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武蔵野うどん究極形 【小平うどん 小平本店】

2022.10.01

 店舗正面が駐車スペースになっていて外観写真が撮りづらい店というのがある。
ロードサイド型に多く、最近車で出掛ける機会が増えているためか、そういうお店によく当たる。
思うように写真が撮れず、もやもや… となる。

新小金井街道沿いの「小平うどん」がまさにそういうつくりで、人気店だけに昼めし時以外でも常に店舗前にはズラッと車が並んでいる。
以前、午後の遅い時間に入ろうと思ったことがあるが、行ってみてその車の多さにビビッて退散した。


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10:05


朝10時すぎに自転車で通りかかると、車が1台も止まっていない。
そりゃ、開店前だろうから。

これなら店舗全体を車に邪魔されることなく写真に収めることができる。
いつか食べることもあるだろうから、そのとき使えるかもしれない… と2~3枚、外観写真を撮っておいた。

まさかその日のうちに役立つとは思わなかった。


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14:50


いろいろあって調布~吉祥寺とさまよいランチ難民に陥りかけたとき、朝に「小平うどん」の写真を撮っておいたことを思い出し、セレンディピティのようなものを感じたわけだ。


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14:50来店で、駐車場はやはりいっぱいだ。
しかし高度にシステム化されているもようで客さばきがスムーズである。

外の券売機で食券を買っている間に、入り口に待機している店員さんに人数を確認され、入店と同時に「あちらへ」と誘導された席にはすでにお冷が置かれているといった具合。


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うどんは肉汁うどん、カレーうどん、胡麻味噌担々麺の3種類で、それぞれ300g、400g、600g、800g、1kgとある(1kgは肉汁・カレーのみ)
ここは基本の肉汁うどんであろう。
量は時間が遅いこともあって300gでよさそうだが、なんか割高感があって、400gをポチッとな。


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肉汁うどん、ものの1~2分で来る。
この時間でも次々お客がやって来ているので、そういう見込みでじゃんじゃんゆでているものと思われる。


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うわさに名高い「小平うどん」のうどん、極太・色黒のインパクトあるビジュアルである。


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地粉の香り・甘味が強く、ガツンと強いコシ。
極太なので1本ずつすする。すするというか、パクつく。
モソモソ咀嚼することでうどんのうまさをかみしめられ、武蔵野うどんを食する幸せに浸ることができる。


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肉汁は豚肉たっぷり。
汁の具は肉のみで、それに斜め切りの生ネギがトッピングされた形。
鮮烈なネギの風味が甘めのつゆをキリッと引き締める。


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麺・汁ともレベルの高い究極の武蔵野うどんといえよう。


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[DATA]
小平うどん 小平本店
東京都小平市回田町300-2
http://www.k-udon.jp/





[Today's recommendation]

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https://youtu.be/mMfxI3r_LyA



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街はどこもすごい人出だった


ハレの日のごちそう感 【うどん弥 根古坂】

2019.11.27

 小平市の「うどん弥 根古坂」は、武蔵野うどんのお店としてたいへん好印象を抱いているにもかかわらず、このブログを始めて3年近く、一度も行っていない。そう気安いお店というわけでもないからだ。


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場所は青梅街道・小川町交差点の南120m。いわゆる自宅開放型のお店である。
自宅といってもリビングやキッチンに通されるわけではなくちゃんと専用のうどん部屋が造り付けてあるが、スペースが小さく、店主との距離感が近い。
その距離感が、気安くない。


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断っておくが、こちらのご主人はたいへん好人物であり、おそらく名士でありながら人を和ませる雰囲気を持ち、話術にも長けている。
ただ、そういうのに遠慮を感じてしまうという、ひとえに当方の問題であり、いい悪いではなく単純に得手不得手の話だ。


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大きいお屋敷の門戸をくぐる。“うどん屋”ではなく“うどん弥”としているのは、ご主人のお名前の文字をとっていることが、表札を見てわかる。
“根古坂(ねっこざか)”とはこのあたりの古い地名で、近くの児童公園に名前が残っている。
自宅玄関ではなく、左奥の暖簾のかかったところがお店入り口。


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2時半近くになってしまい、たしかここは昼の遅い時間までやっていたはず… と来てみたわけだが、営業時間11:30~14:30と書いてあり、ぎりぎりセーフ。
驚くことに、その時間で先客が2人。ご主人を含め3人それぞれ緩い地元付き合いというような関係性の感じられる会話が交わされている。


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カウンター5席と、学校机のような席が2つ。
うどんの量、温・冷、肉のありなし、ゆで時間などていねいな説明を受け、糧(かて)うどん(つゆ温・麺冷)600円と、ちくわの天ぷら100円を注文。


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先客の1人はまもなく食べ終えて出ていったが、もう1人のうどんがぜんぜん減らないと思って見てみると、熱燗ひっかけてる。うどんをアテに(笑)。

そこへ閉店ギリギリで年配女性2人組が来店。
おばちゃんだけに、ごく自然に店主との会話が始まる。


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「糧うどんっていうんですか?」とおばさまA。
「キャベツとニンジンが糧です」とご主人。「ゆでた野菜のことをいうんです」
「でも酒のつまみのこと、アテっていうわよね」とおばさまB。
「いやいや、これはカテです、カテ σ(^_^;)」と、隣のおっさん。

笑わせていただきました ヾ(^o^;)


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注文から配膳まで約17分を要した。
うどんは非常にコシが強く、地粉のよい香りがする。いわゆる“耳”がのっているのもうれしい。つゆは甘すぎず、ドンピシャの好みの味だ。


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糧はさっと火を通した程度でシャキシャキの食感が残る。薬味はネギとおろしショウガ。小口ネギというのは武蔵野系では珍しい。
糧のほかに小鉢が2つも付く。懐かしい感じの菜っ葉のおひたしとコンニャクとレンコンの煮物。


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武蔵野うどん(糧うどん)はハレの日のたべものとよくいわれるが、そんなごちそう感いっぱいな一膳。


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前に入ったときに伺った話では、ご主人は栄養専門学校で先生をされていた方で、地元の食文化を残したくてうどん屋を始めたとのこと。
あと、“東村山しあわせ大使”の女優・竹下景子さんとは多摩みどり幼稚園の同年とか。みどり幼稚園はもともと小川にあり、ブリヂストンの工場建設に伴って野口橋近くの現在地に移転したそうだ。

そんないろんなお話を伺いながらおいしいうどんをいただいて、ほっこりとなるお店である。


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都市計画道路3・2・8号線建設予定地の根古坂児童公園。「うどん弥 根古坂」は左前方に位置する


[DATA]
うどん弥 根古坂(ねっこざか)
東京都小平市小川町1-1104-1





[Today's recommendation]

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https://youtu.be/yTrQk9FrTfs


自宅開放型の創作うどん 【うどん屋 武】

2018.08.12

 スタンプラリーが好き。
食べ物からんでるやつ \( ̄▽ ̄; )

小平市主催の「めぐりん小平」というスタンプラリーが行われているらしいという情報をつかんだ。Webサイトで調べても要領を得ないので、スタンプ台紙配布場所に行ったほうが早いんじゃないの? ということに。
で、いちばん行きやすい「多摩六都科学館」に行ってみたら台紙を切らしている。
科学館自体は夏休みで大盛況ではあるが、スタンプラリーもそんな人気なのか…?
イベントHPを調べ直し、最寄りの施設「平櫛田中彫刻美術館」に移動。


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多摩六都科学館(左)、平櫛田中彫刻美術館(右)。スタンプラリー「めぐりん小平」の模様は続報予定


で、そこからさっそく少し巡ってみたわけだが、結果から申し上げれば無人野菜スタンドとかにも台紙はいっぱい置いてある。広範に探し回ったわしらの行動は何だったのか?
そういうところを含めて、役所のやることはやっぱり要領を得ないのである。


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平櫛田中彫刻美術館からスタートして、とりあえず昼ごはんの時間なので、ラリー参加の飲食店がいくつかある一橋学園駅周辺の商店街に向かった。
が、自転車を走らせてすぐ、“うどん”ののぼり。
よっぽど腹をすかせていたとみえる相方、「ここでいい」と。


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「うどん屋 武」は、閑静な住宅街にある普通の民家、いわゆる自宅開放型である(スタンプラリーとは関係ないです)
一橋学園駅からのアクセスは、線路と平行する道(市役所通り)を南へ、交番脇の変則T字路を右折、その太い道(一橋通り)を突き当りの大学正門まで進み、右折してすぐ。


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自宅カフェはよく見かけるが、この北多摩北部エリアでそれに次いで多いと思われるのが、うどん屋。
武蔵野の地は小麦の栽培が盛んで、農家では盆や正月、冠婚葬祭などに手打ちうどんを振る舞った。自宅で主婦がうどんを打つ習慣の名残として、自宅型のうどん屋が多いというわけである。
ただし、この「うどん屋 武」はご主人が香川県で勉強したとのことで、武蔵野ではなく讃岐系のうどんを出す。


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普通の民家の普通の玄関でスリッパに履き替え、廊下を奥へ。突き当りの開け放たれたドアの向こうは普通の… まあLDK。カウンターを挟んでキッチンとフローリングのスペース。その20畳ほどのリビングダイニングが食堂となっている。
席数は、テーブル2人掛け×4卓、4人掛け×1卓、および カウンター3席。
スタッフはご夫婦かな? とても感じのよい壮年の男女(Twitterプロフィールには、じじ・ばば×2とある)。


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先客はなく、4人掛けテーブルに通され品書きを拝見。
Twitterに「東京都小平市の創作うどん屋さん」とあるように、ユニークなメニューが並ぶ。
たとえば「カルボうどん」は2種類のチーズと細切りベーコン入り。
「香り高いパルミジャーノレッジャーノとトローリとろけるチェダーチーズと卵黄をよくかき混ぜてから食べてください」といった具合。

注文は、ぶっかけ生姜焼きうどん880円と、もう一品はオーソドックスに肉付けうどん700円に。


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壁に一橋大学アメフト部のポスターが張ってあるように、普段は学生客が多いもよう。
体育会仕様で、実はガッツリ系だ。うどんは普通盛りで450gとのこと。


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ぶっかけ生姜焼きうどんは、冷たいうどんの上に千切りキャベツ、豚しょうが焼き、半熟卵と順にのる。全体にオーロラソースがかかっているが、うどんつゆも別添。「上からぶっかけてお召し上がりください」と。


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たっぷりのしょうが焼きにもしっかり味が付いているが、キャベツと合わさり油っこさはない。全体にからめてうどんをすすれば、いろんな味が混然一体、幸せな気持ちになる。こういう食べ方でも強烈なコシのうどんは存在感抜群。


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肉付けうどんは、冷たいうどんを温かい汁で食べる。汁はかつおだしが効き、味付けは甘めで濃厚。
温かい汁に浸す分、麺の歯応えは緩み、食べやすくうどんそのものを味わえる。


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どちらもボリューム満点で、コスパでもチェーン系に負けてないんじゃないだろうか。


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デザートによく冷えたわらび餅が付いた


いろんなアレンジを受け止める強さ、質の高さが感じられるうどん。
Twitterリプライで“今後出してほしいうどんリクエスト”を受け付けており、おもしろい展開が見られそう。
とりあえず、カツカレーうどん希望かなぁ…(笑)。


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[DATA]
うどん屋 武(たけ)
東京都小平市学園西町1-24-11
https://twitter.com/udonya_take





[Today's recommendation]


https://youtu.be/oUXTkgungEA



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「めぐりん小平」参加施設「小平ふるさと村」


ハイレベルな麺、兄弟対決 【むぎきり】

2018.04.15

 1653年に築かれた玉川上水のうち、特に中流部(小平監視所より下流の開渠区間)は、古い樹木が残り、豊かな木立に覆われている箇所が多い。
その林下には貴重な植物が生育する。

このあたりではめったに見られないフデリンドウの自生地があり、もしかしたら… と行ってみたらちょうど見ごろだった。
希少植物には盗掘問題が付きまとうが、フデリンドウは2年草で花をつけた株は残らないので、掘り上げても意味がない。


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フデリンドウ(左) キンラン(右)


これまで知らなかったが、そのあたりはキンランが多かった。ほかにホウチャクソウやニリンソウなども見られる。ニリンソウは早春、キンランは連休明けのイメージなので、同時に咲いているのは変な感じ。今年のキンランは異常に早いのだ。
たいへん見栄えのする花ではあるが、キンランはラン菌と呼ばれる共生菌への依存度が高く、鉢上げはもちろん地植えでも栽培は不可能なので、掘り上げても意味がない。

基本的に植物の盗掘はよくないことだが、このように科学的根拠に基づいて意味のないことは、本当に意味がないので、やめましょう。


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お昼ごはんは一橋学園駅近くの人気うどん店「むぎきり」へ。


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翡翠麺で有名な「なにや」のお隣で、両店の店主がご兄弟というのは有名な話。
志垣太郎とご兄弟のスリーショット写真が張ってある。四半世紀の彼方の案件。


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客層は幅広く、右隣に3世代の家族連れ。僕らのすぐあとに入ったその人たちは、「なにや」が休みでスライドしてきたのだ。
注文を聞きに来たホール係のおばちゃん、「今日はイベントやってるからカレーはないの」と。隣が休みなのもそのイベントと関係あるのかな?


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ほかには、ウォーキングもしくは自転車と食べ歩きを絡めた感じの“通っぽい”中高年おやじ、など。武蔵野うどん人気店でよくあるパターンだ。


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麺ゆでは若き2代目。
ホールのおばちゃんはけっこう年季が入っていて、厨房にも同年代のおばちゃんの姿が認められる。
しかしこの空間に君臨しているのはどちらのおばちゃんでもなく、若いおねえさん。厨房もホールもコントロール下に置いて、おばちゃんの細かい動きまで取り仕切り、自らも適宜効果的に給仕に加わる。


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注文は、手打うどんの大もり730円と野菜天900円。「温かいのもできますが」と聞かれ、相方の野菜天を“かけ”に。
このあたりのうどん屋は、大盛りといったら本気で多いことがあるので迷ったが、たまたまお帰りの先客のお勘定がそのように聞こえてきたのでつられた。


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左隣の若い男性のもとにサービスセットなるものが来て、のぞくと田楽が付いている。
「なにや」同様、こちらも物販コーナーがあって、ちょうど田楽みそがおいしそうと話していたところだった。
そのセットは気づかなかったな… とモヤモヤする。


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出てきた大もりうどん、やっぱり量がすごかった。


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捏ね鉢を小さくしたような器にこんもりと。
食べ終わるあたりで気づいたが、底にすのこもなく、見たまんま、ごまかしなしにすべてうどんだった…。


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野菜天は、れんこん、いんげん、アスパラ、にんじん、かぼちゃ、しいたけ。


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ほかのお客さんのオーダー状況を見ると、エビ天を含む盛り合わせがよく出ている。エビ天が大きくおいしそうだ。
だけど、武蔵野系のうどんには、根菜を主体にした天ぷらがいちばんだと思う。
水できっぱり締めてある強烈なコシの“もり”もいいが、“かけ”にすることで温まったうどんは香りがよく立つ。


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お店を出ると、なぜか支度中の札になっている。
よく見ると、「麺売り切れのため終了いたしました」と。
時刻は12時46分。
まさに人気店の実力を見た


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[DATA]
むぎきり
東京都小平市学園西町1-26-26





[Today's recommendation]


https://www.youtube.com/watch?v=jUTORC4eoGc



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農家のはなれスタイル 【よしふじ】

2017.07.16

 うどんどころ小平市内には人気うどん店も多く、特にいわゆる武蔵野うどんは老舗・名店がしのぎを削る。
その中でもトップクラスの人気を誇るのが「よしふじ」。


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最寄りの小平駅からでも15分は歩くので車で行くのが一般的だが、これがわかりにくい。僕は最初にこの店をめざしたとき、自転車にもかかわらず見事にスルーしてしまった。
東京街道と新小金井街道の交差点のすぐ西。奥まっていて見つけにくいが、通りにうどんののぼりが出ているのでそのへんを南に折れればなんとかなる、という感じでいけるとは思うが。


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本日は1時ちょっと前で店内はかなりの混雑ぶり。テーブル4つは埋まっており、小上がりに3つある6人用座卓のうち真ん中の席を7~8名で囲んでいる。ここの局地的過密状態が、実際以上に店全体の混雑ぶりを印象づけている。
もう2つの座卓は空いているので、奥のほうに席をとる。

それで、われわれの隣ということになるが、この過密団体客は3世代家族連れのよう。お母さんと娘さん2人、そのどちらかの連れ合い、孫3~4人といった構成で、夏休みできょうだいが集まった感じ。東京の新盆と関係あるんだろうか?
ほかにもテーブル席に2組、小さい子ども連れの家族客がいる。


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壁にはFC東京の選手のサイン色紙がたくさん貼ってある。そういえば練習場はすぐそこだが、営業時間が11:00~14:30なのでサッカー選手も昼に来るのだろう。
お昼の田舎うどん。夜の六本木のイメージのプロ野球選手とは大違いの健全さ。


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いちばん忙しいタイミングのようでお店の人は相当バタバタしている。ホール係はひょろっとした陽気な眼鏡のおばちゃんとやや若いおねえさんで、なんとかおばちゃんをつかまえて注文する。
田舎糧うどん630円(僕)、ぶっかけおろしうどん860円(妻)、野菜天ぷら(5品)220円。


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ほかに客層で特徴的なのが、ファッションに気を使っていそうな若者が散見されること。その手の人たちと遭遇することは少なく、たとえば若い人ということならくたびれたラーメン屋でもたまに見かけるが、そういう場合、若いけれどもおしゃれではない。
これは店の人気のバロメーターとなる。そういうおしゃれな人たちの背後には、情報化、ビッグデータ、IoTといった用語が見え隠れしており、そういう系統の客が出現するのはその競争を制した証しであり、そういう店こそがランキング上位に食い込むのである。指示詞だらけで恐縮だが。


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提供までにけっこう時間がかかっており、その間、少しずつお客さんが出ていって、店内が落ち着いてきた。隣の家族も帰り支度を始めているが、同時に真ん中らへんのテーブルの家族連れも席を立ち、なんだか入り乱れてわけがわからなくなった。と思ったらそれらは同一団体の別動隊なのであった。
大家族が去って閑散とした店の隅っこにポツンと取り残されたわしら2人。この位置では配膳も手間だろうからとテーブル席に移らせてもらう。

 

さて、延々と前振りが続いてなかなか本題に入らないようなじれったい展開で申し訳ないんだが、実際なかなか本題に入らないのである。
うどんが来ない。
席を移ってからもしばらく待って、お冷やはこれで3杯目。さすがに不安になって、でもなおしばらく待たされ、もう1杯お冷やをつぎに立とうかというころに、ようやくうどんがやって来る。
注文から27分。


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まず糧うどん。
麺の量は多い。汁もたっぷりで、具は刻み油揚げ。糧は小松菜とゆでた細切り大根。
うどんは素朴に小麦が香り、コシはあるが硬すぎず優しい食感。誰にでも抵抗なく食べられるうどんで、家族連れが多いのもうなずける。


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で、麺は申し分ないが、汁が僕の好みでは甘すぎる。どれぐらい甘いかというと、たっぷり汁を吸った具の油揚げでおいなりさんを作ったとしたら「京樽」くらいの甘さになるんじゃないかというくらい。
まあ、飾らない田舎味というコンセプトだと思うので、それはそれで大事なことだが。


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ぶっかけも麺量は同程度。大根おろしにちくわの天ぷらが付いて、薬味はつけ汁の白ネギと違って小口青ネギと、とてもバランスがよい。
別に頼んだ野菜天ぷらは、カボチャ、サツマイモ、ニンジン、レンコン、シソの5品。


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農家のはなれ・蔵のリノベタイプで比較的新しく、店内はきれいで手入れが行き届いている。でもどこか年季のようなものを感じるのは、おばちゃんたちのオペレーションに負うところが大きい。
ビールを頼んだ客に「はい、アサヒ。よーく冷えてますよ」と提供する。
店の歴史を補って余りある、そんな“人の歴史”を垣間見る思いである。


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[DATA]
よしふじ
東京都小平市大沼町1-116





[Today's recommendation]


https://youtu.be/knF5Nis1K3c



 ○○大福…?
2017.07.16 ならは/東京都小金井市本町1-10-5

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ピオーネぶどう大福210円、さくらんぼ大福200円、水羊羹180円、水まんじゅう(杏仁)130円


守り伝える武蔵野うどん 【指田屋 水道道路店】

2017.07.07

 小平は、東村山や武蔵村山などと並ぶ武蔵野うどんの本場である。
この一帯は水持ちの悪い土地で稲作には向かず、小麦づくりが盛んで、寄り合いや人寄せのときにうどんを打って出す習慣があった。そうした流れをくむのが、いわゆる武蔵野うどんである。
市内天神町にある“小平ふるさと村”では、“武蔵野手打ちうどん保存普及会”の運用による「小平糧うどん」を土日祝日に出店している。武蔵野手打ちうどん保存普及会の活動の趣旨は、地粉で手打ちうどんを打つ習慣を武蔵野の貴重な食文化として保存していこうというもの。


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小平市内には比較的新しい人気うどん店が多いが、老舗格として名前が挙がるのが「指田屋」。2店舗のうち有名な青梅街道店は去年閉店し、いまは指田屋といえばこの水道道路店を指す。
小平駅から徒歩約10分。多摩湖自転車道沿いにあるので、夏でも涼しい自転車道の木陰道を快適に歩いていける。
駐車場の真ん中のような位置にポツンと建っているような、やや腰の据わりが悪そうな印象を与えるが、どこかお伽話的な非現実感も漂うこぢんまりしたお店だ。


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店内は、右手が調理場、左の食堂には大テーブルが1つ。これは真ん中が囲炉裏になっている四角いテーブルというかロの字形カウンターというか、ぐるりと12人ほど座れるようになっている。囲炉裏には炭が置かれ、自在鉤に大きな鉄瓶が掛けられているが、使われてはいないようだ。
壁には農具やわら製品などが飾られ、店内は囲炉裏を中心に民芸調で統一されているが、よく見ると棚にはかわいい系動物のぬいぐるみもちらほら。


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肉汁付けうどん620円を注文。
入ってまもなく先客のおばさん2人組が出て、客は僕1人に。
お店のおばちゃんに何げなく「向こうのお店(青梅街道店)はもうやってないんですよね」と声を掛けたら、「いまは釣り堀をやってるの」と意外な答え。あんなところに釣り堀できたっけ…? と一瞬混乱したが、そうではなく、店主は店を引き払って飯能で釣り堀を始めたとのこと。横の壁にそちらの案内が張ってある。

「たぬきも持っていったの」とおばちゃん。「あ、ここだ、というぐらいに目立ってる(笑)」
青梅街道店は店頭の大きな信楽焼のたぬきが有名だった。


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この独特のホンワカした雰囲気のおばちゃん、実はかなりの話好きだ。僕が食べてる間、ずっといろんなことをしゃべってる。

――釣り堀でいずれはうどんを出すようになるんじゃないか、飯能にも武州うどんという武蔵野タイプのうどんがあるらしい、小平ではうどんに糧を添える食べ方が多い、武蔵野うどんといえば肉汁うどんが代表……。

思い返すと、いろんなことといってもすべてうどんの話題なのだ。
根っからのうどん好きという感じで、研究も重ねていそうだ。


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話は面白いんだが、こっちは食事に集中できない。でも麺だから箸を止めるのに抵抗があり、聞きながらもボソボソ食べ続ける。
食べていると話が半分頭に入ってこないから聞き返したり質問したりする。しゃべりながら食べるから味がよくわからない…。


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で、うどんの感想は、ゆで置きだがしっかりコシがあって、太さ、よじれ具合、香りとも、これぞ武蔵野うどん、といったところかな。つゆは僕が食べた中ではいちばんの辛口だ。おろしたてのショウガが肉汁を引き立てる。


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武蔵野うどんの名づけ親、故 加藤有次氏の話題に。
小平生まれで前述の武蔵野手打ちうどん保存普及会の創設者にして“うどん博士”として知られた加藤有次 元国学院大学名誉教授と面識があったようで、おばちゃんは加藤先生と呼ぶ。エピソードを一つ。
加藤氏は自宅にうどん小屋を建てるほど研究熱心で、ときどき会員らにうどんを振る舞った。そんなとき、招待客は一人一人、15分刻みで訪問時間を指定されたという。
「時間に遅れたら、『おまえの分はない』と。最高の状態のうどんを食べさせたい、というのが先生の趣旨だから」

武蔵野うどん好きの人は、こちらのおばちゃんと話したら大いに盛り上がるだろうし、勉強にもなると思う。


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[DATA]
指田屋 水道道路店
東京都小平市天神町2-334





[Today's recommendation]


https://youtu.be/RYkL7K-5v7U


武蔵野うどんの原風景 【小平糧うどん】

2017.05.06

 散歩日和で、木陰の多い多摩湖自転車道を歩こうということに。まずは自転車で花小金井の無料駐輪場をめざす。昼ごはんに妻の希望はうどん。
小平ふるさと村の前を通る際に「小平糧うどん」ののぼりを発見。時刻は開店7分前。
ここでいいんじゃない? ということになる。


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小平市のホームページには、「小平ふるさと村では、武蔵野手打ちうどん保存普及会がJA東京むさしの協力により、小平産の地粉を使って『小平糧うどん』を毎週土曜・日曜日および祝日の昼食時に1日50食を限定に販売しています」とある。


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小平ふるさと村は江戸初期から明治期などの建物が移築・復元されている。
そのうち食事処として使われるのは「旧神山家住宅主屋」。

――この建物は江戸時代後期と推定される時期に、小金井から『廻り田新田』に移築されたものです。その際、間取りが広間型から喰違い四ツ間型に変更されました。したがって、江戸時代中期における武蔵野新田農家の特徴をとどめ、また後期にかけての移り変わりもよく示している建物です小平ふるさと村HP


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まず、旧神山家主屋の右の“水屋”前で前金500円×2を支払い番号札を受け取る。僕らは14番と15番。水屋とは「茶室に付属する、台所風の一角」(三省堂 新明解国語辞典)

主屋の土間を抜けて座敷に上がる。座敷2間に6人掛け座卓が5脚。
自分たちで14・15番目ということは開店時間前にしてある程度お客さんが入っているわけで、6人テーブルにゆるい感じの相席となっている。不思議なことに、すでに食べ終えている客が1組。


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まもなく水屋からさっきのレジのおじさんが岡持ちをもってやって来た。
この第1弾は番号1~4番の2組・4食分の提供。ここが1番ということは、さっき食べ終えて出ていった人たちは何だったんだろう?

この先かなり時間が空く。


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待望の第2弾は両手に岡持ちを引っ提げての登場。これで一気に15番の僕のところまで進む。
しかしこのおじさん、岡持ちからお盆に料理を移して各テーブルに運ぶまでの段取りが超マイペース。最後のわしらの手元に届くまでに10分近くを要した。麺だけに、人によってはハラハラするかもしれない。
しかしこういう時間がゆったり流れるような空間では、そんなスローモーな対応こそが適切に思えてくるから面白い。


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麺はコシがやや強く、武蔵野うどんにしてはつるっとした食感で、地粉の香りが立つ。
耳のおまけがうれしい。


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家庭でかつおだしをとったらこういう味になるというつゆに、具は油揚げ、ブナシメジ、エノキ。油揚げには豚肉に劣らぬうどんとの相性のよさを感じる。
糧は大根と小松菜。薬味はネギ。


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武蔵野手打ちうどん保存普及会の活動の趣旨は、地粉で手打ちうどんを打つ習慣を武蔵野の貴重な食文化として保存していこうというもの。プロでないからこそなおさら、ここの様式は武蔵野うどんの原点に近いものに感じられる。
江戸時代の古民家で武蔵野うどん、という貴重な体験であった。


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[DATA]
小平糧うどん
東京都小平市天神町3-9-1 小平ふるさと村
http://kodaira-furusatomura.jp/kateudon





[Today's recommendation]


https://youtu.be/WFD4jwBKD3A


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