衰退商店街の隠れ家食堂 【麦】
2017.06.20
いわゆる団地商店街にもいろいろなタイプがあると思うが、たとえば商業棟の1階部分に商店が入居する団地内蔵型、それから隣接する路地に個人商店が集中する外付け銀座型、このあたりに特に魅力を感じる。もっとも、どちらのタイプもいまや絶滅危惧種で、代表的な衰退商店街でもある。
細い路地のさびついたシャッターの軒並みが途切れ、ふと横を向くと暖簾を掲げた小さな食堂。そんなシチュエーションを求めて衰退商店街を巡り歩いている。

「光商店街」は東京街道団地の南東に隣接する路地裏商店街だ。往時を知らなくとも、すっかりさびれてしまったという状況は明らか。昼に営業している飲食店は2軒しか残っていない。
ただ、飲食店が全滅しているところも珍しくないので、ここはまだいいほうかもしれない。現に団地跡地を挟んで北東の一画、洋品店「ふじや」の向かいの路地裏は、ほぼ壊滅の様相を呈している。

こちら「麦」は中華系が充実した定食屋・居酒屋。
この商店街自体相当ディープなこともあって、この店を見つけたときはゾクゾクしたが、よく見るとこぎれいな外観である。軒先テントはけっこう新しそうだし、食品サンプルの値札も日焼けしていない。植物の手入れも行き届いている感じ。
年季は入っているがメンテナンスを欠いていないという印象だ。

店に入ると意外に混んでいる。っていうか、小さな店なので先客5人でも少々圧迫感がある。
入って右手のテーブルに初老男性3人組、正面奥の小上がりに初老男女。ほかに1卓テーブルが空いているが、カウンター席があるのでそちらに座る。先客はどう見ても地元常連なので、こういうときにカウンターがあると助かる。

店内もメンテが行き届き、天板はピカピカ、掲示物がきれいに整列している。
お冷やを持ってきてくれた店主とおぼしきおじいさんに、焼肉定食750円を注文。
3人組は真後ろなので見えないが、工務店、電気屋、ご隠居と勝手に推定。ずっとキュウリの芽かき法について意見を戦わせている。
奥の2人のちゃぶ台には澤乃井生酒300ml。女の人はすぐに真っ赤なナントカサワー的なものを追加。

厨房には、年齢的に娘さんかな? というおばちゃんと、もう1人、そのダンナ? 息子? という年齢不詳な男性。さっきのおじいさんはフロア担当のようだ。

焼肉定食は、大きめの豚肉3枚、お新香、味付け海苔、アサリのみそ汁という構成。
焼肉の味付けは、みそベースと思われる濃厚甘辛タレで、油っこさが食欲をそそる。横に添えられたポテトサラダはリンゴ入り。こういうのあったなと、味付け海苔ともども懐かしさがこみ上げる。みそ汁もアサリのうま味を生かした素朴な味わい。
全体に大味なところがなく丁寧に調理されている感じ。こういうお店は何を食べてもおいしいんじゃないかと思う。これで750円は非常にお得だ。ラーメン類も食べてみたい。

1時を過ぎて、3人組が席を立つ。意外に打ち止めが早い。
支払いは、みそラーメン、冷し中華、冷し中華。「ん?」と思って振り向くと、テーブルにはお冷やグラス3個のみ。ビール瓶もジョッキもない。グダグダな会話だからてっきり飲んでいるものと思っていた。失礼。
小上がりでは生酒を追加しているが。

支払いを済ませて外に出ると、おじいさんが一服していた。
「ありがとうございました」と丁寧にお辞儀してくるから、「ごちそうさまでした」とお辞儀を返す。自分で言うのもなんだが、ほのぼのしてるな… と。

[DATA]
麦
東京都東大和市新堀1-1432-33
[Today's recommendation]

https://youtu.be/QJqH1uZIZMw
いわゆる団地商店街にもいろいろなタイプがあると思うが、たとえば商業棟の1階部分に商店が入居する団地内蔵型、それから隣接する路地に個人商店が集中する外付け銀座型、このあたりに特に魅力を感じる。もっとも、どちらのタイプもいまや絶滅危惧種で、代表的な衰退商店街でもある。
細い路地のさびついたシャッターの軒並みが途切れ、ふと横を向くと暖簾を掲げた小さな食堂。そんなシチュエーションを求めて衰退商店街を巡り歩いている。

「光商店街」は東京街道団地の南東に隣接する路地裏商店街だ。往時を知らなくとも、すっかりさびれてしまったという状況は明らか。昼に営業している飲食店は2軒しか残っていない。
ただ、飲食店が全滅しているところも珍しくないので、ここはまだいいほうかもしれない。現に団地跡地を挟んで北東の一画、洋品店「ふじや」の向かいの路地裏は、ほぼ壊滅の様相を呈している。

こちら「麦」は中華系が充実した定食屋・居酒屋。
この商店街自体相当ディープなこともあって、この店を見つけたときはゾクゾクしたが、よく見るとこぎれいな外観である。軒先テントはけっこう新しそうだし、食品サンプルの値札も日焼けしていない。植物の手入れも行き届いている感じ。
年季は入っているがメンテナンスを欠いていないという印象だ。

店に入ると意外に混んでいる。っていうか、小さな店なので先客5人でも少々圧迫感がある。
入って右手のテーブルに初老男性3人組、正面奥の小上がりに初老男女。ほかに1卓テーブルが空いているが、カウンター席があるのでそちらに座る。先客はどう見ても地元常連なので、こういうときにカウンターがあると助かる。

店内もメンテが行き届き、天板はピカピカ、掲示物がきれいに整列している。
お冷やを持ってきてくれた店主とおぼしきおじいさんに、焼肉定食750円を注文。
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3人組は真後ろなので見えないが、工務店、電気屋、ご隠居と勝手に推定。ずっとキュウリの芽かき法について意見を戦わせている。
奥の2人のちゃぶ台には澤乃井生酒300ml。女の人はすぐに真っ赤なナントカサワー的なものを追加。

厨房には、年齢的に娘さんかな? というおばちゃんと、もう1人、そのダンナ? 息子? という年齢不詳な男性。さっきのおじいさんはフロア担当のようだ。

焼肉定食は、大きめの豚肉3枚、お新香、味付け海苔、アサリのみそ汁という構成。
焼肉の味付けは、みそベースと思われる濃厚甘辛タレで、油っこさが食欲をそそる。横に添えられたポテトサラダはリンゴ入り。こういうのあったなと、味付け海苔ともども懐かしさがこみ上げる。みそ汁もアサリのうま味を生かした素朴な味わい。
全体に大味なところがなく丁寧に調理されている感じ。こういうお店は何を食べてもおいしいんじゃないかと思う。これで750円は非常にお得だ。ラーメン類も食べてみたい。

1時を過ぎて、3人組が席を立つ。意外に打ち止めが早い。
支払いは、みそラーメン、冷し中華、冷し中華。「ん?」と思って振り向くと、テーブルにはお冷やグラス3個のみ。ビール瓶もジョッキもない。グダグダな会話だからてっきり飲んでいるものと思っていた。失礼。
小上がりでは生酒を追加しているが。

支払いを済ませて外に出ると、おじいさんが一服していた。
「ありがとうございました」と丁寧にお辞儀してくるから、「ごちそうさまでした」とお辞儀を返す。自分で言うのもなんだが、ほのぼのしてるな… と。

[DATA]
麦
東京都東大和市新堀1-1432-33
[Today's recommendation]

https://youtu.be/QJqH1uZIZMw