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ハケの地学と民俗学と、おだんごと 【ハケの茶屋】

2022.05.22

 前記事の続きで、本文最後の写真に写っている「島田薬舗」(旧島田家住宅)に背中合わせの格好で配置されている一軒の農家。
パンフレットには「旧河内家住宅(ハケ上の農家)」とある。
“ハケ”とは何か。


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武蔵野台地南側は多摩川による浸食地形で、低いほうからざっくり多摩川沖積低地・立川段丘・武蔵野段丘の段々になっており、各段丘の縁端の段差数メートルの崖を武蔵野の方言で“ハケ”や“ママ”と呼ぶ。すなわち立川崖線や国分寺崖線がこれにあたる。


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旧河内家住宅は府中市内の浅間山近くにあった農家を移築復元したもので、“ハケ上”とは府中崖線(立川崖線)の上という意味である。


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ところが“ハケ上”の理由はそれだけではなかった。


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ハケ上からハケ下の農家を見下ろす


旧河内家住宅前からもう一軒の農家が見える。
茅葺屋根を見下ろすような形で、すなわちここに数メートルの高低差がある。
なんと、ここにハケを造ってしまったというのだ。


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ハケ下の湧水も再現


――敷地内の復元建物のうち、旧河内家住宅が養蚕の盛んだった明治~大正頃のハケ上の畑作農家を再現したのに対し、旧越智家住宅は創建時を想定した復元がなされました。また、現存していた最古の茅葺民家であるということよりも、水田稲作を営んでいたハケ下の農家を象徴する存在であることが重視されたようです。そのため郷土の森敷地内に段丘を人工的につくり、多摩川の旧堤防を利用しながら、高低差のあるハケ上とハケ下を再現し、旧越智家住宅はハケ下に復元されました。(府中市郷土の森博物館だより al museo、No.139、p2、2022.3)


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“ハケ下の農家”旧越智家住宅


多摩地域における適地適作とそれに伴う生活様式の地域差を“展示”するため、崖線を造成してその下に湧水を流し、上下それぞれの特徴を備えた農家を移築再現――その“学芸員魂”には敬服するしかない。


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ハケ下には水車小屋

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ハケ上にはまいまいず井戸も再現されている


旧河内家住宅の隣のお休み処、その名も「ハケの茶屋」でひと休み。


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ハケの上下を結ぶ階段のそばという好ロケーションで、木漏れ日とハケ下の水音が気持ちいい。
ちなみに上の栞に記述のある小説『武蔵野夫人』の舞台とされる「はけの森美術館」(小金井市中町)にもカフェがあり、いつか入ってみたいと思っている。


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フードメニュー、ホットドリンク、ソフトアイスのほか、オリジナルのお土産品も。


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「こちらの梅園でとれた梅で作ったものです」と売店のおねえさん。
博物館には広大な梅園があり、梅干し、梅あめ、梅ジャム、梅ドリンク… と梅製品が並ぶ。


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お盆も梅の花を模したものというさりげない凝り方。


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ハケ上だんご1本と、梅こぶ茶、おしるこ。


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なんのことはない、粉末をポットのお湯で溶いたものが、このシチュエーションでいただくと体に染みる。
だんごの香ばしさとやわらかさも特筆しておきたい。

このあと広い施設内をぐるっと回って、お昼ごはんに。

(さらにつづく


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[DATA]
ハケの茶屋
東京都府中市南町6-32 府中市郷土の森博物館内
http://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/about/1000090/1000576.html





[Today's recommendation]

wachat220522-22.jpg




https://youtu.be/H-nHFOGR0LM


https://youtu.be/FP_5-ARMtjE



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こういう都市公園っぽい場所もある


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