地場野菜と仕込み水が自慢の 【自然処 玉井屋】
2022.09.19
去年、福生市の「石川酒造」の蔵見学に行ったとき、歴史的建造物や設備類の展示から製品の試飲、土産物販売、飲食施設まで用意されていて、それはまさに工場見学、それも上級版の…! と思った。
普通の食品・飲料工場に比べ、酒蔵には歴史という付加価値があり、食事処では酒に合わせた和の高級志向を訴求できるわけで。
たとえば「中村屋 中華まんミュージアム」ではそうはいかないという意味で。

そんな“大人のテーマパーク”、近場でほかにないものか?
当時少し調べてみて、ヒットしたのが「晴雲酒造」だった。
蔵をリノベーションしてつくられた食事処を併設している点がポイント。

ということで、前記事の続きで晴雲酒造直営食事処「玉井屋」へ。

蔵の正面左手が前記事の売店、右手に「玉井屋」入り口がある。

くぐり戸を抜けると前庭アプローチで、右がギャラリー、左が食事処。

店内は、右にテーブル席、左に座敷席。
先客2組ほどとまだすいており、「お好きな席へ」ということで、座敷へ上がらせてもらう。

まさに“百年の歴史を感じるたたずまいの空間”(HP)

こちらの自慢は、地場野菜と仕込み水。
旬の食材を使った“花・月・雪”3種の御膳が用意されている。
花御膳と月御膳を注文。
前菜は両御膳共通で、セルフでとってくるシステム。
モロヘイヤとオクラのおかか和え、じゃがいもの煮物、いんげんの天ぷらの3品。
おかわり自由!

御膳には食前酒が付くが、やはりというか当然、頼んだのは1名分のみ。
その場でボトルからついでくれる。
「えーと、食前酒は奥さま…? ですよね」と店員さん。
「はい。悔しいから買って帰ります(笑)」
「ありがとうございます(笑)」

やはり共通の飛竜頭がまず出てくる。
“特製の飛竜頭旨出汁がけ。消泡剤不使用の地元産豆腐・大和芋・季節の野菜を合わせました”

以上の前菜・飛竜頭に、花御膳はとろろ飯・粕汁・香の物という内容。

月御膳はさらに“本日の主菜”とデザート(酒粕のブランマンジェ)が付くうえ、ご飯もとろろ飯か季節の炊き込みご飯が選択できる。

本日の主菜は3種類で、1.豚ロースの晴雲漬けを、ご飯は炊き込みご飯(栗の炊き込みご飯)を選ぶ。

酒粕の香りに包まれた豚ロースは、こうじの効果でとてもやわらかくうま味も豊か。
粕汁とともに、滋味深き“晴雲”の味わい。

今季初の栗ご飯。
この栗も地元のものか、感動的なほど大きく立派。

酒蔵ならではの食事のあとのスイーツは、なおも酒粕の香り豊かなブランマンジェ。
なめらかでちょうどよい甘さに完成度の高さを感じる。

和紙の街としてしか認知していなかった小川町だが、酒造りの街でもあると上書きされた。
ほかの蔵も気になるし、見るべきこと体験すべきことは、もっといろいろありそうだ。

「玉井屋」にはブロック塀のくぐり戸から直接も入ることもできる
[DATA]
自然処 玉井屋
埼玉県比企郡小川町大字大塚178-2
http://www.kumagaya.or.jp/~seiun/tamaiya/TOP.html
https://www.facebook.com/tamaiya2005/
[Today's recommendation]



https://youtu.be/221kvXa2_AA
去年、福生市の「石川酒造」の蔵見学に行ったとき、歴史的建造物や設備類の展示から製品の試飲、土産物販売、飲食施設まで用意されていて、それはまさに工場見学、それも上級版の…! と思った。
普通の食品・飲料工場に比べ、酒蔵には歴史という付加価値があり、食事処では酒に合わせた和の高級志向を訴求できるわけで。
たとえば「中村屋 中華まんミュージアム」ではそうはいかないという意味で。

そんな“大人のテーマパーク”、近場でほかにないものか?
当時少し調べてみて、ヒットしたのが「晴雲酒造」だった。
蔵をリノベーションしてつくられた食事処を併設している点がポイント。

ということで、前記事の続きで晴雲酒造直営食事処「玉井屋」へ。

蔵の正面左手が前記事の売店、右手に「玉井屋」入り口がある。

くぐり戸を抜けると前庭アプローチで、右がギャラリー、左が食事処。

店内は、右にテーブル席、左に座敷席。
先客2組ほどとまだすいており、「お好きな席へ」ということで、座敷へ上がらせてもらう。

まさに“百年の歴史を感じるたたずまいの空間”(HP)

こちらの自慢は、地場野菜と仕込み水。
旬の食材を使った“花・月・雪”3種の御膳が用意されている。
花御膳と月御膳を注文。
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前菜は両御膳共通で、セルフでとってくるシステム。
モロヘイヤとオクラのおかか和え、じゃがいもの煮物、いんげんの天ぷらの3品。
おかわり自由!

御膳には食前酒が付くが、やはりというか当然、頼んだのは1名分のみ。
その場でボトルからついでくれる。
「えーと、食前酒は奥さま…? ですよね」と店員さん。
「はい。悔しいから買って帰ります(笑)」
「ありがとうございます(笑)」

やはり共通の飛竜頭がまず出てくる。
“特製の飛竜頭旨出汁がけ。消泡剤不使用の地元産豆腐・大和芋・季節の野菜を合わせました”

以上の前菜・飛竜頭に、花御膳はとろろ飯・粕汁・香の物という内容。

月御膳はさらに“本日の主菜”とデザート(酒粕のブランマンジェ)が付くうえ、ご飯もとろろ飯か季節の炊き込みご飯が選択できる。

本日の主菜は3種類で、1.豚ロースの晴雲漬けを、ご飯は炊き込みご飯(栗の炊き込みご飯)を選ぶ。

酒粕の香りに包まれた豚ロースは、こうじの効果でとてもやわらかくうま味も豊か。
粕汁とともに、滋味深き“晴雲”の味わい。

今季初の栗ご飯。
この栗も地元のものか、感動的なほど大きく立派。

酒蔵ならではの食事のあとのスイーツは、なおも酒粕の香り豊かなブランマンジェ。
なめらかでちょうどよい甘さに完成度の高さを感じる。

和紙の街としてしか認知していなかった小川町だが、酒造りの街でもあると上書きされた。
ほかの蔵も気になるし、見るべきこと体験すべきことは、もっといろいろありそうだ。

「玉井屋」にはブロック塀のくぐり戸から直接も入ることもできる
[DATA]
自然処 玉井屋
埼玉県比企郡小川町大字大塚178-2


[Today's recommendation]



https://youtu.be/221kvXa2_AA
小京都の酒蔵と衰退商店街と 【晴雲酒造】
2022.09.19
小京都というと、“古い町並みや風情が京都に似ている、日本各地にある街の愛称・別称”(Wikipedia)というイメージで、“似ている”というあいまいな理由に基づく自称・他称が各地に自然発生しているものと思っていた。
実は小京都、認定制度によるブランディングだったらしい。
1985年、小京都と呼ばれる自治体の連携組織「全国京都会議」が結成され、以降、会議に加盟する自治体のみ“公式に”小京都を名乗ることができるようになっているらしい。
――ということを知ったのは“小京都・栃木”観光でもらってきた『小京都と京都ゆかりのまち』(発行:全国京都会議)というパンフレットを見て。
もちろん知財ではないので非加盟の“自称・小京都”も排除されるものではないが、パチもん扱いを免れないかもしれない。

全国京都会議には現在(2022年4月現在)、全国40市町、関東では古河(茨城県)、足利・栃木・佐野(栃木県)、嵐山・小川(埼玉県)の6市町が加盟している。
意外だったのが埼玉県小川町。秩父圏の比較的近場エリアである。
――1300年の歴史を誇る小川和紙をはじめ、酒造、建具、裏絹などの伝統産業で古くから栄え「武蔵の小京都」と呼ばれています。(『小京都と京都ゆかりのまち』より)
驚くことに酒蔵が3つも残っているという。
酒蔵めぐり好きでもあるし、白昼の死角的小京都・小川町、行ってみるしかないでしょう。

3つの酒蔵のうち今回選んだのは「晴雲酒造」。
併設の食事処「自然処 玉井屋」が偶然にも“行ってみたいお店リスト”に入っていたという。

「晴雲酒造」はメインストリート風の古い商店街(熊谷小川秩父線)沿いの街の中心部に位置する。

広い駐車場に車を止め、まず売店をのぞいてみる。

仕込み水の湧水井戸や試飲機のある凝ったつくりの店内。


うれしいことに試飲は無料で、相方は3種類試飲させてもらっていた。
もちろんお車の人は試飲できないが… (T_T) シクシク

買い物は決まったが要冷蔵の酒なので買うのは帰り際ということにして、先に「自然処 玉井屋」で食事をすることに(次回掲載)。
「おがわの自然酒 生酒」と9月9日発売の「晴雲ひやおろし」を買う
蔵の前の通りのひなびた様子が気になって、食事のあと少し歩いてみた。

ずっと立派な構えの店舗(遺構)が続き、繁栄の跡が見て取れ、正直言ってこれまでほとんど意識に上らなかった田舎町にいかなる歴史的背景があるのか、いやがうえにも気になった。
こういったところが“小京都”ゆえんか…。

熊谷小川秩父線

駅前通り(花水木通り)

3蔵の一つ「武蔵鶴酒造」

インテリアに名産品・細川紙(小川和紙)が使われているという小川町立図書館

小京都・小川の主要産業であった紙商の店舗
途中、道沿いの家の方と思われるメリヤス姿のおじいさんが「どちらから?」と。
観光客風とみて声をかけてきたようで、この街について語りたいことがあるようだ。
「いまはこんななっちゃったけど、昔はこの通り全部がお店だったんですよ。残ったのは『しまむら』と『ヤオコー』だけ(笑)」
そんな切ない記憶を追体験できる街並みが続くのである。
(つづく)

[DATA]
晴雲酒造
埼玉県比企郡小川町大字大塚178-2
http://www.kumagaya.or.jp/~seiun/index.htm
https://www.facebook.com/seiun1902/
[Today's recommendation]



https://youtu.be/GP408ILt8cs


次号予告
小京都というと、“古い町並みや風情が京都に似ている、日本各地にある街の愛称・別称”(Wikipedia)というイメージで、“似ている”というあいまいな理由に基づく自称・他称が各地に自然発生しているものと思っていた。
実は小京都、認定制度によるブランディングだったらしい。
1985年、小京都と呼ばれる自治体の連携組織「全国京都会議」が結成され、以降、会議に加盟する自治体のみ“公式に”小京都を名乗ることができるようになっているらしい。
――ということを知ったのは“小京都・栃木”観光でもらってきた『小京都と京都ゆかりのまち』(発行:全国京都会議)というパンフレットを見て。
もちろん知財ではないので非加盟の“自称・小京都”も排除されるものではないが、パチもん扱いを免れないかもしれない。

全国京都会議には現在(2022年4月現在)、全国40市町、関東では古河(茨城県)、足利・栃木・佐野(栃木県)、嵐山・小川(埼玉県)の6市町が加盟している。
意外だったのが埼玉県小川町。秩父圏の比較的近場エリアである。
――1300年の歴史を誇る小川和紙をはじめ、酒造、建具、裏絹などの伝統産業で古くから栄え「武蔵の小京都」と呼ばれています。(『小京都と京都ゆかりのまち』より)
驚くことに酒蔵が3つも残っているという。
酒蔵めぐり好きでもあるし、白昼の死角的小京都・小川町、行ってみるしかないでしょう。

3つの酒蔵のうち今回選んだのは「晴雲酒造」。
併設の食事処「自然処 玉井屋」が偶然にも“行ってみたいお店リスト”に入っていたという。

「晴雲酒造」はメインストリート風の古い商店街(熊谷小川秩父線)沿いの街の中心部に位置する。

広い駐車場に車を止め、まず売店をのぞいてみる。

仕込み水の湧水井戸や試飲機のある凝ったつくりの店内。


うれしいことに試飲は無料で、相方は3種類試飲させてもらっていた。
もちろんお車の人は試飲できないが… (T_T) シクシク

買い物は決まったが要冷蔵の酒なので買うのは帰り際ということにして、先に「自然処 玉井屋」で食事をすることに(次回掲載)。
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蔵の前の通りのひなびた様子が気になって、食事のあと少し歩いてみた。

ずっと立派な構えの店舗(遺構)が続き、繁栄の跡が見て取れ、正直言ってこれまでほとんど意識に上らなかった田舎町にいかなる歴史的背景があるのか、いやがうえにも気になった。
こういったところが“小京都”ゆえんか…。

熊谷小川秩父線

駅前通り(花水木通り)

3蔵の一つ「武蔵鶴酒造」

インテリアに名産品・細川紙(小川和紙)が使われているという小川町立図書館

小京都・小川の主要産業であった紙商の店舗
途中、道沿いの家の方と思われるメリヤス姿のおじいさんが「どちらから?」と。
観光客風とみて声をかけてきたようで、この街について語りたいことがあるようだ。
「いまはこんななっちゃったけど、昔はこの通り全部がお店だったんですよ。残ったのは『しまむら』と『ヤオコー』だけ(笑)」
そんな切ない記憶を追体験できる街並みが続くのである。
(つづく)

[DATA]
晴雲酒造
埼玉県比企郡小川町大字大塚178-2


[Today's recommendation]



https://youtu.be/GP408ILt8cs


次号予告