鬼子母神名物は、東京屈指の名店 【おせんだんご】
2023.01.03
前記事の続きで、だんご屋さんに大黒さま… もとい、大黒堂にだんご売り場が――
まさに絵に描いたような門前の茶屋である。
茶屋好きを自認する者としてこれを素通りできようか(いやできない)。

簡単に説明すると、“雑司が谷七福神”の大黒天を祀る鬼子母神 大黒堂ではおだんごが売られている。その名も「おせんだんご」。
つまりこのお堂、「大黒堂」と「おせんだんご」の二枚看板と考えればわかりやすい。

栞によると、かつて雑司が谷鬼子母神境内には多数の茶屋・料理屋が立ち並んでおり、いつしかそれらは姿を消したが、一軒の茶屋で売られていたおだんごの復活を望む声が多々聞かれ、それに応える形で大黒堂に店を構えたのが「おせんだんご」。
“おせん”は、鬼子母神に千人の子どもがいたことにあやかったもので、たくさんの子宝に恵まれるようにという願いが込められているとのこと。

その栞の名義に目を奪われる。
根岸芋坂の「羽二重団子」といえば、向島の「言問団子」、上野の「鶯だんご」(新鶯亭)と並ぶ“東京三大団子”。
鬼子母神のHPには、“株式会社羽二重団子 澤野修一社長のご尽力によりおせん団子が復活”とある。

思いがけない名店との出会い。
これも七福神のご利益か。

というか、7年前に確実にこの大黒堂にお参りしているはずだが、茶屋の記憶がない。
そのときの七福神の回り順は今回とは逆に鬼子母神をしょっぱなとしていたため慌ただしくて目に入らなかったか、あるいは「おせんだんご」営業日以外だったか。
営業日は、ネット情報ではだいたい土日祝日および縁日の8・18・28日となっているが、上の栞には“毎週月火定休日”と書いてあるので要確認。

おせん団子(焼き団子・あん団子各1本)を一つ頼む。
これで1セットだが、お茶を2つ付けてくれた。

平たいフォルムは、名高い羽二重団子そのもの。
甘さ控えめのこしあんと甘くない生じょうゆの組み合わせがよい。
ただし、「羽二重団子」が一串4つ刺しなのに対し「おせんだんご」は5つ刺しとお得感がある。
――小粒の五つ刺しのおだんごは、安産子育てと子孫繁栄を祈願する意味をこめております。

「羽二重団子」は1819(文政2)年創業。
前記事でも触れている雑司が谷ゆかりの夏目漱石など文化人に愛されていたことでも知られる。
日暮里の本店のイートインメニューには漱石セット(焼き1本・漱石もなか1個)をはじめ、(正岡)子規セット(焼き1本・あん3本)、(岡倉)天心セット(焼き2本・冷酒グラス)などが。
うぅ… 行ってみたい!

――「行きませう。上野にしますか。芋坂へ行って團子を食いましょうか。先生あすこの團子を食ったことがありますか。奥さん一辺行って食って御覧。柔らかくて安いです。酒も飲ませます。」と例によって秩序のない駄辯を揮っているうちに主人はもう帽子を被って沓脱へ下りる。
吾輩は又少々休養を要する。主人と多々良君が上野公園でどんな真似をして、芋坂で團子を幾皿食ったかその辺の逸事は探偵の必要もなし、又尾行する勇気もないからずっと略してその間休養せんければ成らん。
(夏目漱石『吾輩は猫である』より)

[DATA]
おせんだんご
東京都豊島区雑司が谷3-15-20 鬼子母神堂 大黒堂
https://www.kishimojin.jp/guide/moreinfo/other06.html
[Today's recommendation]

https://youtu.be/KKdOGSi4bKo


吾輩と三毛子


次号予告
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まさに絵に描いたような門前の茶屋である。
茶屋好きを自認する者としてこれを素通りできようか(いやできない)。

簡単に説明すると、“雑司が谷七福神”の大黒天を祀る鬼子母神 大黒堂ではおだんごが売られている。その名も「おせんだんご」。
つまりこのお堂、「大黒堂」と「おせんだんご」の二枚看板と考えればわかりやすい。

栞によると、かつて雑司が谷鬼子母神境内には多数の茶屋・料理屋が立ち並んでおり、いつしかそれらは姿を消したが、一軒の茶屋で売られていたおだんごの復活を望む声が多々聞かれ、それに応える形で大黒堂に店を構えたのが「おせんだんご」。
“おせん”は、鬼子母神に千人の子どもがいたことにあやかったもので、たくさんの子宝に恵まれるようにという願いが込められているとのこと。

その栞の名義に目を奪われる。
根岸芋坂の「羽二重団子」といえば、向島の「言問団子」、上野の「鶯だんご」(新鶯亭)と並ぶ“東京三大団子”。
鬼子母神のHPには、“株式会社羽二重団子 澤野修一社長のご尽力によりおせん団子が復活”とある。

思いがけない名店との出会い。
これも七福神のご利益か。

というか、7年前に確実にこの大黒堂にお参りしているはずだが、茶屋の記憶がない。
そのときの七福神の回り順は今回とは逆に鬼子母神をしょっぱなとしていたため慌ただしくて目に入らなかったか、あるいは「おせんだんご」営業日以外だったか。
営業日は、ネット情報ではだいたい土日祝日および縁日の8・18・28日となっているが、上の栞には“毎週月火定休日”と書いてあるので要確認。

おせん団子(焼き団子・あん団子各1本)を一つ頼む。
これで1セットだが、お茶を2つ付けてくれた。

平たいフォルムは、名高い羽二重団子そのもの。
甘さ控えめのこしあんと甘くない生じょうゆの組み合わせがよい。
ただし、「羽二重団子」が一串4つ刺しなのに対し「おせんだんご」は5つ刺しとお得感がある。
――小粒の五つ刺しのおだんごは、安産子育てと子孫繁栄を祈願する意味をこめております。

「羽二重団子」は1819(文政2)年創業。
前記事でも触れている雑司が谷ゆかりの夏目漱石など文化人に愛されていたことでも知られる。
日暮里の本店のイートインメニューには漱石セット(焼き1本・漱石もなか1個)をはじめ、(正岡)子規セット(焼き1本・あん3本)、(岡倉)天心セット(焼き2本・冷酒グラス)などが。
うぅ… 行ってみたい!

――「行きませう。上野にしますか。芋坂へ行って團子を食いましょうか。先生あすこの團子を食ったことがありますか。奥さん一辺行って食って御覧。柔らかくて安いです。酒も飲ませます。」と例によって秩序のない駄辯を揮っているうちに主人はもう帽子を被って沓脱へ下りる。
吾輩は又少々休養を要する。主人と多々良君が上野公園でどんな真似をして、芋坂で團子を幾皿食ったかその辺の逸事は探偵の必要もなし、又尾行する勇気もないからずっと略してその間休養せんければ成らん。
(夏目漱石『吾輩は猫である』より)

[DATA]
おせんだんご
東京都豊島区雑司が谷3-15-20 鬼子母神堂 大黒堂

[Today's recommendation]

https://youtu.be/KKdOGSi4bKo


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