あふれる肉汁と餃子愛 【餃子一番】
2018.02.13
久々に難易度の高い中華屋さんに潜入。
場所は花小金井と田無の間の青梅街道沿い。このルートをよく通る人でもこの店の存在を認識しているケースはそう多くないんじゃないかと思ってしまうほど、存在感が薄い。
「揚州商人」とか「ダイマル水産」とか、あの並び。

“旧”青梅街道とも称され、沿道はくすんだ町並みが続く。なかでも駅から遠いこのあたりはひときわうらさびれているが、そんな廃墟感に完全に溶け込んじゃってる。
というか、自らそういう景観の形成に中心的役割を担っているとしか思えない中華屋「餃子一番」。
存在感が薄いというより、“やってる感”がない。実際、やっていることが少なかった。
去年、開いているのを見たのが1回のみ。それがたしか年末のことだから、それまでずっと閉まったままの状況を見続けていたわけで、実はもう畳んじゃったのかと思っていたぐらい。

今日、前を通ると暖簾と“営業中”のプレートが出ている。
とはいえ、さすがにフラッと入るにはハードルの高い店構え。通過後、自転車を止め、逡巡。
すると、お店から白衣姿のお父さんが出てきた。出前(の回収?)に出動するもよう。
なんか目が合ってしまった。

「…あの、やってます?」
「ああ、大丈夫ですよ」
と、お父さん、ヘルメットを脱いで店内に戻る。
もう入るしかない。

店内は思ったよりこざっぱり。なんとなく抱いていた薄暗そうというんではなく、普通に明るい。
L字カウンターのみで、いすは11個あるが、5~6人も入れば窮屈になりそうというサイズ感。
しかし、このつくりは昔の街中華の典型。非常に懐かしい。

店名にあるようにこちらは餃子屋という認識でいいと思うので、とりあえず餃子絡みのセットメニューを探す。
ありました。
ラーメンギョーザセット1030円。同・小ライス付き1160円。
高くないか…?
でもこういう事例は一期一会の可能性が高い。
ここで餃子を食べなかったら、たぶん後悔する。
厨房でスタンバってるお父さんに「ラーメンギョーザセット」と申告。

こちらのお父さん、さっき表で(逆光で)見たときはけっこう若そうにも思えたが、よく見るとかなりのお年だ。ただし、動きは軽やか。
もう1人、女性店員がいて、娘さんか? というぐらいの年齢差。

お父さんは餃子につきっきりで、ラーメンは女の人が取りかかっているもよう。
壁にはメインのメニューボードのほかに張り紙多数。やはり餃子押しが強い。
“手延し餃子”とある。
あまり聞かない言い回しだが、実は含蓄のある表現。“手作り餃子”とした場合、市販の皮を使っても自分で包めば手作りには違いない。“皮から手作りした餃子”では長いので“手延し”とした。
一発で内容がわかる簡潔かつ優れたコピーである。
餃子の鉄鍋はだいぶ使い込まれている。
お父さんは工程に沿ってバーナーの火力を小まめに調節している。
全開時を見るとバーナーは強火力タイプ。そして、このコンロも相当使い込まれているが、燃焼は正確でゆらぎがない。バーナーキャップのメンテナンスを怠らない証拠だと思う。
そのへんにも餃子愛の深さが感じられる。

ラーメン→餃子とテンポよく提供。

ラーメンはこれといった特徴はないが、うま味過多にならないすっきりスープが好印象。
こういうセットものにしては具もにぎやか(チャーシュー、メンマ、モヤシ、ワカメ、ノリ、ネギ)。

餃子は羽根つきの素晴らしいルックス。
どこか誇らしげに映る。

噛むと口内に肉汁があふれる。野菜の刻みは粗いが甘味は強い。
手延しの皮はモチッというコシがあり、肉のうま味と野菜の甘味のバランスのよい餡を、しっかり包み込む。

手延し餃子は持ち帰りもできるようだ(6個500円)。
優しそうなお父さんが丹精込めて作る、たいへんおいしい餃子である。

[DATA]
餃子一番
東京都西東京市芝久保町4-18-12
[Today's recommendation]

https://youtu.be/ppYgrdJ0pWk


久々に難易度の高い中華屋さんに潜入。
場所は花小金井と田無の間の青梅街道沿い。このルートをよく通る人でもこの店の存在を認識しているケースはそう多くないんじゃないかと思ってしまうほど、存在感が薄い。
「揚州商人」とか「ダイマル水産」とか、あの並び。

“旧”青梅街道とも称され、沿道はくすんだ町並みが続く。なかでも駅から遠いこのあたりはひときわうらさびれているが、そんな廃墟感に完全に溶け込んじゃってる。
というか、自らそういう景観の形成に中心的役割を担っているとしか思えない中華屋「餃子一番」。
存在感が薄いというより、“やってる感”がない。実際、やっていることが少なかった。
去年、開いているのを見たのが1回のみ。それがたしか年末のことだから、それまでずっと閉まったままの状況を見続けていたわけで、実はもう畳んじゃったのかと思っていたぐらい。

今日、前を通ると暖簾と“営業中”のプレートが出ている。
とはいえ、さすがにフラッと入るにはハードルの高い店構え。通過後、自転車を止め、逡巡。
すると、お店から白衣姿のお父さんが出てきた。出前(の回収?)に出動するもよう。
なんか目が合ってしまった。

「…あの、やってます?」
「ああ、大丈夫ですよ」
と、お父さん、ヘルメットを脱いで店内に戻る。
もう入るしかない。

店内は思ったよりこざっぱり。なんとなく抱いていた薄暗そうというんではなく、普通に明るい。
L字カウンターのみで、いすは11個あるが、5~6人も入れば窮屈になりそうというサイズ感。
しかし、このつくりは昔の街中華の典型。非常に懐かしい。

店名にあるようにこちらは餃子屋という認識でいいと思うので、とりあえず餃子絡みのセットメニューを探す。
ありました。
ラーメンギョーザセット1030円。同・小ライス付き1160円。
高くないか…?
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でもこういう事例は一期一会の可能性が高い。
ここで餃子を食べなかったら、たぶん後悔する。
厨房でスタンバってるお父さんに「ラーメンギョーザセット」と申告。

こちらのお父さん、さっき表で(逆光で)見たときはけっこう若そうにも思えたが、よく見るとかなりのお年だ。ただし、動きは軽やか。
もう1人、女性店員がいて、娘さんか? というぐらいの年齢差。

お父さんは餃子につきっきりで、ラーメンは女の人が取りかかっているもよう。
壁にはメインのメニューボードのほかに張り紙多数。やはり餃子押しが強い。
“手延し餃子”とある。
あまり聞かない言い回しだが、実は含蓄のある表現。“手作り餃子”とした場合、市販の皮を使っても自分で包めば手作りには違いない。“皮から手作りした餃子”では長いので“手延し”とした。
一発で内容がわかる簡潔かつ優れたコピーである。
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餃子の鉄鍋はだいぶ使い込まれている。
お父さんは工程に沿ってバーナーの火力を小まめに調節している。
全開時を見るとバーナーは強火力タイプ。そして、このコンロも相当使い込まれているが、燃焼は正確でゆらぎがない。バーナーキャップのメンテナンスを怠らない証拠だと思う。
そのへんにも餃子愛の深さが感じられる。

ラーメン→餃子とテンポよく提供。

ラーメンはこれといった特徴はないが、うま味過多にならないすっきりスープが好印象。
こういうセットものにしては具もにぎやか(チャーシュー、メンマ、モヤシ、ワカメ、ノリ、ネギ)。

餃子は羽根つきの素晴らしいルックス。
どこか誇らしげに映る。

噛むと口内に肉汁があふれる。野菜の刻みは粗いが甘味は強い。
手延しの皮はモチッというコシがあり、肉のうま味と野菜の甘味のバランスのよい餡を、しっかり包み込む。

手延し餃子は持ち帰りもできるようだ(6個500円)。
優しそうなお父さんが丹精込めて作る、たいへんおいしい餃子である。

[DATA]
餃子一番
東京都西東京市芝久保町4-18-12
[Today's recommendation]

https://youtu.be/ppYgrdJ0pWk

