学生街の喫茶店に通う、昔の学生 【タンパ】
2017.11.27
大学のころ喫茶店でアルバイトをしていた。
その店は、青学を出た姉とその隣の高校に通う妹の看板美人姉妹、ちょっと怖そうなその母親で切り盛りしていた。父親はもっぱら近所でやっていた違う店のほうにいた。
料理がおいしく、ハンバーグやしょうが焼きの定食やスパゲティは人気があった。ミートソース(ボロネーズと称した)とバジリコ(シソのやつ)が僕は好きで、よく食べさせてもらった。毎日ではないが、ピザもちゃんと強力粉をこねてオーブンで焼いていた。
中央線沿線のその店はとっくになくなっている。

武蔵野大学前の複雑な交差点の角に位置する「タンパ」は、昔ながらの学生街の喫茶店の面影を残す。

「いつごろからやられてるんですか?」と聞いてみた。
「母が始めたのが昭和44年」と、女性オーナー。「その間、母が亡くなったりして、閉めていた時期もあるんですけどね」

母娘で喫茶店という構図で、昔のことを思い出したのである。
僕がバイトしていた喫茶店の姉妹の妹は、そのころここ武蔵野女子大に進んでいる。

「やっぱり学生さんが多いんですか?」
「そうでもないです。決まった子は来ますけど。いまは喫茶店に入るという文化がないから。スタバなんかには行くんでしょうけどね。おばさん世代のほうが躊躇なくスッと入ってきますよ」

学生街の喫茶店というのは学生のたまり場になっているイメージがあってきわめて入りづらい。
この店も昔から気になってはいたが、1人では絶対無理っぽかった。

前を通りかかると、窓際で営業マンらしい風体の男性が食事をしている。非学生の客が1人。それで入ってみる気になったのだ。
学生は喫茶店を使わない、というこちらの女性の言葉は、お店にしたら複雑だろうが僕にはありがたい情報だ。

「喫茶店はよく入られるんですか?」
「いっとき全然入らなくなりましたけど、このトシになると昔を懐かしんで。こういういい感じのお店を見ると、たまらないですね」
「これでも建て直してますから、昔のお客さんには全然変わったって思われるんじゃないかしら」
外観・内装ともとても趣がある。たしかに外の年季の入った様子からすれば、店内はきれいで古びていない。
カウンターと、壁に作り付けのテーブル2つ、合わせて10席ほどの小さなお店である。
足元で小型犬がクルクル回ってる。
ポークカレーは甘めの家庭的な味わい。仕上げの生クリームが、おうちカレーよりちょっとオシャレ。
具はけっこうゴロゴロ。

ちなみにカレーは、ポークカレーライス500円とビーフカレーシチュー550円の2種類。
価格もいにしえの設定だ。

こちらのおねえさん、気さくながら丁寧な接客で、昔の喫茶店のママさんみたいだ。
本当に昭和の喫茶店に戻ったような感覚になれる。
ほかにも仕事のこと、自転車のこと、アート(彫金)のこと… いろいろな話をした。
支払いのとき、雪だるまのチョコボールをくれた。
帰り道でふと気づいたのだが、昭和44年といったらもうすぐ開店50年。
それまでに何回か足を運びそうな予感がする。

[DATA]
タンパ
東京都武蔵野市八幡町3-8-7
[Today's recommendation]

https://youtu.be/cduFYxIAA6E


◆ 猫写真はこちら ◆
大学のころ喫茶店でアルバイトをしていた。
その店は、青学を出た姉とその隣の高校に通う妹の看板美人姉妹、ちょっと怖そうなその母親で切り盛りしていた。父親はもっぱら近所でやっていた違う店のほうにいた。
料理がおいしく、ハンバーグやしょうが焼きの定食やスパゲティは人気があった。ミートソース(ボロネーズと称した)とバジリコ(シソのやつ)が僕は好きで、よく食べさせてもらった。毎日ではないが、ピザもちゃんと強力粉をこねてオーブンで焼いていた。
中央線沿線のその店はとっくになくなっている。

武蔵野大学前の複雑な交差点の角に位置する「タンパ」は、昔ながらの学生街の喫茶店の面影を残す。

「いつごろからやられてるんですか?」と聞いてみた。
「母が始めたのが昭和44年」と、女性オーナー。「その間、母が亡くなったりして、閉めていた時期もあるんですけどね」

母娘で喫茶店という構図で、昔のことを思い出したのである。
僕がバイトしていた喫茶店の姉妹の妹は、そのころここ武蔵野女子大に進んでいる。

「やっぱり学生さんが多いんですか?」
「そうでもないです。決まった子は来ますけど。いまは喫茶店に入るという文化がないから。スタバなんかには行くんでしょうけどね。おばさん世代のほうが躊躇なくスッと入ってきますよ」

学生街の喫茶店というのは学生のたまり場になっているイメージがあってきわめて入りづらい。
この店も昔から気になってはいたが、1人では絶対無理っぽかった。

前を通りかかると、窓際で営業マンらしい風体の男性が食事をしている。非学生の客が1人。それで入ってみる気になったのだ。
学生は喫茶店を使わない、というこちらの女性の言葉は、お店にしたら複雑だろうが僕にはありがたい情報だ。

「喫茶店はよく入られるんですか?」
「いっとき全然入らなくなりましたけど、このトシになると昔を懐かしんで。こういういい感じのお店を見ると、たまらないですね」
「これでも建て直してますから、昔のお客さんには全然変わったって思われるんじゃないかしら」
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外観・内装ともとても趣がある。たしかに外の年季の入った様子からすれば、店内はきれいで古びていない。
カウンターと、壁に作り付けのテーブル2つ、合わせて10席ほどの小さなお店である。
足元で小型犬がクルクル回ってる。
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ポークカレーは甘めの家庭的な味わい。仕上げの生クリームが、おうちカレーよりちょっとオシャレ。
具はけっこうゴロゴロ。

ちなみにカレーは、ポークカレーライス500円とビーフカレーシチュー550円の2種類。
価格もいにしえの設定だ。

こちらのおねえさん、気さくながら丁寧な接客で、昔の喫茶店のママさんみたいだ。
本当に昭和の喫茶店に戻ったような感覚になれる。
ほかにも仕事のこと、自転車のこと、アート(彫金)のこと… いろいろな話をした。
支払いのとき、雪だるまのチョコボールをくれた。
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帰り道でふと気づいたのだが、昭和44年といったらもうすぐ開店50年。
それまでに何回か足を運びそうな予感がする。

[DATA]
タンパ
東京都武蔵野市八幡町3-8-7
[Today's recommendation]

https://youtu.be/cduFYxIAA6E


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