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守り伝える武蔵野うどん 【指田屋 水道道路店】

2017.07.07

 小平は、東村山や武蔵村山などと並ぶ武蔵野うどんの本場である。
この一帯は水持ちの悪い土地で稲作には向かず、小麦づくりが盛んで、寄り合いや人寄せのときにうどんを打って出す習慣があった。そうした流れをくむのが、いわゆる武蔵野うどんである。
市内天神町にある“小平ふるさと村”では、“武蔵野手打ちうどん保存普及会”の運用による「小平糧うどん」を土日祝日に出店している。武蔵野手打ちうどん保存普及会の活動の趣旨は、地粉で手打ちうどんを打つ習慣を武蔵野の貴重な食文化として保存していこうというもの。

小平市内には比較的新しい人気うどん店が多いが、老舗格として名前が挙がるのが「指田屋」。2店舗のうち有名な青梅街道店は去年閉店し、いまは指田屋といえばこの水道道路店を指す。
小平駅から徒歩約10分。多摩湖自転車道沿いにあるので、夏でも涼しい自転車道の木陰道を快適に歩いていける。
駐車場の真ん中のような位置にポツンと建っているような、やや腰の据わりが悪そうな印象を与えるが、どこかお伽話的な非現実感も漂うこぢんまりしたお店だ。


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店内は、右手が調理場、左の食堂には大テーブルが1つ。これは真ん中が囲炉裏になっている四角いテーブルというかロの字形カウンターというか、ぐるりと12人ほど座れるようになっている。囲炉裏には炭が置かれ、自在鉤に大きな鉄瓶が掛けられているが、使われてはいないようだ。
壁には農具やわら製品などが飾られ、店内は囲炉裏を中心に民芸調で統一されているが、よく見ると棚にはかわいい系動物のぬいぐるみもちらほら。


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肉汁付けうどん620円を注文。
入ってまもなく先客のおばさん2人組が出て、客は僕1人に。お店のおばちゃんに何げなく「向こうのお店(青梅街道店)はもうやってないんですよね」と声を掛けたら、「いまは釣り堀をやってるの」と意外な答え。あんなところに釣り堀できたっけ…? と一瞬混乱したが、そうではなく、店主は店を引き払って飯能で釣り堀を始めたとのこと。横の壁にそちらの案内が張ってある。
「たぬきも持っていったの」とおばちゃん。「あ、ここだ、というぐらいに目立ってる(笑)」
青梅街道店は店頭の大きな信楽焼のたぬきが有名だった。


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この独特のホンワカした雰囲気のおばちゃん、実はかなりの話好きだ。僕が食べてる間、ずっといろんなことをしゃべってる。
――釣り堀でいずれはうどんを出すようになるんじゃないか、飯能にも武州うどんという武蔵野タイプのうどんがあるらしい、小平ではうどんに糧を添える食べ方が多い、武蔵野うどんといえば肉汁うどんが代表……。思い返すと、いろんなことといってもすべてうどんの話題なのだ。根っからのうどん好きという感じで、研究も重ねていそうだ。

話は面白いんだが、こっちは食事に集中できない。でも麺だから箸を止めるのに抵抗があり、聞きながらもボソボソ食べ続ける。食べていると話が半分頭に入ってこないから聞き返したり質問したりする。しゃべりながら食べるから味がよくわからない…。
で、うどんの感想は、ゆで置きだがしっかりコシがあって、太さ、よじれ具合、香りとも、これぞ武蔵野うどん、といったところかな。つゆは僕が食べた中ではいちばんの辛口だ。おろしたてのショウガが肉汁を引き立てる。


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武蔵野うどんの名づけ親、故 加藤有次氏の話題に。
小平生まれで前述の武蔵野手打ちうどん保存普及会の創設者にして“うどん博士”として知られた加藤有次 元国学院大学名誉教授と面識があったようで、おばちゃんは加藤先生と呼ぶ。エピソードを一つ。
加藤氏は自宅にうどん小屋を建てるほど研究熱心で、ときどき会員らにうどんを振る舞った。そんなとき、招待客は一人一人、15分刻みで訪問時間を指定されたという。
「時間に遅れたら、『おまえの分はない』と。最高の状態のうどんを食べさせたい、というのが先生の趣旨だから」

武蔵野うどん好きの人は、こちらのおばちゃんと話したら大いに盛り上がるだろうし、勉強にもなると思う。


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[DATA]
指田屋 水道道路店
東京都小平市天神町2-334


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