キッチン南海でカツカレー 【キッチン南海 上井草店】
2017.07.05
昭和を代表する洋食店「キッチン南海」。系列店が都内各所に出店していることから、なじみの人や懐かしむ人は多いだろう。入ったことはないが存在は知っているという人も少なくないかもしれない。
ここは有名店であり、Wikipediaにも項目が設けられている。
――1960年に東京都千代田区飯田橋で創業し、1963年に千代田区神田神保町に移転…… この店で修業した料理人が独立してキッチン南海の店名で開店したことから、神田神保町のほかにも同名の店舗があり、一時都内に20店舗が存在した。独立時の条件が「大衆的な値段」のみであったため、メニューや価格は店舗によって異なる。
西武新宿線沿線に何店舗も出店していたこともあり、避けて通ることのできない存在だ。僕の行動圏内には上井草店と井荻店が現存しており、近い順にまず上井草から訪れることにする。

上井草という街はあまりなじみはないが、高校・大学と同窓だった田舎の友人が大学時代に住んでいたことがあり、数年前にうちに泊まりに来た翌日、久々に行ってみたいというので同行した。この駅周辺は沿線でも特にさびれていて、駅にトイレすらない。正確に言うと、下り線構内にしかトイレがなく、連絡通路がなくて改札が別々だから、上りホームに降りた乗客はトイレを利用できない。ということをよく覚えているのは、そのとき友人が切羽詰まった状況だったからだ。

というほろ苦い思い出の街だが、久々に訪れたら以前にもましてさびれているように感じられる。比較的商店の多い南口も人けはあまりない。
キッチン南海は、駅の北口を出てすぐ、南北を結ぶバス通りに面している。

レンガ壁に木枠のガラス戸やサンプルケースがレトロ感を醸し出す。外から店内が見え、サンプルケースにメニュー表が見やすく掲示されているので入りやすい。
っていうか、すいているのがわかったから入りやすかったんだが。

先客は1人。キッチン南海といえば僕はやっぱり神保町や早稲田店を思い浮かべるので混むイメージが強く、12時台ですいているのは意外だった。まあ、ありがたいけど。
思ったよりも小さい店で、カウンターのみ10席程度。

ここの一番人気のカツカレー630円をオーダー。ちなみに神保町店は“元祖カツカレー”をうたっている。
寡黙そうなおじさんが1人で切り盛りしているもよう。
注文を受けてからカツをフライ鍋に投入。皿にご飯をよそい、横にキャベツの千切りを添え、配膳台に置く。案外短時間で揚がったカツを切り分けご飯の上に盛り付ける。揚げたてのカツの上からカレーをかける。ジュワジュワーという音とともに湯気がモワーッ。客が、オオッ! となる。
おじさんは淡々とこなしているが、この演出はなかなかいい。

カレーはけっこう黒っぽく、いろいろな材料が煮崩れている感じ。
ひと口食べて、「しょっぱい」と感じた。しょっぱいというのは過剰なうま味や甘味がないという意味で、こういう味は好きだ。
辛さはなく、スパイスの配合は生薬系(シナモン?)が強めに感じる。
カツは小ぶりで厚みもそれほどないので熱々でも食べやすい。揚げ具合もちょうどいい。

しばらく食べてから懐かしさがこみ上げてきたのだが、知らず知らずのうちにチェーン店の味に慣らされて、昔の味を忘れてしまっているのかもしれないな…。
学生時代からこの名前は知っていて、早稲田店なんかは入ったことがあると思うんだが、まったく覚えていないのである。
量が多くないのは意外だったが、われわれの年代にはこれぐらいがちょうどいい。僕のあとにもお客さんが1人入ったが、3人とも同じような年格好だ。
こういう洋食屋はかつては学生が支えた。いまは、かつて学生だったおじさんが支えているのかもしれない。

[DATA]
キッチン南海 上井草店
東京都杉並区井草5-19₋6
[Today's recommendation]



https://youtu.be/IZiKkXkLit0
昭和を代表する洋食店「キッチン南海」。系列店が都内各所に出店していることから、なじみの人や懐かしむ人は多いだろう。入ったことはないが存在は知っているという人も少なくないかもしれない。
ここは有名店であり、Wikipediaにも項目が設けられている。
――1960年に東京都千代田区飯田橋で創業し、1963年に千代田区神田神保町に移転…… この店で修業した料理人が独立してキッチン南海の店名で開店したことから、神田神保町のほかにも同名の店舗があり、一時都内に20店舗が存在した。独立時の条件が「大衆的な値段」のみであったため、メニューや価格は店舗によって異なる。
西武新宿線沿線に何店舗も出店していたこともあり、避けて通ることのできない存在だ。僕の行動圏内には上井草店と井荻店が現存しており、近い順にまず上井草から訪れることにする。

上井草という街はあまりなじみはないが、高校・大学と同窓だった田舎の友人が大学時代に住んでいたことがあり、数年前にうちに泊まりに来た翌日、久々に行ってみたいというので同行した。この駅周辺は沿線でも特にさびれていて、駅にトイレすらない。正確に言うと、下り線構内にしかトイレがなく、連絡通路がなくて改札が別々だから、上りホームに降りた乗客はトイレを利用できない。ということをよく覚えているのは、そのとき友人が切羽詰まった状況だったからだ。

というほろ苦い思い出の街だが、久々に訪れたら以前にもましてさびれているように感じられる。比較的商店の多い南口も人けはあまりない。
キッチン南海は、駅の北口を出てすぐ、南北を結ぶバス通りに面している。

レンガ壁に木枠のガラス戸やサンプルケースがレトロ感を醸し出す。外から店内が見え、サンプルケースにメニュー表が見やすく掲示されているので入りやすい。
っていうか、すいているのがわかったから入りやすかったんだが。

先客は1人。キッチン南海といえば僕はやっぱり神保町や早稲田店を思い浮かべるので混むイメージが強く、12時台ですいているのは意外だった。まあ、ありがたいけど。
思ったよりも小さい店で、カウンターのみ10席程度。

ここの一番人気のカツカレー630円をオーダー。ちなみに神保町店は“元祖カツカレー”をうたっている。
寡黙そうなおじさんが1人で切り盛りしているもよう。
注文を受けてからカツをフライ鍋に投入。皿にご飯をよそい、横にキャベツの千切りを添え、配膳台に置く。案外短時間で揚がったカツを切り分けご飯の上に盛り付ける。揚げたてのカツの上からカレーをかける。ジュワジュワーという音とともに湯気がモワーッ。客が、オオッ! となる。
おじさんは淡々とこなしているが、この演出はなかなかいい。

カレーはけっこう黒っぽく、いろいろな材料が煮崩れている感じ。
ひと口食べて、「しょっぱい」と感じた。しょっぱいというのは過剰なうま味や甘味がないという意味で、こういう味は好きだ。
辛さはなく、スパイスの配合は生薬系(シナモン?)が強めに感じる。
カツは小ぶりで厚みもそれほどないので熱々でも食べやすい。揚げ具合もちょうどいい。

しばらく食べてから懐かしさがこみ上げてきたのだが、知らず知らずのうちにチェーン店の味に慣らされて、昔の味を忘れてしまっているのかもしれないな…。
学生時代からこの名前は知っていて、早稲田店なんかは入ったことがあると思うんだが、まったく覚えていないのである。
量が多くないのは意外だったが、われわれの年代にはこれぐらいがちょうどいい。僕のあとにもお客さんが1人入ったが、3人とも同じような年格好だ。
こういう洋食屋はかつては学生が支えた。いまは、かつて学生だったおじさんが支えているのかもしれない。

[DATA]
キッチン南海 上井草店
東京都杉並区井草5-19₋6
[Today's recommendation]



https://youtu.be/IZiKkXkLit0