フライングの話 【餅や蔵王】
2017.12.10
うちは行事をわりとちゃんとやるほうで…。もとい。うちは“行事食”をわりとちゃんと“食する”ほうで、厳密なカタチをなぞるのは苦手なのでゲンミツではないが、ゆるーい感じで毎年お付き合いさせてもらっている。
人日の節句:七草がゆ
節分:いわし
上巳の節句:ちらしずし、はまぐりのお吸い物、白酒、ひし餅、ひなあられ
彼岸:ぼた餅
灌仏会:甘茶
端午の節句:かしわ餅
彼岸:おはぎ
中秋の名月:月見だんご
冬至:かぼちゃ
大晦日:年越しそば
様式にはルーズだが、僕はわりと時間に厳密なほうで、遅刻や仕事の遅れというのをしでかすことはまずない。
クリスマスの飾りは25日中に片づけるし、ひな人形は3月3日午前にしまい込む。

何を思ったか、行事食に手を出した。
それも行事の王様、行事食の横綱といっていい相手にちょっかいを出した。

昼に国立で待ち合わせ。
ポカポカ陽気に僕は早めに出て、古い商店街や新しい住宅街なんかをなんとなく観察しながら現地方面に向かう。
最近めったに通らない戸倉通りを走ってみる気になった。

富士本二丁目交差点の先は坂の上までちょっとした商業地区であった痕跡がある。そこに新しいお店を発見。
「餅や蔵王」。餅屋である。
ランチの看板。
餅屋のランチ。素通りできるはずがない。
看板でお雑煮850円を確認のうえ、待ち合わせ場所に向かったのであった。

新しそうな店内は、テーブル4人用×2と2人用×3、カウンター7席。
ランチセット(お雑煮[お餅3個]とお餅単品から1種類)850円を、お雑煮は醤油と味噌を各1でオーダー。デザートのお餅はくるみとずんだ。
“蔵王”“ずんだ”という言葉に郷愁を誘われたのかもしれない。



「東北のご出身ですか?」と聞いてみようと思いつつ、待っている間ネットで調べてみる。
――村田篤志氏。1980年、神奈川生まれ。知人を介して山形蔵王温泉の【餅屋】で修業、2017年3月に【餅や蔵王】をオープンし、店主となる。
その店主、生真面目。
われわれのすぐ先に入ってまったく同じオーダーの2人組がいた。
お新香に続いて、おわんが2つととのう。
普通、向こうの2人の分と思うがそうではなく、提供は両テーブルに醤油味のお雑煮各1である。最初から作ってるということ。
それから次の調理に取りかかるから、味噌味までにけっこう待たされる。

まず醤油味のお雑煮をいただいて、
「あ… お正月(笑)」

おそらくだしの風味がそう思わせる。干し椎茸の戻し汁たっぷりな感じ。それと昆布。野菜のうま味もよく出ている。
具は、シャキシャキの白菜に、ピーラーで極薄にそいだ人参とごぼう、エノキとブナピー、さつま揚げ、それに飾りのミツバとカマボコ1枚。
餅は滑らかでよく伸びる。お年寄りは要注意レベル。

味噌味はさつま揚げの代わりに豚肉が入り、豚汁風。やさしい豚汁。
デザートも両テーブルにまずくるみ、という配膳。
くるみのあんはきめ細かい中にもざらっとしたつぶつぶ感が残る。えぐみが少なくやさしい味わい。魚沼産のオニグルミだそうだ。
ずんだも裏ごしの滑らかなペーストに粗く砕いた豆を混ぜ込んだ感じ。黒っぽい薄皮が混ざっているので黒大豆、もしかしたらだだちゃ豆かもしれない。味は濃厚で香りが強い。

お雑煮はフライングの疑いありだが、デザートまでのトータルコンセプトは十分納得させられるものがある。
ホッ… という幸福感が得られる。
くるみ餅の素朴な味わいは、晩秋の落ち葉の積もった雑木林を思い出させるのだ。

[DATA]
餅や蔵王
東京都国分寺市富士本2-23-12
[Today's recommendation]

https://youtu.be/Yh_HafxTg-0


◆ 猫写真はこちら ◆
12月恒例!
2017.12.10ポールスタア(第8回いちょうまつり)/東京都東村山市久米川町3-28-2
東村山黒焼そば300円×2
うちは行事をわりとちゃんとやるほうで…。もとい。うちは“行事食”をわりとちゃんと“食する”ほうで、厳密なカタチをなぞるのは苦手なのでゲンミツではないが、ゆるーい感じで毎年お付き合いさせてもらっている。
人日の節句:七草がゆ
節分:いわし
上巳の節句:ちらしずし、はまぐりのお吸い物、白酒、ひし餅、ひなあられ
彼岸:ぼた餅
灌仏会:甘茶
端午の節句:かしわ餅
彼岸:おはぎ
中秋の名月:月見だんご
冬至:かぼちゃ
大晦日:年越しそば
様式にはルーズだが、僕はわりと時間に厳密なほうで、遅刻や仕事の遅れというのをしでかすことはまずない。
クリスマスの飾りは25日中に片づけるし、ひな人形は3月3日午前にしまい込む。

何を思ったか、行事食に手を出した。
それも行事の王様、行事食の横綱といっていい相手にちょっかいを出した。

昼に国立で待ち合わせ。
ポカポカ陽気に僕は早めに出て、古い商店街や新しい住宅街なんかをなんとなく観察しながら現地方面に向かう。
最近めったに通らない戸倉通りを走ってみる気になった。

富士本二丁目交差点の先は坂の上までちょっとした商業地区であった痕跡がある。そこに新しいお店を発見。
「餅や蔵王」。餅屋である。
ランチの看板。
餅屋のランチ。素通りできるはずがない。
看板でお雑煮850円を確認のうえ、待ち合わせ場所に向かったのであった。

新しそうな店内は、テーブル4人用×2と2人用×3、カウンター7席。
ランチセット(お雑煮[お餅3個]とお餅単品から1種類)850円を、お雑煮は醤油と味噌を各1でオーダー。デザートのお餅はくるみとずんだ。
“蔵王”“ずんだ”という言葉に郷愁を誘われたのかもしれない。



「東北のご出身ですか?」と聞いてみようと思いつつ、待っている間ネットで調べてみる。
――村田篤志氏。1980年、神奈川生まれ。知人を介して山形蔵王温泉の【餅屋】で修業、2017年3月に【餅や蔵王】をオープンし、店主となる。
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その店主、生真面目。
われわれのすぐ先に入ってまったく同じオーダーの2人組がいた。
お新香に続いて、おわんが2つととのう。
普通、向こうの2人の分と思うがそうではなく、提供は両テーブルに醤油味のお雑煮各1である。最初から作ってるということ。
それから次の調理に取りかかるから、味噌味までにけっこう待たされる。

まず醤油味のお雑煮をいただいて、
「あ… お正月(笑)」

おそらくだしの風味がそう思わせる。干し椎茸の戻し汁たっぷりな感じ。それと昆布。野菜のうま味もよく出ている。
具は、シャキシャキの白菜に、ピーラーで極薄にそいだ人参とごぼう、エノキとブナピー、さつま揚げ、それに飾りのミツバとカマボコ1枚。
餅は滑らかでよく伸びる。お年寄りは要注意レベル。

味噌味はさつま揚げの代わりに豚肉が入り、豚汁風。やさしい豚汁。
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デザートも両テーブルにまずくるみ、という配膳。
くるみのあんはきめ細かい中にもざらっとしたつぶつぶ感が残る。えぐみが少なくやさしい味わい。魚沼産のオニグルミだそうだ。
ずんだも裏ごしの滑らかなペーストに粗く砕いた豆を混ぜ込んだ感じ。黒っぽい薄皮が混ざっているので黒大豆、もしかしたらだだちゃ豆かもしれない。味は濃厚で香りが強い。

お雑煮はフライングの疑いありだが、デザートまでのトータルコンセプトは十分納得させられるものがある。
ホッ… という幸福感が得られる。
くるみ餅の素朴な味わいは、晩秋の落ち葉の積もった雑木林を思い出させるのだ。

[DATA]
餅や蔵王
東京都国分寺市富士本2-23-12
[Today's recommendation]

https://youtu.be/Yh_HafxTg-0


◆ 猫写真はこちら ◆

2017.12.10ポールスタア(第8回いちょうまつり)/東京都東村山市久米川町3-28-2
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