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しっぽり飲みたい 【本むら庵】

2021.09.12

 昭和の終わりにラーメンブームの震源地として全国にその名をとどろかせた荻窪だが、同時に“そばの街”という位置づけでもあったらしい。
当時、荻窪のそば屋で入ったことがあるのはタウンセブンのテナントでデパート食堂然として入りやすかった「荻窪やぶ」くらいだが、もう1店、僕でも名前を知っていたという有名どころ「本むら庵」。創業1924(大正 13)年の老舗の風格が漂い、若造には近寄り難いものがあった。


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その「本むら庵」の暖簾分けのお店が所沢にある。これはぜひ入らなければ… と思いつつ、はや十数年。ちょっとしたなりゆきでようやくその機会が訪れたという話。


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ところで、「本むら庵」という名のそば屋に入るのは、これが初めてというわけじゃない。荻窪本店は六本木に支店を出しており(現「HONMURA AN」)、六本木の会社に勤めていたころ何度か入っている。
週休2日が標準となりつつあった時代、その会社の経営者は社員を休ませるのは損と考えるような吝嗇家で、土曜も出勤はもちろん半ドンですらなかった。で、社員の一部(わしとか)は昼ごはんに出るとき適当な行き先→NR(No Return)と書いて独自に半ドンとしていたんだが、そんなときにぴったりだったのが「本むら庵」。半ドンの土曜のお昼といえば、ビールでしょ ヾ(・ω・o) ォィォィ


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という美しい思い出(笑)から、興の赴くままに天ぷらにビールといきたいところだが、もちろん酒類提供NG。天ざるも2000円(+税)と、なりゆきで払うにはちと高い。
注文は、おろしそば980円と鴨せいろ1450円に。


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浦和所沢バイパス沿いということもあってロードサイド型ファミレスのようなつくりを想像していたが、古民家リノベ型の非常に趣のあるお店なのであった。
しっぽり飲むのにピッタリの条件だけに、いよいよ惜しい。


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そばはエッジの効いた細打ちで、パツパツの食感が心地よい。
香りもまあまあ立つ。


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ただ、細いだけに切れやすいのか短くなっているものも多く、後半になるとズズッというわけにいかずもやもやする。
ときどきそういうおそば屋さんがあるが、評価的にどうなのか気になっている。


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細い青ネギとたくさん入った厚切りの鴨肉で、意外とボリュームのある鴨せいろ。


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ぶっかけタイプのおろしそばは、細かいことを気にせず楽しめるのでよい。
たっぷりのおろし、花かつお、のり、ねぎと、本わさび。


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思い出探しは脳の若返りにつながるらしいので。


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[DATA]
本むら庵
埼玉県所沢市宮本町1-17-26





[Today's recommendation]

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https://youtu.be/ljvTwbxrylc



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すごいすじ雲


夏の滋味を味わう郷土食 【たつみそば】

2021.07.04

 梅雨とはいえ東京地方でこう雨の日が続くのは珍しいことじゃないかと思って調べてみると、過去には16日連続降水という記録がある。
過去というか、去年の7月。
もう忘れてるし ウーム… (〃 ̄ω ̄〃ゞ

自転車乗りにはつらい季節だが、去年はともかく、昔、雨降りにどうしていたかというと、電車で街に遊びに行っていた。吉祥寺とか新宿とか。そんな場所もありましたっけ…。


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日曜日だし車で出かけることに。
昨日のアド街の影響か、視線はおのずと所沢方向を向く。
地図でいろいろ調べたところ、ピンときたのが「食の駅 所沢店」。農産物直売所の大きいのらしく、先月行って満足度の高かった狭山市の「あぐれっしゅげんき村」のようなアグリツーリズモ的要素が期待される。


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「食の駅」到着が12時20分前。
こういう場合、当然昼ごはんを兼ねているわけだが、併設されている「レストラン 彩乃菜宴」は長期休業中であった。
ささっと買い物をして施設をあとに。


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ほかにそのあたりで思い付く食事処といえば、でっかいそば屋かなぁ。
ということで、新所沢方面へ。


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川越所沢線から分かれて新所沢跨道橋へ向かう交通の要衝の三差路に立地する「たつみそば」。
駐車場26台、座席数150席の郊外型大箱そば店である。


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大勢の女性店員を取り仕切る大女将風みずから席を案内。
「座敷にします? テーブルでもどちらでも」と聞かれ、いや、普通にテーブルでいいけど… と広い店内中央付近のテーブル席に座って奥を見やると、座敷席の向こうに日本庭園風の中庭がある。


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それでまず「座敷にします?」だったのね。失敗失敗 「( ̄ω ̄;)


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入り口でチェックしてあった所沢名物 糧うどんと日替わり定食(たつみ定食)を注文。


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店構えからある程度予想されることだが、駐車場に礼服のグループがいたりと、こちらは会食需要が多そう。
したがって、客層の多くの部分を高齢者を含む家族連れが占める。


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提供時間はわりと速い。


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糧うどんのつけ汁は予想していた武蔵野風の肉汁ではなく、ゴマだれ。
ゴマみそにキュウリを浮かべたいわゆる冷や汁である。


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埼玉県出身の相方によれば、夏場はゴマだれ冷や汁のうどんをよく食べていたというので、これはまさしくこのあたりの郷土食であろう。


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うどんはツルッとした上品な中細麺。
糧はナス、コマツナ、ベビーコーン、薬味はミョウガ。


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この場合、薬味はシソのほうがいいんじゃないかと思ったが、ミョウガがゴマだれに素晴らしくよく合う。甘辛絶妙なバランスのおいしい冷や汁をいっそう引き立てる。


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たつみ定食は、主菜・副菜がコロッケ、煮物、シューマイ、あえ物、温野菜。香物はダイコンのぬか漬け、みそ汁はナスと油揚げ。
ご飯は普通でいいですか? と聞かれたので、大盛りにもできるんだと思う。


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品数豊富なところがうれしく、大店ながら手作り感があってほっこりする。


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割烹風のわりにこういった比較的質素なメニューも用意されているのは好印象。夏野菜がふんだんに使われ、こっちのほうがむしろアグリツーリズモ的だったり。
カウンター席もあって意外に使い勝手がよく、接客も行き届いた良店だと思う。


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[DATA]
たつみそば
埼玉県所沢市中新井1-10-1
http://www.tatsumisoba.com/





[Today's recommendation]

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https://youtu.be/b5FTQVdEsKA


糧に込められたおもてなしの心 【天王前 友季亭】

2018.07.14

 武蔵野うどんとは東京都多摩地区~埼玉県南西部、すなわち旧武蔵国の多摩郡~入間郡に伝わるうどん。
ここ武蔵野台地は、かつての多摩川扇状地の上に火山灰が降り積もった高地であるため(関東ローム層)、土壌の透水性が高く、水田耕作に向かない反面、昔から良質な小麦の生産が盛んであった。農家では盆や正月、冠婚葬祭の人寄せなどに畑で収穫した地粉でうどんを打つ習慣があった。


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このあたりではいまも小麦栽培が盛ん(東久留米市南町)


武蔵野うどんという呼称は伝統的なものではなく、武蔵野台地エリアで食されるうどんの総称として比較的最近、そう呼ばれるようになったと思われる。
実際、いまも地域ごとに「村山うどん」「武州うどん」「小平糧うどん」「純手打ちうどん」「糧うどん」などと称されることもある。


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小平ふるさと村 旧神山家住宅主屋


ここで、“糧うどん”の“糧(かて)”とは何か?

――「かてうどん」は、江戸時代から武蔵村山(村山村、中藤村、三ツ木村)および周辺で食べられていた伝統食です。村山うどんに付いている「かて(糧)」とは茹でた季節の地場野菜などをうどんに添えたものです。 ~ “かて”は長ねぎや茗荷、生姜などの薬味とは異なります。村山うどんの会HPより)
――糧うどんは、コシのある冷たい盛りうどんを、温かい醤油味のつけ汁でいただきますが、旬の野菜が添えられているのが特徴。糧うどんの「糧」とは、うどんに添えて食べる旬の野菜のことで、ホウレンソウ、ナス、千切りにした大根などを茹でたものです。「糧」はネギやゴマなどの薬味ではなく、今の言葉でいえば、“トッピング(具)”という感じでしょうか。(こだいら観光まちづくり協会「フラッとNAVI 小平にこないか?」


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糧いろいろ:左上から、「田舎屋」「関根屋」「宅部うどん」「小島屋」「神明庵 甚五郎」「古奈家」


糧うどんに初めて出会ったのは20年ほど前、所沢市久米のうどん屋「あづまや」で。
武蔵野うどんというものを認識していなかったころのことで、たまたま入ったうどん屋で頼んだつけ汁のうどんには、ゆでた青菜や大根が添えてあった。


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「あづまや」跡


それは自分には意外な具材だったが、相方は「実家のうどんの食べ方と同じ」と言う。
相方の実家は、うどんどころ埼玉県加須に近い。
同じような食文化が広範に広がっていることに興味をひかれ、以降、近くのうどん屋を巡りだしたのだ。


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「あづまや」は10数年前に代替わりし、近所に別名のそば・うどん店を開店。
その情報を目にして、何度か探してみたが一向に見つからず、自分の中ではお店を畳んだものと片づけていたが、つい最近、気まぐれに柳瀬川沿い勢揃橋北側の住宅地に入り込んだ際、不意にそのお店「天王前 友季亭」が出現した。
車道が行き止まりになるそのエリアのいちばん奥まった場所にあった。


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いまは表通りからわかりやすい案内がある(あとで気づいた)


こんな間近に突然歴史があって実力も伴っていそうなお店が出現したのだから、放っておけるはずがない。
記録的猛暑ではあるが、川べりで涼しそうなイメージもあって、自転車で行ってみた。川べりも何も関係ない暑さだったけど(笑)。


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僕らが自転車で向かう場合、八国山の東を回り込んで松が丘の住宅街を向け、吾妻橋を渡り、そのまま柳瀬川左岸沿いの細道に入り(車両通行不能)、2回曲がると突然お店が出現する。


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これは裏からのアプローチで、あとで表通り側を見てみたら、「あづまや」店舗はまだ残っており、駐車場には「友季亭」看板もあって、あちこちにちゃんとわかりやすい案内が出ていた。
「友季亭」店舗前にも駐車場はあるがそこには住宅街の入り組んだ道を通るので、表通りの駐車場を使ったほうがよさそう。


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店内は、右手に2人テーブル7脚ほど、いろいろ組み合わせて使われている。左が小上がり2間。
ものすごく混んでいて、なんとか空いていた入ってすぐのテーブル席に通される。


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僕らの隣が年配女性2人組。その向こうは大家族2~3組で、同グループかな、かなりやかましい。
注文は、ここはやはり個人的原点である「あずまや」を継承する“かてもりうどん”875円。もう一品は、そばも気になるので“かも汁そば”1080円。


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まず、かてもりうどん。


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糧が豪華。キャベツ、にんじん、大根、なす、小松菜、山菜の水煮。
おまけのような糧ではなく、かてうどんの名前どおり主役のたたずまいである。


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薬味はねぎ、大根おろし、おろししょうが。ほかにウズラの卵と天かすが付く。
うどんは少し灰色がかったよじれ麺で、武蔵野系では細めで上品な感じ。しっかり締まった食感で、小麦の香りも立つ。


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そばも上品な細麺で、ぱつぱつした食感。甘めで濃厚なかも汁にはこの細麺では弱いかな…。
メニュー表を見直したら田舎そばというものがある。想像するに、挽きぐるみの太麺で…。かも汁はこっちじゃなかったかな?


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一方、普通のそばにも田舎そばにも“かてもり”がある。
お店としても、そこが原点なのかもしれない。


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武蔵野うどんはそもそも人寄せの際に振る舞われたおもてなしの料理。
品数の問題じゃないが、糧へのこだわりはそのまま素朴なもてなしの心の表れのようにも感じられる。


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[DATA]
天王前 友季亭(ゆうきてい)
埼玉県所沢市久米1636-3





[Today's recommendation]

Respighi, Tchaikovsky Alan Gilbert and the New York Philharmonic
『Respighi, Tchaikovsky』
Alan Gilbert and the New York Philharmonic

https://www.youtube.com/watch?v=bKFRXjv2Bjs



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◆ 猫写真はこちら


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