意外な“新店”の驚き寿司ランチ 【光琳亭】
2017.09.01
偶然ではあるがこのところ萩山町づいていて、そう考えながら萩山駅あたりを流していたら、割烹「光琳亭」でリーズナブルなすしランチを出していたことを思い出した。
この店は小平霊園に近いこともあって法事と思われる団体客が出入りするのを見かけたりして、自分には縁がないと思っていたが、流れというかこの際だから値段だけでも確認しておこうと多摩湖自転車道を外れてそちらに向かった。
ところが、店があったあたりにそれらしい物件は見当たらず、たしかここのはずというビルの1階はがらんどう。つぶれちゃったのか… と思って引き返そうとしたら、“新店舗に移転しました”の立て看板を発見。

移転前の場所
その看板には“4月1日オープン”“徒歩3分”とある。この情報はかなり意外である。
なぜならこの場所は毎日のように通る自転車道から100mほどしか離れていない。わざとルートを外れてここの前を通ることだってある。なぜ5カ月も気づかなかったんだろう? しかも、ここの徒歩3分圏内に新店ができていたとしたら、いくらなんでも気づきそうなものである。
半信半疑のまま、徒歩3分の矢印の指し示す方向に向かった。

来た道を戻り、自転車道を通り越して少し行くと、圓龍寺の向こうのビルの外壁に“光琳亭P入り口”の看板が。
そのビルの1階で、たしかに真新しいお店が営業していた。

新店舗
この場所は、以前の店舗とは自転車道を挟んで正反対という位置関係になる。
そして旧店舗よりずっと自転車道から近いのであるが、このわずかな区間こそ、自分がほとんど通ることのない空白地帯にあたるのだ。
気づかないはずである。
店先のランチの看板には“にぎり寿司(並)650円(税別)”。
もはや入るしかない流れになっていた。
引き戸を開けると玄関であった。普通の民家の玄関のような。
思いっきり面食らいつつ、式台の上の仕切り戸の開いている右側から向こうをのぞき込んでみると、フローリングの部屋がゆるく2つに仕切られ、奥のテーブルにおばちゃんが4人、不思議そうにこっちを見てる。これはどうやら客だ。
正面が調理場のようで、そちらに人の気配はあるが、こっちに気づいてくれそうにない。

これは困った。
上がっていいものかどうか。そもそも営業中なのかどうか。何か聞こうにも誰も出てきてくれそうにないから靴を脱いで上がらないことにはどうにもならないし。でも上がっていいものかどうか…。
しかし、おばちゃん連中はヒソヒソ僕のことをうわさし始めた気配で、このまますごすご帰るのも、なんか悔しい。
もうええわ! とスリッパに履き替え、ずかずかと進み、奥の暖簾をくぐる。けっこう年配の板さん風とおかみさん風。
「えーと… 大丈夫ですか?」
「あ… はい。やってますよ」とおかみさん。「気づかなくてすみませんねぇ」
ということで、どうにかおばちゃんたちの横のテーブルに通される。

店内は、いちばん奥がおばちゃんたちが使っている6人掛けテーブル、その左側のコーナーが僕の座っている4人掛けテーブル、ほかには入り口側の玄関と厨房の間に10人掛けの大テーブルという配置になっている。
ランチは表の看板とは少し内容が違うとのことだが、あらためて吟味する気持ちの余裕はすっかり失われているので、最初決めたままにぎり寿司(並)を注文。

おかみさんは優しそうな方だが、それにしても居心地が悪い。久々に“やっちまった”感をかみしめる。
おばちゃん連中のおしゃべりは途切れることがない。会話中のキーワードを列挙すると、コーラス、ソプラノ、カセットテープ、五木ひろし、坂本冬美、サン=テグジュペリ、チボー家の人々、長男の嫁、3番目の嫁、育ちが知れる……。
とっとと食べてさっさと出たくなる。しかしなかなか料理が出てこない。

15分近く待って、ようやく先付けが出る。
「こちらは鱧の、えーと…」
「え? 煮こごりですか?」
「そうそう。よくご存じで」
「いやー、そんな感じかなぁ、と(笑)」
え? 650円ランチでハモっすか? と、こっちは内心相当驚いている。
それによってたちどころに食べ物に関心が集中したのである。

続いてにぎり。マグロ、イカ、海老、白身、穴子、玉子、鉄火巻きとかっぱ巻きと、立派な内容だ。
そしてお椀。そうめんの入ったお吸い物で、白いひらひらしたものが沈んでいる。口に入れるとほろっと崩れる。百合根であった。
650円ランチで鱧や百合根に出くわすとは思ってもみなかった。

玄関マットには“光琳亭 すしたつ”の文字が入っている。食べログのマップで「光琳亭」「寿司龍」の2店名が同位置にポイントしてあるように、こちらの本職はすし屋なんだと思う。
これはランチのにぎり寿司(上)1000円は相当期待できるんじゃないだろうか。
支払いのときおかみさんはすまなそうに「ちょっと騒がしくて…」とおっしゃる。
いやいや、なかなか面白かったです。

[DATA]
光琳亭
東京都東村山市萩山町1-4-38
[Today's recommendation]

https://youtu.be/q7P-pixJR0g




ゲンノショウコ(多摩湖自転車道 / 東村山市萩山町)
偶然ではあるがこのところ萩山町づいていて、そう考えながら萩山駅あたりを流していたら、割烹「光琳亭」でリーズナブルなすしランチを出していたことを思い出した。
この店は小平霊園に近いこともあって法事と思われる団体客が出入りするのを見かけたりして、自分には縁がないと思っていたが、流れというかこの際だから値段だけでも確認しておこうと多摩湖自転車道を外れてそちらに向かった。
ところが、店があったあたりにそれらしい物件は見当たらず、たしかここのはずというビルの1階はがらんどう。つぶれちゃったのか… と思って引き返そうとしたら、“新店舗に移転しました”の立て看板を発見。

移転前の場所
その看板には“4月1日オープン”“徒歩3分”とある。この情報はかなり意外である。
なぜならこの場所は毎日のように通る自転車道から100mほどしか離れていない。わざとルートを外れてここの前を通ることだってある。なぜ5カ月も気づかなかったんだろう? しかも、ここの徒歩3分圏内に新店ができていたとしたら、いくらなんでも気づきそうなものである。
半信半疑のまま、徒歩3分の矢印の指し示す方向に向かった。

来た道を戻り、自転車道を通り越して少し行くと、圓龍寺の向こうのビルの外壁に“光琳亭P入り口”の看板が。
そのビルの1階で、たしかに真新しいお店が営業していた。

新店舗
この場所は、以前の店舗とは自転車道を挟んで正反対という位置関係になる。
そして旧店舗よりずっと自転車道から近いのであるが、このわずかな区間こそ、自分がほとんど通ることのない空白地帯にあたるのだ。
気づかないはずである。
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店先のランチの看板には“にぎり寿司(並)650円(税別)”。
もはや入るしかない流れになっていた。
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引き戸を開けると玄関であった。普通の民家の玄関のような。
思いっきり面食らいつつ、式台の上の仕切り戸の開いている右側から向こうをのぞき込んでみると、フローリングの部屋がゆるく2つに仕切られ、奥のテーブルにおばちゃんが4人、不思議そうにこっちを見てる。これはどうやら客だ。
正面が調理場のようで、そちらに人の気配はあるが、こっちに気づいてくれそうにない。

これは困った。
上がっていいものかどうか。そもそも営業中なのかどうか。何か聞こうにも誰も出てきてくれそうにないから靴を脱いで上がらないことにはどうにもならないし。でも上がっていいものかどうか…。
しかし、おばちゃん連中はヒソヒソ僕のことをうわさし始めた気配で、このまますごすご帰るのも、なんか悔しい。
もうええわ! とスリッパに履き替え、ずかずかと進み、奥の暖簾をくぐる。けっこう年配の板さん風とおかみさん風。
「えーと… 大丈夫ですか?」
「あ… はい。やってますよ」とおかみさん。「気づかなくてすみませんねぇ」
ということで、どうにかおばちゃんたちの横のテーブルに通される。

店内は、いちばん奥がおばちゃんたちが使っている6人掛けテーブル、その左側のコーナーが僕の座っている4人掛けテーブル、ほかには入り口側の玄関と厨房の間に10人掛けの大テーブルという配置になっている。
ランチは表の看板とは少し内容が違うとのことだが、あらためて吟味する気持ちの余裕はすっかり失われているので、最初決めたままにぎり寿司(並)を注文。

おかみさんは優しそうな方だが、それにしても居心地が悪い。久々に“やっちまった”感をかみしめる。
おばちゃん連中のおしゃべりは途切れることがない。会話中のキーワードを列挙すると、コーラス、ソプラノ、カセットテープ、五木ひろし、坂本冬美、サン=テグジュペリ、チボー家の人々、長男の嫁、3番目の嫁、育ちが知れる……。
とっとと食べてさっさと出たくなる。しかしなかなか料理が出てこない。

15分近く待って、ようやく先付けが出る。
「こちらは鱧の、えーと…」
「え? 煮こごりですか?」
「そうそう。よくご存じで」
「いやー、そんな感じかなぁ、と(笑)」
え? 650円ランチでハモっすか? と、こっちは内心相当驚いている。
それによってたちどころに食べ物に関心が集中したのである。

続いてにぎり。マグロ、イカ、海老、白身、穴子、玉子、鉄火巻きとかっぱ巻きと、立派な内容だ。
そしてお椀。そうめんの入ったお吸い物で、白いひらひらしたものが沈んでいる。口に入れるとほろっと崩れる。百合根であった。
650円ランチで鱧や百合根に出くわすとは思ってもみなかった。

玄関マットには“光琳亭 すしたつ”の文字が入っている。食べログのマップで「光琳亭」「寿司龍」の2店名が同位置にポイントしてあるように、こちらの本職はすし屋なんだと思う。
これはランチのにぎり寿司(上)1000円は相当期待できるんじゃないだろうか。
支払いのときおかみさんはすまなそうに「ちょっと騒がしくて…」とおっしゃる。
いやいや、なかなか面白かったです。

[DATA]
光琳亭
東京都東村山市萩山町1-4-38
[Today's recommendation]

https://youtu.be/q7P-pixJR0g




ゲンノショウコ(多摩湖自転車道 / 東村山市萩山町)