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蔦の下の扉をくぐる 【ほんやら洞】

2017.07.22

 「ほんやら洞」は個性派の多い国分寺にあってなお異彩を放つ。
殿ヶ谷戸庭園の北の坂道の途中。坂の途中にあるから1階と地階を判別しにくい、カフェやアンティークショップが入るマンションの隣。隣のように見えて実はマンションとつながっており、地下の一部が歩道際まではみ出している不思議な構造。


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そのはみ出したでっぱりが、ほんやら洞。
お店は蔓植物にすっぽり覆われ、完璧に気配を消している。普通の人間には廃屋にしか見えず、魔法使いだけが扉を開けることができる。


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店内は木とレンガ主体の重厚なつくり。
あちこちに同じギタリストの写真が貼ってある。あの構図はジミー・ペイジだっけ、それともブライアン・メイ…?
と、よく見たら中山ラビと書いてある。なるほど。


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われわれの隣では50前後の男性2人が映画論を戦わせている。映画だと思っていたら、演劇、絵画、歴史、宗教…、と議論は果てしなく広がり、お互いに一歩も引かない構え。
カウンター席には女子高校生の姿。隣に座る母親が青春時代を過ごしたお店なのだろうか。
ほかに読書をする男性が2人。


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僕らがいちばん普通。
どうやって入り口を見つけたのか、と怪訝そうな表情で、カウンターの端で洋書を読んでいる男性がちらちら僕に視線を向ける。
カレーの匂いに誘われて、と僕は答える。


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スパイシィチキンカレー(ラッシー付)850円。
スパイスの効いたインドカレータイプ。ただし、甘みはない。タマネギの分量などの工夫で、素材の自然なうま味やコクを引き出そうというもの。大きなチキンの塊がのる。


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ボロネーゼ(サラダ付)900円。
かなり細めのパスタを使用。バゲット2枚付き。


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ソースはよく煮込まれているが野菜の形状を残している。
セロリとピーマンの香りが前面に出る。


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店の前で立ち止まって様子をうかがう人がちらほら。
以前は内と外は別世界で、窓から外を見ると、通行人は何事もなかったように通り過ぎ、店は魔法にかかったままだった。


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途中、僕ら以上に普通っぽい若いカップルが立て続けに来店。
こうした動向は、調理場の冷蔵庫にも張り紙がしてあるように、ちょうど1週間前に放送されたアド街の効果にほかならない。
僕らも間違いなくそういう客だと思われている。いや、だいたいそういうことで遠からず、だけど。


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[DATA]
ほんやら洞
東京都国分寺市南町2-18-3





[Today's recommendation]
📘
odmagic.jpg
パトリシア・A. マキリップ(原島文世 訳)
『オドの魔法学校』、創元推理文庫



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