たぬきでよかったのか? のレトロ立ち食いそば 【戸隠そば(小川)】
2017.10.06
もう30年近く前の話だが、僕は神田の会社に勤めていて、「小諸そば」という立ち食いそば屋に入って驚いた。麺が街のそば屋と遜色ないレベルなのである。その後、小諸そばは千代田区、中央区あたりで何店舗も利用しているが、麺ゆでのタイミングにぶつかって5分くらい待たされることも一度ならずあった。それ以前に働いていた新宿の駅構内の立ち食いなんか、そばだかうどんだかわからないようなブヨブヨの麺を平気で出していたので、それに比べてさすがに都心(当時)は違うな、と感心したものだ。

そのころに比べていまは立ち食いそばのレベルも全体に上がっているだろう。でも大手チェーンの寡占化が進んで面白味がなくなったようにも思う。
2年くらい前に久々に小諸そばに入っていか天せいろを頼んだら、そばつゆのほかに天つゆも付いてきて、なんだかしらじらしい気持ちにさせられた。そういうちょっと上品っぽいことをしようとすると、しょせんは立ち食いというところが逆に際立ってしまう。
立ち食いそばはやはりB級でチープで下品であればこそ、なんだと思う。

今日の昼ごはんは久しぶりの立ち食いそば屋。
小諸ならぬ、長野県はその反対側に位置する戸隠。そばどころの“格”で言ったらこっちが上だ。

西武線小川駅西口の駅階段を下りたところの道の正面突き当たり。この「戸隠そば」は立地的によく目立つはずなんだが、僕は最近までその存在に気づいてすらいなかった。
この並びは間口の狭い古い店がひしめき合っているが、飲み屋が多いから昼はほとんど営業しておらず、そのひっそりした風景にこの店もすっかり溶け込んじゃっている。

店に一歩踏み込んだ瞬間、
「何にします? すぐできますよ」
と、カウンターの中の店主っぽい年のいったおやじさん。
そりゃ、すぐできるとは思うけど、お品書きぐらい見させていただかないと…。
「えーと… たぬきそば」
「350円!」
と、間・髪を入れない。
どういうわけか、ものすごくせわしない。

財布から小銭を取り出していると、カウンターの向こう端のおばちゃんが、「水はここ」と自分の横の給水器を指し示す。お客さんだと思っていたけど店主の奥さんとか…? とか考えていたら、「じゃあね」と出ていっちゃったから、やっぱりお客さんだったみたい。
僕の数少ない特殊能力である“おばちゃんに世話焼かれるアビリティー”がこういうところで生きてくる。
配膳台に400円を置いて水をくみに行って戻ったら、もうたぬきそばとお釣りの50円玉が載っている。

僕のあとにサラリーマン風の男性客。
「えーと… てんぷらそば」
「350円!」
そうか、てんぷらそばとたぬきそばは同じ値段なんだ… と、なんだか損した気持ちにさせられる。ほかにも月見、わかめ、カレーのそば・うどんが同額。やっぱり損した気分。

その次に入ってきた年配の常連客はカレーライスとそばのセット。
このカレー、横目で見ると実においしそうである。個人的には高校の学食のカレーを思い出させるような、具がごろごろのとろみが粉っぽそうな黄色いカレー。セントラルキッチンではこういう具合にはいかないだろうな。

なんかこういうのもいいな、とほっこり気分で店を出たが、困ったことにまったく腹が満たされていない。街のそば屋とたいして量は違わないと思うんだが…?
ここでは常連さんのようにセットメニューをいただくのが正解のようだ。

[DATA]
戸隠そば(小川)
東京都小平市小川西町4₋17₋28
[Today's recommendation]

https://youtu.be/nFQ1XVxvIWg


もう30年近く前の話だが、僕は神田の会社に勤めていて、「小諸そば」という立ち食いそば屋に入って驚いた。麺が街のそば屋と遜色ないレベルなのである。その後、小諸そばは千代田区、中央区あたりで何店舗も利用しているが、麺ゆでのタイミングにぶつかって5分くらい待たされることも一度ならずあった。それ以前に働いていた新宿の駅構内の立ち食いなんか、そばだかうどんだかわからないようなブヨブヨの麺を平気で出していたので、それに比べてさすがに都心(当時)は違うな、と感心したものだ。

そのころに比べていまは立ち食いそばのレベルも全体に上がっているだろう。でも大手チェーンの寡占化が進んで面白味がなくなったようにも思う。
2年くらい前に久々に小諸そばに入っていか天せいろを頼んだら、そばつゆのほかに天つゆも付いてきて、なんだかしらじらしい気持ちにさせられた。そういうちょっと上品っぽいことをしようとすると、しょせんは立ち食いというところが逆に際立ってしまう。
立ち食いそばはやはりB級でチープで下品であればこそ、なんだと思う。

今日の昼ごはんは久しぶりの立ち食いそば屋。
小諸ならぬ、長野県はその反対側に位置する戸隠。そばどころの“格”で言ったらこっちが上だ。

西武線小川駅西口の駅階段を下りたところの道の正面突き当たり。この「戸隠そば」は立地的によく目立つはずなんだが、僕は最近までその存在に気づいてすらいなかった。
この並びは間口の狭い古い店がひしめき合っているが、飲み屋が多いから昼はほとんど営業しておらず、そのひっそりした風景にこの店もすっかり溶け込んじゃっている。

店に一歩踏み込んだ瞬間、
「何にします? すぐできますよ」
と、カウンターの中の店主っぽい年のいったおやじさん。
そりゃ、すぐできるとは思うけど、お品書きぐらい見させていただかないと…。
「えーと… たぬきそば」
「350円!」
と、間・髪を入れない。
どういうわけか、ものすごくせわしない。

財布から小銭を取り出していると、カウンターの向こう端のおばちゃんが、「水はここ」と自分の横の給水器を指し示す。お客さんだと思っていたけど店主の奥さんとか…? とか考えていたら、「じゃあね」と出ていっちゃったから、やっぱりお客さんだったみたい。
僕の数少ない特殊能力である“おばちゃんに世話焼かれるアビリティー”がこういうところで生きてくる。
配膳台に400円を置いて水をくみに行って戻ったら、もうたぬきそばとお釣りの50円玉が載っている。

僕のあとにサラリーマン風の男性客。
「えーと… てんぷらそば」
「350円!」
そうか、てんぷらそばとたぬきそばは同じ値段なんだ… と、なんだか損した気持ちにさせられる。ほかにも月見、わかめ、カレーのそば・うどんが同額。やっぱり損した気分。

その次に入ってきた年配の常連客はカレーライスとそばのセット。
このカレー、横目で見ると実においしそうである。個人的には高校の学食のカレーを思い出させるような、具がごろごろのとろみが粉っぽそうな黄色いカレー。セントラルキッチンではこういう具合にはいかないだろうな。

なんかこういうのもいいな、とほっこり気分で店を出たが、困ったことにまったく腹が満たされていない。街のそば屋とたいして量は違わないと思うんだが…?
ここでは常連さんのようにセットメニューをいただくのが正解のようだ。

[DATA]
戸隠そば(小川)
東京都小平市小川西町4₋17₋28
[Today's recommendation]

https://youtu.be/nFQ1XVxvIWg

