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日本の天文学研究の中心 【国立天文台】

2023.09.24

 ようやく涼しくなりあらためて実感させられるのは3カ月くらい(暑すぎて)行動制限下に置かれていたという事実であり、誰かに弁償してほしいくらいなのである、ほんと。
休みの日にはどこか出かけなければ… という強迫観念に駆られるのも、その分取り戻さなければという損得勘定が働くせいなのだ。
しかしこの3カ月でガタ落ちした体力回復のリハビリから始めなければならないというもどかしさ。

とりあえず近場の気になるスポットとして、三鷹の天文台がある。
一般公開しているらしいということで、前々からお出かけ先リストにあがっていた。

涼しくなったことだし、リハビリも兼ねて自転車で行くというのはどうか… と、ふと思った。
この際、懸案の相方の自転車買い替え前記事参照)も兼ねたイベントにしてみてはどうか。
ということで、ネットで調べて近場でいちばん開店時間の早い自転車屋さんで自転車を買って、その足で「国立天文台 三鷹キャンパス」へ。

ちなみにNAOJほかによる“ブラックホールの「自転」”に関する注目のプレスリリースとこの記事の掲載日が重なったのは、もちろんただの偶然である。


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国立天文台は1888年、東京大学観象台、海軍省観象台、内務省地理局観測課天象部の三者が合併、海軍省観象台のあった東京麻布台に設置された。
都市化の進展により麻布付近は夜の灯火が増えて天体観測に適さなくなり、1924年に東京府北多摩郡三鷹村(現 三鷹市)の現在地に移転。
以後、都市化や施設の老朽化などにより最先端の観測の多くは機構内の他観測所へ移行されているが、当地はいまなお国立天文台本部キャンパスとして日本の天文学研究の中心的な場所であり続ける。


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施設自体は大正期から昭和初期にかけての近代建築として保存されるべき貴重な文化財が多く、三鷹キャンパス内の10件の建造物が国登録有形文化財となっている。


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門衛所(国登録有形文化財)

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正門右手の門衛所で記名すると「よく見えるところに貼ってください」とワッペンを渡される。
この門衛所自体が国の有形文化財であり、ワッペンもかっこよく、一気にテンション上がる。


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最初に訪れたのが第一赤道儀室。
こちらも国登録有形文化財。


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第一赤道儀室は三鷹キャンパスに現存する建物としては最も古く、1921年に建設された。


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1927年にドイツのカール・ツァイス社製赤道儀が設置される。
対物レンズは口径20cm、焦点距離359cmの色消しレンズからなり、速度調整機構付重錘式時計駆動という方式で動いている。
これは重力により赤道儀内のおもりが下がることを利用し、電気なしで最長1時間半の天体追尾が可能で、月や惑星、太陽など動く速さの異なる天体にも対応して追尾できるという特徴がある。


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床下のおもりの落下により駆動する追尾システム。おもりの巻き上げをやらせてもらった


こういったことを研究者(学芸員?)の方が丁寧に説明してくれる。

「電気をいっさい使用していない最先端の観測システムです!」


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1938年から1998年までの61年間、太陽黒点のスケッチ観測に活躍した。
老朽化により観測は三鷹構内の新しい太陽観測用望遠鏡のCCDカメラを用いた自動観測に移行しているが、いまなお太陽を追尾し続けている。
リアルタイムの太陽黒点を見たのは初めて。


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現時点(2023.09.24 11:40 JST)での太陽黒点


電気不使用の歴史的建造物ということもあり、研究施設というよりファンタジー的。
宮沢賢治の世界だったり、“ムーミン谷のおさびし山の天文台”だったり。


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宇宙科学もファンタジー文学も大好きな者としては、興奮のあまりこの第一赤道儀室でいっぱいいっぱい。
続きはまた近いうちに。


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※追記:これで完結のつもりだったが、気が変わって次記事に続きを掲載している。


[DATA]
国立天文台
東京都三鷹市大沢2-21-1
https://www.nao.ac.jp/
https://www.facebook.com/naoj.jpn
https://twitter.com/prcnaoj
https://www.instagram.com/naoj_pr/
https://www.youtube.com/user/naojchannel





[Today's recommendation]


https://youtu.be/M3yqo_jc3_c?si=yVLtyf_bs-PejdVX



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子午線標(北)


東京で貴重な国宝のある寺院 【普済寺】

2023.04.05

 R20日野橋五差路交差点から西にR16重複区間までの新奥多摩街道は自分的地図の空白地帯で、気になる案件がいくつかあるので下見に出かけてみた。
立川通りから新奥多摩街道に入るとすぐに下り坂で、モノレールをくぐり残堀川を渡る。
残堀川の多摩川への合流点に近く、対岸(左岸)は切り立った崖。
立川崖線である。


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JR中央本線のガードの手前から見上げる崖線の景色が絵になる。
崖上には寺院だろうか、趣ある建物と高い木々、城の石垣を思わせる法面ブロック積み、崖下の川沿いには桜並木。
ちょっとした景勝地風である。


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帰ってから地図で調べてみると、寺院の名前は「普済寺」。
さらに調べると、こちらはなんと国宝を所蔵する寺院なのであった。

東村山市民は“国宝”という言葉に敏感で、それは市内の正福寺地蔵堂が“都内唯一の国宝”と刷り込まれているから。
正確にいうと“都内唯一の国宝建造物”だが、2009年に旧東宮御所が国宝に指定され唯一の建造物ではなくなってしまい、いまは“都内唯一の国宝木造建造物”…

というのはおいといて、建造物に限らずとも多摩地区に国宝は少なく、武蔵御嶽神社の「円文螺鈿鏡鞍」および「赤絲威鎧」、深大寺の「釈迦如来倚像」、正福寺の「地蔵堂」、こちら普済寺の「石幢(せきどう)」と、4寺社所蔵の5件のみ。
とても貴重な物件であり、犬も歩けばナントカ… である。


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江戸時代の地誌『江戸名所図会』にも普済寺の記載がある。

――玄武山普済禅寺 日野渡口より此方の岸頭を、右へ十町斗入て、芝崎村と云ふにあり。此所を立川と云ふ。昔の郷の名なり今は小名となれり。済家の禅林にして、相州鎌倉の建長寺に属せり。開山は真照大定禅寺物外可什和尚と号す。……


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普済寺 境内に延文年間に制する所の六面の石塔を存せり
(斎藤幸雄 [等著] ほか『江戸名所図会』第2, 有朋堂書店, 昭2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1174144 (参照 2023-04-05))



さっそく翌日、普済寺に出かけてみた。


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参道入り口の巨大石灯籠。
参道を進むと右に鐘楼、左に焔魔堂、正面に楼門。
楼門をくぐると太鼓橋。
その向こうに重厚かつ荘厳な趣のある本堂…。


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文和年間(1352-1356年)、武蔵七党の一族で当時立川一帯を領有していた立川氏が鎌倉建長寺の高僧・物外可什禅師を招いて開山とし、居城の一隅に一族の菩提寺として創建されたのが普済寺とされる。

そしていよいよ国宝「六面石幢」、本堂の裏側にあるはずだが…


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がーん ( ̄▽ ̄;)!!ガーン

…というのはネタで、それは寺院ホームページで知ってたんだけど💦

せっかく行き当たった国宝だしそれも含めて記事にしたかったが、保存修理工事が来年3月までかかるというので国宝写真はWikipediaあたりから拝借しようかと検索してみると、近くの「立川市歴史民俗資料館」に石幢の原寸大レプリカが展示されているという情報が。

さらに翌日、立川市歴史民俗資料館へ。


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六面石幢レプリカは展示室の一角にドーンとそびえていた。
せいぜい腰位置くらいの大きさを想像していたが、大人の背丈ほどもある。
かなり驚いたので職員さんに聞いたところ、厳密に原寸大ということではないが、だいたい同じくらいの大きさとのこと。
立川市教育委員会HPによれば、高さ166cmほど。


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六面石幢は、阿形と吽形の仁王像、持国・増長・広目・多聞の四天王像を刻んだ緑泥片岩(秩父青石)の板石を六角の柱状に組み合わせ、六角形の笠石と台座で固定した石幢である。

👇のように、立川市教育委員会と普済寺で四天王の説明が違っている。
そこに『江戸名所図会』を並べてみると、さらに混迷の度を増す(笑)。


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資料館の展示プレート:増長 / 広目 / 多聞 / 持国 / 吽金剛 / 阿金剛
普済寺ホームページ: 増長 / 多聞 / 広目 / 持国 / 仁王吽 / 仁王阿


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普済寺境内六角古碑
(斎藤幸雄 [等著] ほか『江戸名所図会』第2, 有朋堂書店, 昭2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1174144 (参照 2023-04-05))



1954年にコンクリート製の覆屋が造成され、中尊寺金色堂のごとく手厚い保護のもとにあったが、新収蔵施設建設に伴う保存修理のため現在、拝観停止。


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普済寺は多摩川北岸の要衝の守護。
崖の上からの眺めは、昔はさぞ絶景であったことだろう。


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[DATA]
普済寺
東京都立川市柴崎町4-20-46
https://www.fusaiji.or.jp/





[Today's recommendation]


https://youtu.be/_AFU7qDitTc



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次号予告


大正時代へタイムスリップ 【旧石川組製糸西洋館】

2022.04.24

 コロナ禍で注目されるマイクロツーリズム… つまり近場観光だが、これがなかなか奥が深い。“観光”と肩肘張っていないから現場の意思決定が柔軟で、思いもよらぬ方向に展開したりする。

先日、狭山市の稲荷山公園に向かう途中、信号待ちの交差点でふと横を見ると外国風なオシャレな街並み。ひと目でピンとくるものがあった。
「ジョンソンタウン、こんなとこにあるんだ…」

という経緯で課題となっていた入間市のジョンソンタウン(米軍住居地域跡地)に行ってみることに。


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彩の森 入間公園


近くの「彩の森 入間公園」の駐車場に車を止めてぶらぶら歩いて行って、9時半すぎにジョンソンタウンへ。
まだ時間が早く、ひと気もなければ開いている店もない。
おかげでじっくり街並みを観察できたが、10時を回っても街が動きだす気配はない。
「困ったね…」


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ジョンソンタウン


実は出かける前に調べておいたことがある。
いつだったかテレビニュースで入間の洋館というものをやっていて、ジョンソンタウンから近いならそっちも見に行こうと考えた。“入間_洋館”で簡単にヒットするが、地図上では歩くには微妙な距離で、ちょっと無理かな… と。

ところがいま、時間はたっぷり余っている。
「行くだけ行ってみる?」


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駅側(後ろ側)の外観


朝にざっと見た地図の記憶では、洋館の場所は入間市駅の向こうの国道16号沿い。駅舎を通り抜けていくことに。
駅の階段下にポスターが張ってある。

旧石川組製糸西洋館(そういう名前だったのね…)
駅から徒歩7分(思ったより近い!)
4月の一般公開開催日は…(ん? 常設じゃないの?)
9日、10日 、23日 、24日(なに? たったそれだけ!? てか、今日は何日…?)

えーと、本日は4月24日。
セ、セーフ…。


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ということで、結果オーライ的に「旧石川組製糸西洋館」入場。
(ホント、いつも出たとこ勝負で… (・Θ・;)


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別館(内部は非公開)


――旧石川組製糸西洋館は、大正から昭和の初めにかけて全国有数の製糸会社であった石川組製糸により外国商人を招くための迎賓館として、いまから約100年前に建てられた洋風木造建築です。入間市HPより)

2001年に国の登録有形文化財となり、03年に入間市に寄贈され現在に至る。

ちなみに上記ジョンソンタウンはかつて、石川組製糸の工場で働く大人数の従業員の食料を生産する農場だったそうだ。


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以下、順路に沿って館内を見ていく。


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1階控えの間~応接室

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吹き抜けの階段と客室

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2階大広間

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大広間のステンドグラス

20220424 ishikawagumi-292階東・西和室

20220424 ishikawagumi-30西和室床の間

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大広間横の階段を下りると広い食堂に出た。


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こんな部屋で食事してみたい… と見回していると、“喫茶コーナー試営業中!!”のプレートを見つけ、思わずニンマリ。


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ホットコーヒーをお願いする。
スタッフの方は一般公開していない“キッチン”へ。


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飲食は人間の基本的な営みであり、家は人間の営みの場だ。
飲み食いをすることで単なる見学対象からリアルな“家”へと劇的に変化する。


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1杯の珈琲の香りが、大正浪漫の世界へといざなう。

(つづく)


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[DATA]
旧石川組製糸西洋館
埼玉県入間市河原町13-13
https://www.alit.city.iruma.saitama.jp/irumashiseiyoukan/
https://www.facebook.com/irumashiseiyoukan/





[Today's recommendation]

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https://youtu.be/nYsGn7Xeo40


https://youtu.be/sI4yCdNeikY


https://youtu.be/5MQyAymsviM


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次号予告


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