ドライブインのお品書き 【三喜食堂】
2017.07.17
所沢街道の下里二丁目交差点付近の緩やかなカーブを描いて小高くなっているあたりに、やや唐突に堂々たる構えの一軒家食堂が出現する。
それが「三喜食堂」だ。

所沢街道は古く整備されていない路線で、田無の北原交差点から秋津町三丁目交差点まで終始片側1車線道路である。
途中バイパス区間はなく、歩道の確保もままならない狭く曲がりくねったルートに零細町工場や自動車整備工場などが点在し、殺伐と古い情緒の紙一重といった風景が続く。

三喜食堂の一帯は開発が進んでおらず、現在の都市計画道路とは無関係に細い旧道が畑地を縦横に走り、突然古い敷地内墓地が出現したりする。
畑こそ減っているが、うねる丘陵地帯を上り下りする細道は、『となりのトトロ』の耕運機のシーンを思い起こさせる。

三喜食堂は、構えこそ純和風で一見結び付かないが、立地、スタンスは典型的な昭和のドライブインである。
多摩地区は各幹線道路にロードサイド店が立ち並ぶが、ほとんどがチェーン店でこういう古い形態は意外に少なく、ほかに立川通りの「けやき台ドライブイン」が残るぐらいだ。

1時前で客はわれわれを含めて12名。それに対し店員は6名と、どう考えても過剰である。
店員ではないと思うが、厨房に小学生1~2名がちらちら見え隠れしており、それも店側にカウントすれば一大勢力となる。

そこはまあ、どう見ても家族経営なので、人件費はシビアな問題にはならないのだろう。
後継者難を考えれば、こっちははるかに健全だ。

ドライブインの要件である品数の多さ、レパートリーの広さはもちろん満たしており、壁のお品書きは、そば・うどん、麺(中華麺)類の部、飯の部、定食の部、一品料理と、部門別に分けられている。
よく見るとこの分類法がユニークで、たとえば飯の部にはチャーハン、カレーライス、天丼と和洋中が同居する。

われわれのオーダーは、ヒレカツ定食850円+税(私)、メンチカツ定食850円+税(妻)。
この+税は3%で、壁に掲示の消費税5%時代の内税価格に3%をレジで上乗せということらしい。木札の品書きを作り直すのもコストがかかるし、次の増税も迫っているし、という状況での苦肉の策のようだ。

定食は、小鉢(カボチャの煮物)、お新香(オイキムチ)、みそ汁(ナメコ、豆腐、油揚げ、ワカメ、ネギ)付き。メインのカツの皿にはスパゲティサラダが添えてある。
ご飯は硬めの炊き上がりで量は多め。例によって妻がまず僕のどんぶりにご飯を大量に移し、僕は3割増しぐらいから食べ始める。
ヒレカツは4切れ。軟らかく筋もなく、おいしくいただける。
具だくさんのみそ汁は業務用の気配が感じられず優しい味わい。ほかも同様に家庭の延長のような素朴な味で、質・量ともに満足の定食である。

メンチ好きの妻はときどきメンチカツを食べたがるが、メンチ嫌いの僕は手伝えない。あとで感想を聞いたら、「おいしかったよ。苦しかったけど」
小食の妻にとって、メンチは毎回、ぎりぎりの勝負のようである。

隣の客の五目そば+半チャーハンがとてもおいしそうだが、この半チャーハンの客がけっこう多い。もちろん、カレーライス、カツ丼、ざるそば、もやしそば、レモンサワー? と、いろんな注文が飛び交うのはドライブインならではである。
次は中華部門、じゃなくて麺の部でいってみたい。

[DATA]
三喜食堂
東京都東久留米市下里1-7-2
[Today's recommendation]



https://youtu.be/xrCMlSWlDX8
所沢街道の下里二丁目交差点付近の緩やかなカーブを描いて小高くなっているあたりに、やや唐突に堂々たる構えの一軒家食堂が出現する。
それが「三喜食堂」だ。

所沢街道は古く整備されていない路線で、田無の北原交差点から秋津町三丁目交差点まで終始片側1車線道路である。
途中バイパス区間はなく、歩道の確保もままならない狭く曲がりくねったルートに零細町工場や自動車整備工場などが点在し、殺伐と古い情緒の紙一重といった風景が続く。

三喜食堂の一帯は開発が進んでおらず、現在の都市計画道路とは無関係に細い旧道が畑地を縦横に走り、突然古い敷地内墓地が出現したりする。
畑こそ減っているが、うねる丘陵地帯を上り下りする細道は、『となりのトトロ』の耕運機のシーンを思い起こさせる。

三喜食堂は、構えこそ純和風で一見結び付かないが、立地、スタンスは典型的な昭和のドライブインである。
多摩地区は各幹線道路にロードサイド店が立ち並ぶが、ほとんどがチェーン店でこういう古い形態は意外に少なく、ほかに立川通りの「けやき台ドライブイン」が残るぐらいだ。

1時前で客はわれわれを含めて12名。それに対し店員は6名と、どう考えても過剰である。
店員ではないと思うが、厨房に小学生1~2名がちらちら見え隠れしており、それも店側にカウントすれば一大勢力となる。

そこはまあ、どう見ても家族経営なので、人件費はシビアな問題にはならないのだろう。
後継者難を考えれば、こっちははるかに健全だ。

ドライブインの要件である品数の多さ、レパートリーの広さはもちろん満たしており、壁のお品書きは、そば・うどん、麺(中華麺)類の部、飯の部、定食の部、一品料理と、部門別に分けられている。
よく見るとこの分類法がユニークで、たとえば飯の部にはチャーハン、カレーライス、天丼と和洋中が同居する。

われわれのオーダーは、ヒレカツ定食850円+税(私)、メンチカツ定食850円+税(妻)。
この+税は3%で、壁に掲示の消費税5%時代の内税価格に3%をレジで上乗せということらしい。木札の品書きを作り直すのもコストがかかるし、次の増税も迫っているし、という状況での苦肉の策のようだ。

定食は、小鉢(カボチャの煮物)、お新香(オイキムチ)、みそ汁(ナメコ、豆腐、油揚げ、ワカメ、ネギ)付き。メインのカツの皿にはスパゲティサラダが添えてある。
ご飯は硬めの炊き上がりで量は多め。例によって妻がまず僕のどんぶりにご飯を大量に移し、僕は3割増しぐらいから食べ始める。
ヒレカツは4切れ。軟らかく筋もなく、おいしくいただける。
具だくさんのみそ汁は業務用の気配が感じられず優しい味わい。ほかも同様に家庭の延長のような素朴な味で、質・量ともに満足の定食である。

メンチ好きの妻はときどきメンチカツを食べたがるが、メンチ嫌いの僕は手伝えない。あとで感想を聞いたら、「おいしかったよ。苦しかったけど」
小食の妻にとって、メンチは毎回、ぎりぎりの勝負のようである。

隣の客の五目そば+半チャーハンがとてもおいしそうだが、この半チャーハンの客がけっこう多い。もちろん、カレーライス、カツ丼、ざるそば、もやしそば、レモンサワー? と、いろんな注文が飛び交うのはドライブインならではである。
次は中華部門、じゃなくて麺の部でいってみたい。

[DATA]
三喜食堂
東京都東久留米市下里1-7-2
[Today's recommendation]



https://youtu.be/xrCMlSWlDX8