最強のたべもの… かも 【松華】
2017.12.22
小平・津田町の四小通りを自転車で走っていると、背後から「止まってくださーい」という音声。一瞬自分のことかと思ったが、すぐに横を乗用車が抜かしていって後ろからパトカーがついていく。
「左に寄って停車してくださーい」と。
すると、右手の中華屋の入り口が開き、お店のおかあさんが半身で上体を乗り出し眺めだした。厨房の勝手口からおとうさんも身を乗り出した。
自転車を下りて押して通りすぎようとすると、
「いや、車止められてるから、どうしたのかなと思って…」
と、おかあさんは照れ笑いを浮かべ、なぜか僕に言い訳をする。

僕はおばちゃんにいきなり話しかけられるという特殊能力を持つ。
信号待ちの交差点とか、持ち帰りずしのショーケースの前とか、スーパーの袋麺コーナーとか…。
「これおいしいからいつも買ってるの」
と、マルちゃん天ぷらそば5食パックを手にとるのである。
なぜオレに断わるかな…。
声をかけられた以上はしょうがない。
13時8分、中華料理「松華」に入店。

と、ここまでの記述に偽りはない。それに、つい5分前までこのお店に入ろうという気持ちはこれっぽっちもなかったことを付け加えておく。
しかしこれには伏線がある。それで無意識のうちにこのルートを通ったのかもしれない。
昨夜、うちの食卓でここのメニューが話題に上った。なぜこの超マイナー店が?

「あした社食でカツカレーうどん食べるんだ」とムスメ1号。
「ん…? うどんにトンカツのせてカレーぶっかけるとか?」と僕。
「そう」
「それって最強うどんじゃん」

それで思い出したのが、多摩地区の飲食店情報などで活躍しておられる某有名ブロガーの方の記事を以前拝見して、ずっと気になっていた、強力異種格闘タッグメニュー。
「じゃあさ、あんかけカツ丼ってのがあるんだよ」
「え? なにそれ」とカツ丼好きのムスメ1号。
「ご飯にトンカツのせて中華系の餡ぶっかけるの」
「それって最強じゃん」

記事を見たとき、一瞬、そのたべものは合法か? と思ったぐらい。
だって考えるだに強すぎる。
白鵬がパワードスーツを装着して取り組んでるようなものじゃないか。

店内は、無理をすれば4人座れるというテーブル席が5つ。壁には定食やセットメニューが書かれた紙が、青・黄交互にきれいに張られている。
あんかけカツ丼は少し離れたところに単独での取り扱いで、紙の色はピンク。グランドメニューにも載っていない。
エライのかツマハジキなのか、よくわからない。

メニュー表に、
(その他お好みに調理いたします。)
と書いてある。
昔「こういうものを作ってくれ」と要求する客がいて… という、あんかけカツ丼誕生秘話があるかもしれない。

あんかけカツ丼は、みそ汁・お新香付きで720円。
ぱっと見、カツは保護色のあんに埋没しているから、具が少なめの中華丼の様相。でもボリューム感はあるので、720円の中華丼といわれても何の違和感もない。
それでいてフルサイズのトンカツがタケノコやニンジンの陰に身を潜めているのである。
実体としてもコスパ的にも、恐るべきたべものと言わざるを得ない。

まずみそ汁をひと口。甘い…。
中華系のだしで仕立てたのでは? と思うような甘めのみそ汁である。
次にあんとご飯をひと口。酸っぱい…。
僕は中華のあんかけ料理には必ずといっていいほど酢をかける。味が引き締まるからだ。しかしそれは後半、味に変化がほしいところで行うのであって、まずは甘辛い味から食べ始めたい。

と最初思ったが、カツと一緒に食べてみると、この味付けはちょうどいいような気がする。揚げ物をさっぱり食べてもらいたいという配慮ではないかと思えてくる。
中華丼としてなら酸っぱいが、カツを食べるにはちょうどいい、と。
カツ丼を数口食べてみそ汁を飲むと、さっき甘く感じたのが、酸味に慣れた舌にはいいリセットとなる。
いろいろ、よく考えられた組み立てなんじゃないだろうか。

カツの衣はカリカリで、あんに浸っていてもフニャフニャにならない。
あんの具は、青菜、にんじん、タケノコ、ブナピー。実際には具はそれほど少ないわけではなく、特にタケノコたっぷりがうれしい。
というか、全体にボリュームがすごい。
ドカ盛り系の迫力ビジュアルにして性格はサッパリ系。重戦車型に見えて実は技巧派。
予想以上に隙なく攻守のバランスのとれた“最強のたべもの”である。

[DATA]
松華
東京都小平市学園西町1-37-14
[Today's recommendation]

https://www.youtube.com/watch?v=90uJ136tpQU


◆ 猫写真はこちら ◆
小平・津田町の四小通りを自転車で走っていると、背後から「止まってくださーい」という音声。一瞬自分のことかと思ったが、すぐに横を乗用車が抜かしていって後ろからパトカーがついていく。
「左に寄って停車してくださーい」と。
すると、右手の中華屋の入り口が開き、お店のおかあさんが半身で上体を乗り出し眺めだした。厨房の勝手口からおとうさんも身を乗り出した。
自転車を下りて押して通りすぎようとすると、
「いや、車止められてるから、どうしたのかなと思って…」
と、おかあさんは照れ笑いを浮かべ、なぜか僕に言い訳をする。

僕はおばちゃんにいきなり話しかけられるという特殊能力を持つ。
信号待ちの交差点とか、持ち帰りずしのショーケースの前とか、スーパーの袋麺コーナーとか…。
「これおいしいからいつも買ってるの」
と、マルちゃん天ぷらそば5食パックを手にとるのである。
なぜオレに断わるかな…。
声をかけられた以上はしょうがない。
13時8分、中華料理「松華」に入店。

と、ここまでの記述に偽りはない。それに、つい5分前までこのお店に入ろうという気持ちはこれっぽっちもなかったことを付け加えておく。
しかしこれには伏線がある。それで無意識のうちにこのルートを通ったのかもしれない。
昨夜、うちの食卓でここのメニューが話題に上った。なぜこの超マイナー店が?

「あした社食でカツカレーうどん食べるんだ」とムスメ1号。
「ん…? うどんにトンカツのせてカレーぶっかけるとか?」と僕。
「そう」
「それって最強うどんじゃん」

それで思い出したのが、多摩地区の飲食店情報などで活躍しておられる某有名ブロガーの方の記事を以前拝見して、ずっと気になっていた、強力異種格闘タッグメニュー。
「じゃあさ、あんかけカツ丼ってのがあるんだよ」
「え? なにそれ」とカツ丼好きのムスメ1号。
「ご飯にトンカツのせて中華系の餡ぶっかけるの」
「それって最強じゃん」

記事を見たとき、一瞬、そのたべものは合法か? と思ったぐらい。
だって考えるだに強すぎる。
白鵬がパワードスーツを装着して取り組んでるようなものじゃないか。

店内は、無理をすれば4人座れるというテーブル席が5つ。壁には定食やセットメニューが書かれた紙が、青・黄交互にきれいに張られている。
あんかけカツ丼は少し離れたところに単独での取り扱いで、紙の色はピンク。グランドメニューにも載っていない。
エライのかツマハジキなのか、よくわからない。

メニュー表に、
(その他お好みに調理いたします。)
と書いてある。
昔「こういうものを作ってくれ」と要求する客がいて… という、あんかけカツ丼誕生秘話があるかもしれない。

あんかけカツ丼は、みそ汁・お新香付きで720円。
ぱっと見、カツは保護色のあんに埋没しているから、具が少なめの中華丼の様相。でもボリューム感はあるので、720円の中華丼といわれても何の違和感もない。
それでいてフルサイズのトンカツがタケノコやニンジンの陰に身を潜めているのである。
実体としてもコスパ的にも、恐るべきたべものと言わざるを得ない。

まずみそ汁をひと口。甘い…。
中華系のだしで仕立てたのでは? と思うような甘めのみそ汁である。
次にあんとご飯をひと口。酸っぱい…。
僕は中華のあんかけ料理には必ずといっていいほど酢をかける。味が引き締まるからだ。しかしそれは後半、味に変化がほしいところで行うのであって、まずは甘辛い味から食べ始めたい。

と最初思ったが、カツと一緒に食べてみると、この味付けはちょうどいいような気がする。揚げ物をさっぱり食べてもらいたいという配慮ではないかと思えてくる。
中華丼としてなら酸っぱいが、カツを食べるにはちょうどいい、と。
カツ丼を数口食べてみそ汁を飲むと、さっき甘く感じたのが、酸味に慣れた舌にはいいリセットとなる。
いろいろ、よく考えられた組み立てなんじゃないだろうか。

カツの衣はカリカリで、あんに浸っていてもフニャフニャにならない。
あんの具は、青菜、にんじん、タケノコ、ブナピー。実際には具はそれほど少ないわけではなく、特にタケノコたっぷりがうれしい。
というか、全体にボリュームがすごい。
ドカ盛り系の迫力ビジュアルにして性格はサッパリ系。重戦車型に見えて実は技巧派。
予想以上に隙なく攻守のバランスのとれた“最強のたべもの”である。

[DATA]
松華
東京都小平市学園西町1-37-14
[Today's recommendation]

https://www.youtube.com/watch?v=90uJ136tpQU


◆ 猫写真はこちら ◆
団地の午後の長閑 【松華】
2017.03.13
このエリアでは洋食の「きっちんコバヤシ」とともに頑張ってる中華屋さん「松華」。
都営津田町三丁目アパートという比較的大きい住宅団地に隣接しているからか、前を通るときのぞくといつもちゃんと客が入っている。
厨房はかなり広く、ご主人がきびきびと動き回っており、おかあさんも出たり入ったり忙しそうだ。

こういうお店が生き残るためにたどった必然的変遷というか、きっぱり定食屋化している。
メニュー表には「ご要望に合わせて調理いたします」と書いてあり、そのとおりわがままなご要望に応じているうちにどんどん品数が増えていったものと思われる。
ほぼ地元の人しか来ないとみられるのだが、なぜか壁には芸能人らしきサイン色紙が6~7枚貼ってあった。

前の客の会計で手間どっている。店のおかあさんが何度も声に出してお釣りを数え上げている。そしてようやく計算が終了したのだが、630円という価格に対して700いくらのお釣りって、何がどうなったらそうなる?
「こういうの本当に弱いの。間違ってたら言ってね」って、強いとか弱い以前に何か大きな問題があると思うぞ。客も苦笑いしてるから、おそらくこっちが何かとんでもない勘違いをしたのだろう。

そんなゆるーい空気感のなか、運ばれてきたワンタン麺は、いろんな意味でほんわかした仕上がりだった。
チャーシューが分厚い。
ナルトも厚切りで、普段ナルトをのせてほしいともことさら思わない反面、声高に否定するものでもないが、これだけ厚いとしっかり味がするからやっぱりラーメンにナルトは合わないな…(苦笑) と思いました。
スープがおいしいからよけいそう感じたのかもしれない。

お会計まで、このおかあさんの接客は一貫して明るく優しい。
600円払い、ちゃんと10円お釣りが来た。計算が簡単な注文をしてよかった(笑)。

[DATA]
松華
東京都小平市学園西町1-37-14
[Today's recommendation]

https://www.youtube.com/watch?v=XPZNBybp-do
このエリアでは洋食の「きっちんコバヤシ」とともに頑張ってる中華屋さん「松華」。
都営津田町三丁目アパートという比較的大きい住宅団地に隣接しているからか、前を通るときのぞくといつもちゃんと客が入っている。
厨房はかなり広く、ご主人がきびきびと動き回っており、おかあさんも出たり入ったり忙しそうだ。

こういうお店が生き残るためにたどった必然的変遷というか、きっぱり定食屋化している。
メニュー表には「ご要望に合わせて調理いたします」と書いてあり、そのとおりわがままなご要望に応じているうちにどんどん品数が増えていったものと思われる。
ほぼ地元の人しか来ないとみられるのだが、なぜか壁には芸能人らしきサイン色紙が6~7枚貼ってあった。

前の客の会計で手間どっている。店のおかあさんが何度も声に出してお釣りを数え上げている。そしてようやく計算が終了したのだが、630円という価格に対して700いくらのお釣りって、何がどうなったらそうなる?
「こういうの本当に弱いの。間違ってたら言ってね」って、強いとか弱い以前に何か大きな問題があると思うぞ。客も苦笑いしてるから、おそらくこっちが何かとんでもない勘違いをしたのだろう。

そんなゆるーい空気感のなか、運ばれてきたワンタン麺は、いろんな意味でほんわかした仕上がりだった。
チャーシューが分厚い。
ナルトも厚切りで、普段ナルトをのせてほしいともことさら思わない反面、声高に否定するものでもないが、これだけ厚いとしっかり味がするからやっぱりラーメンにナルトは合わないな…(苦笑) と思いました。
スープがおいしいからよけいそう感じたのかもしれない。

お会計まで、このおかあさんの接客は一貫して明るく優しい。
600円払い、ちゃんと10円お釣りが来た。計算が簡単な注文をしてよかった(笑)。

[DATA]
松華
東京都小平市学園西町1-37-14
[Today's recommendation]

https://www.youtube.com/watch?v=XPZNBybp-do