答えてしまった。
「ゆっくり食べてね」とニコニコ。

お勘定で1600円ちょうど支払うと、「ちょっと待ってね」とお父さん。
お母さんが名水緑茶を2缶渡してくれた。
どこまでも優しく温かいのであった。
味もさることながら、その温かさがとてもうれしくて、僕はこの店のまずラーメン部門でのローテーション入りを検討している。

[DATA]
呑喰処 やぐら
東京都小平市学園東町3-1-14
[Today's recommendation]

https://youtu.be/KdgNEWDCE9U

ベーグル&コダイラブランド
2017.04.16 HoLo HoLo(閉店)/東京都小平市学園東町3-2-30-4
ベーグル/全粒粉180円、プレーン160円(税別)
2017.04.16 ナイトー/東京都小平市学園東町3-2-25
ブルーベリー生シュー100円、ぶるべーぱい200円
サイクリングの流れで洋菓子店「ナイトー」に。ここのブルーベリー生シューは、「福栄堂」のブルーベリー大福、「玉川屋」のブルーベリーあんドーナツに続いて小平ブルーベリーブランドでわが家的認定品となっている。
ここ小平団地北口商店街は北多摩地区において最も魅力的な衰退商店街の一つである。古い飲食店や食料品店がいくつも現存していることに加え、個性派新規店も見逃せない。高度成長期の路地裏商店街に特徴的な迷路感も残す。ナイトーなんか行ったことのない人は地図を見ながらでもたどり着けないのではないか。秘境の最奥という感じだ。
今年最初の夏日となったこの日、陽気のせいで気持ちが高揚し冒険心がくすぐられる。それは昼食のお店選びにも少なからず影響を及ぼす。いくつか見て回ったうち、特別にディープそうな定食屋に入ることになった。

呑喰処「やぐら」。
ぱっと見はランチ営業もやっている飲み屋という雰囲気だが、意外なことにラーメン関係が充実している。20種類ほどのラーメンに、ラーメンセットは松・竹・梅・菊・桜の5種類。
ほかにカレー類、丼物類、定食など。ただし定食はお品書きにあるものではなくサービス定食しかできないとのこと。そうはいってもこのサービス定食だけで10種類もある。全品刺身付きで、1000円のところ800円にサービス。
妻がサービス定食(ヒレカツ)800円、僕はラーメンセット松(ラーメン・半ライス・唐あげ・漬物)800円に。

店内はカウンターのみ8席程度。
われわれの前に2人客が2組入っており、そこそこにぎわいはあるが、みんな年いってる。
向こうのじいさんはジョッキでビール飲んでる。
テレビでは『NHKのど自慢』。古い食堂に入るようになると、40年ぐらい縁のなかったこの番組を視聴する機会が増える。
13番『悲しい酒』に、お店のお母さんが調理場から身を乗り出す。壁に美空ひばりの写真が貼ってあるからよっぽど好きなんだろうな。鐘三つだ。

カウンター越しに提供されたサービス定食を見て顔がひきつった。
しばしぼうぜんとその全容を眺めていた妻が、
「とーちゃんのはラーメンと唐揚げだっけ? ご飯は?」とヒソヒソ。
「付く。半ライス…」と、“半”にすがる自分。

「重いから気をつけてね」と、お母さんがカウンター奥の配膳台にドンとお盆を載せる。
慎重に持ち上げないとひっくり返しそうなくらい重い。ラーメンどんぶりが異様にでかい。
そして半ライスは、茶わんのサイズもご飯の盛りも、妻のサービス定食となんら変わりはない。“半”はどこかに葬り去られていた。

はっきり言って、これは各2人前はある。
構成し直すと、ヒレカツ定食、刺身定食、唐揚げ定食、ラーメンの4食。そのようにばらしても4人誰からも文句は出ないと思う。マグロの刺身は8切れもあるし、ヒレカツも唐揚げも十分1人前はある。ご飯は大盛りレベルだ。

幸いなことに、麺の量はどんぶりサイズ相当とまではいかず“麺普通にちょい増し”くらい。
そして幸いなことに、このラーメンはおいしい。予想していた昔っぽい中華そばタイプではなく、むしろモダンに洗練されている。よけいな甘味・うま味のないすっきりスープ。ネギは小口、チャーシューはほろっと崩れる。
この店にして、どういう経緯でこのラーメンに至っているのか興味深い。

意外なことに、ほかの料理もだいたいそんな感じだ。揚げ物は油そのもの・油切れともよいからもたれず、味付けも上品でくどくない。街の定食屋のイメージであるギトギト・濃厚とはだいぶ様子が違う。刺身でさっぱり感、キムチで刺激を、という構成もいいんじゃないかと思えてくる。
おかげでこの4人分を2人でクリアすることができた(ほぼわしが食べたんだが)。
わしの食べた量は、ラーメン:全部、唐揚げ:かーちゃん1個食す以外全部、ヒレカツ:1.5枚、刺身:3切れ、漬物、ご飯:デフォの1.7倍!

途中、お店のお父さんがカウンターの向こうから「ご飯、足りてる?」と妻に声をかけてきた。そちらからは見えないだろうけど、その時点で妻のご飯はまったく減っていなかったので笑うしかなかった。珍しく若い(?)客が来て、たくさん食べさせたいと張り切ってる感じ。
しばらくして「ご飯、足りなかったら言ってね」と僕も聞かれ、「十分すぎるぐらいに足りてます」と答えてしまった。
「ゆっくり食べてね」とニコニコ。

お勘定で1600円ちょうど支払うと、「ちょっと待ってね」とお父さん。
お母さんが名水緑茶を2缶渡してくれた。
どこまでも優しく温かいのであった。
味もさることながら、その温かさがとてもうれしくて、僕はこの店のまずラーメン部門でのローテーション入りを検討している。

[DATA]
呑喰処 やぐら
東京都小平市学園東町3-1-14
[Today's recommendation]

https://youtu.be/KdgNEWDCE9U


2017.04.16 HoLo HoLo(閉店)/東京都小平市学園東町3-2-30-4
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2017.04.16 ナイトー/東京都小平市学園東町3-2-25
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