ザ・大衆食堂の手引 【ふじや食堂】
2017.08.14
大衆食堂の姿かたちとしてわれわれ世代のたいがいの人間の記憶に残っているのはこういうビジュアルじゃないか、という外観を見せるのが「ふじや食堂」。
通りから中の様子がよく見えるのだが、ホール係のおばちゃんは頭に白い三角巾をかぶっている。外観に加え、これもポイントが高い。もはや食堂のおばちゃんにしか見えない。当たり前か(笑)。

場所は土地勘のない人にはわかりづらいかもしれない。西武線小川駅西口の階段を下りて、正面の立ち食いそば「戸隠そば」を右折、二股を右に進み、踏切のある通りを突っ切ってすぐ右手(ファミマの裏手)。
このあたりはいろいろ古い店が残っていたり遺構を残していたりするので、そういうのが好きな人には面白い街だと思う。

ふじや食堂は、スタイルこそレトロチックだが建造物自体はそれほどくたびれておらず、とっちらかってもいない。入り口がガラス戸でオープンなこともあって、入るのにそれほどハードルは高くないかもしれない。
しかし僕はこれまで入ったことがない。ここは明らかに地元密着型で、常連客で常にある程度にぎわっている様子が、オープンなだけに丸見えである。それが一見客に入店をためらわせる。

本日は2時近くと遅かったのでちょっとのぞいてみて、先客が2人と少ないことを確認のうえ入店。
店内は思ったよりも広く、というかゆったりしたテーブル配置で、右に3卓、左に3卓、計24席ある。入ってすぐ右手のテーブル席に座る。
店員は、年配のたぶんご夫婦と、たぶんその娘さんの計3人。
お店の人に気づいてもらって「いらっしゃいませ」と言ってもらう。自分の席を確保する。――だいたいの場合、この段階で初入店の関門を通過したといっていい。
しかしこの店はここからが簡単ではなかった。

テーブルにメニュー書きがない。店内を見回しても、配膳口の上に張ってある短冊とその右手の黒板のみで、そこには定食の表示がない。仕方ないので目を凝らして(遠いので)、黒板にチョークの書き込みから“ロースかつ”の文字を探り当て、注文をとりに来るのを待つ。
しかしおねえさんは厨房を出たところから一歩も動こうとせず、ややあってこちらに不審げな視線を向ける。
それでこの距離での申告制であることに気づき、「ロースかつ」と大きな声で告げる。これは通ったようだが、また一瞬の間。
そうなのだ。ここはいちいち全部申し述べないとダメみたいだ。
短冊を見つつ、「ライスを、えーと中盛り。あとみそ汁」

これでようやく通過儀礼が終了したようで、ホッとしてあらためていまのオーダーを振り返ってみる。
ロースかつ300円、中盛ライス230円、みそ汁70円。
合計600円と、これはむちゃくちゃ安いんではないか? これなら汁物はあさり汁180円でもよかったかもしれないなと、ちょっと“欲”が出る。

やって来たお盆は600円にしたらなかなかのもの。
ロースかつは小ぶりだが、がっかりするほどではない。味もしっかりしており、脂身が甘くおいしい。
中盛ライスは、普通の店の普通盛りよりずいぶん多い。僕ぐらいでも小盛でいいのかもしれない。って、20円しか違わないけど。
みそ汁は、大根と豆腐とワカメ。よく煮詰まっていて、大根はいい感じだけどワカメはちょっと… と、こういうのもトレードオフというんだろうか。

僕にはこれは非常に満足のいく内容。そして、こういう食堂の魅力はおかずの組み合わせのバリエーションだ。
たとえば、今日のものにハムエッグ210円を合わせれば810円、さらにマカロニサラダ150円を加えても960円。
これは思った以上に使い勝手がよさそうと確認し、お盆に載ってきた600と書かれた紙きれを渡して支払いを済ませ、お店をあとにする。

[DATA]
ふじや食堂
東京都小平市小川西町3-26-2
[Today's recommendation]

https://youtu.be/TpGPBoS5nTE


大衆食堂の姿かたちとしてわれわれ世代のたいがいの人間の記憶に残っているのはこういうビジュアルじゃないか、という外観を見せるのが「ふじや食堂」。
通りから中の様子がよく見えるのだが、ホール係のおばちゃんは頭に白い三角巾をかぶっている。外観に加え、これもポイントが高い。もはや食堂のおばちゃんにしか見えない。当たり前か(笑)。

場所は土地勘のない人にはわかりづらいかもしれない。西武線小川駅西口の階段を下りて、正面の立ち食いそば「戸隠そば」を右折、二股を右に進み、踏切のある通りを突っ切ってすぐ右手(ファミマの裏手)。
このあたりはいろいろ古い店が残っていたり遺構を残していたりするので、そういうのが好きな人には面白い街だと思う。

ふじや食堂は、スタイルこそレトロチックだが建造物自体はそれほどくたびれておらず、とっちらかってもいない。入り口がガラス戸でオープンなこともあって、入るのにそれほどハードルは高くないかもしれない。
しかし僕はこれまで入ったことがない。ここは明らかに地元密着型で、常連客で常にある程度にぎわっている様子が、オープンなだけに丸見えである。それが一見客に入店をためらわせる。

本日は2時近くと遅かったのでちょっとのぞいてみて、先客が2人と少ないことを確認のうえ入店。
店内は思ったよりも広く、というかゆったりしたテーブル配置で、右に3卓、左に3卓、計24席ある。入ってすぐ右手のテーブル席に座る。
店員は、年配のたぶんご夫婦と、たぶんその娘さんの計3人。
お店の人に気づいてもらって「いらっしゃいませ」と言ってもらう。自分の席を確保する。――だいたいの場合、この段階で初入店の関門を通過したといっていい。
しかしこの店はここからが簡単ではなかった。

テーブルにメニュー書きがない。店内を見回しても、配膳口の上に張ってある短冊とその右手の黒板のみで、そこには定食の表示がない。仕方ないので目を凝らして(遠いので)、黒板にチョークの書き込みから“ロースかつ”の文字を探り当て、注文をとりに来るのを待つ。
しかしおねえさんは厨房を出たところから一歩も動こうとせず、ややあってこちらに不審げな視線を向ける。
それでこの距離での申告制であることに気づき、「ロースかつ」と大きな声で告げる。これは通ったようだが、また一瞬の間。
そうなのだ。ここはいちいち全部申し述べないとダメみたいだ。
短冊を見つつ、「ライスを、えーと中盛り。あとみそ汁」

これでようやく通過儀礼が終了したようで、ホッとしてあらためていまのオーダーを振り返ってみる。
ロースかつ300円、中盛ライス230円、みそ汁70円。
合計600円と、これはむちゃくちゃ安いんではないか? これなら汁物はあさり汁180円でもよかったかもしれないなと、ちょっと“欲”が出る。

やって来たお盆は600円にしたらなかなかのもの。
ロースかつは小ぶりだが、がっかりするほどではない。味もしっかりしており、脂身が甘くおいしい。
中盛ライスは、普通の店の普通盛りよりずいぶん多い。僕ぐらいでも小盛でいいのかもしれない。って、20円しか違わないけど。
みそ汁は、大根と豆腐とワカメ。よく煮詰まっていて、大根はいい感じだけどワカメはちょっと… と、こういうのもトレードオフというんだろうか。

僕にはこれは非常に満足のいく内容。そして、こういう食堂の魅力はおかずの組み合わせのバリエーションだ。
たとえば、今日のものにハムエッグ210円を合わせれば810円、さらにマカロニサラダ150円を加えても960円。
これは思った以上に使い勝手がよさそうと確認し、お盆に載ってきた600と書かれた紙きれを渡して支払いを済ませ、お店をあとにする。

[DATA]
ふじや食堂
東京都小平市小川西町3-26-2
[Today's recommendation]

https://youtu.be/TpGPBoS5nTE

