fc2ブログ

ちゃちゃっとクラシックコンサート!(後編) 【NHKホール】

2023.05.20

 前記事からの流れで、2日前に気まぐれにチケットを買い、自転車でフラッと出かけたクラシックコンサート。
何が言いたいかというと、こういうものに肩肘張らず普段着感覚で触れられる、いい時代になったなぁ… と。

僕はどこに行くにもジーンズだが、クラシックはちょっと前まで、ドレスコードとまではいかなくともジーンズでは確実に浮いていたはず。自転車で行く人なんていなかったんじゃないかな…(笑)。

まあ、文化的環境というか、東京圏だからこその地の利あっての行動スタイルではあるんだが。


20230520 nhk symphony-11

20230520 nhk symphony-12

20230520 nhk symphony-13

20230520 nhk symphony-14

20230520 nhk symphony-15


指揮者も奏者も超一流。
価格(E席1600円)との不釣り合い甚だしい。

パスカル・ロジェは現代フランスを代表するピアニストで、“フレンチ・ピアニズム”の系譜を引き継ぐ名手。

私的な思い出話で恐縮だが、某情報誌編集部に勤めていた30数年前、同じフロアにパーティションなしで映画雑誌の編集部があり、そっちの雑誌にクラシックCD紹介の小さい記事を書いていた。毎月1枚好きなCDを買ってきて原稿を作って領収書と一緒に提出するとCD代が返ってきて、原稿料代わりにそのCDをいただく… といったような取り決めだったと思うが、第1回目に取り上げたのがパスカル・ロジェ『プーランク・ピアノ曲集』。映画雑誌は正確にはフランスの映画雑誌の日本語版で、そんなところにフランス音楽の記事とか、いま思えば冷や汗ものなんだが…。

こうして実演に接するのは、なんだか不思議な感覚。


20230520 nhk symphony-16
開演前のホールの様子。※以下の動画はイメージであり、当コンサートとは関係ありません



[開演前の室内楽]N響奏者によるギィ・ロパルツの室内楽曲が素晴らしかった https://youtu.be/1Xi4-3pymqk


パスカル・ロジェによるサン=サーンス5番。N響定期前日(19日)のアンコールはこの動画と同じジムノペディ第1番だったそうだが、20日は同じエリック・サティでもグノシエンヌ第2番だった https://youtu.be/4PS-XWZVJgI


メインプログラムのセザール・フランク 交響曲ニ短調 https://youtu.be/st_D6J1B02Q


その30数年前のCDはいまも手元にあり、引っ張り出してみて驚いたのが価格で、なんと3500円!
今回のコンサート(E席)の約2.2倍もしている。
価格と内容の不釣り合いを感じるゆえんでもある。


20230520 nhk symphony-18
ギャラのパスカル・ロジェPf『プーランク/ピアノ曲集』(3500円)と、その3年前に買ったバーンスタイン指揮『フランク/交響曲』(同じく3500円)、合わせて7000円と、今回のコンサート4回聴いてお釣りがくる。今プログラムの5番を含むサン=サーンス/ピアノ協奏曲全集の手持ちCDもパスカル・ロジェだ


そのあたりの感覚も、いい時代といえばいい時代。
3記事前の博物館無料公開もそういうことだと思う。
万人向けということではなく、人それぞれに値ごろ感が得られるというか。


20230520 nhk symphony-17
※N響定期公演はカーテンコールの撮影OK


それには情報の取捨選択がますます重要となるが、一方でGoogleの検索がほとんど機能しなくなって久しい。
情報やAIとの距離感しだいで、生きやすくも生きづらくもなる世の中。


20230520 nhk symphony-19


[DATA]
NHKホール
東京都渋谷区神南2-2-1
https://www.nhk-fdn.or.jp/nhk_hall/





[Today's recommendation]


https://youtu.be/TqTcG5rIK0s



wachat230520-22.jpg


ちゃちゃっとクラシックコンサート!(前編) 【パークス代々木 野外ステージ前店】

2023.05.20

 先月、N響定期を聴きに行ってから、NHK交響楽団のニュースレター(メルマガ)が届くようになった。

5月17日(水)夜、5月定期公演の案内が来た。
日程を見ると5月19日(金)・20日(土)と、実に初日は2日後である。
こんな差し迫ってのメール配信ということはよほど売れてない…? と、興味本位に空席確認のページを開いてみると、たしかに空席はあるにはあるがそんなに余っているというほどでもない。
驚いたのが価格で、E席がなんと1600円である。

プログラムは、サン=サーンス/ピアノ協奏曲第5番、セザール・フランク/交響曲ニ短調。
指揮:ファビオ・ルイージ、ピアノ:パスカル・ロジェ。

なんで…?


20230520 parks-yoyogi-39


ファビオ・ルイージはウィーン交響楽団、メトロポリタン・オペラ、シュターツカペレ・ドレスデンなど重要なポストを歴任、昨年9月にN響首席に就任した注目の指揮者。
パスカル・ロジェは1971年ロン=ティボー国際コンクール優勝者で、フランス近代ものの第一人者。
なんで1600円? ┐( ̄∇ ̄?)┌

モヤモヤしたまま寝て起きて、土曜日なら行けるかも… となった。
問題は仕事で、来週月曜午前期日というのがあるが、思い切ってチケットを手配した。
E席(3階席)1600円。


20230520 parks-yoyogi-38


土曜日は自分1人のスケジュールなので、多少の無茶は利く。
ただし僕は電車がニガテで、1人で渋谷まで… というのが関門。

自転車で行ってはどうか…?
開演14時で終演は16時ころとして、片道2時間半としてもこの季節明るいうちに帰ってこられる。
それと、コストなんちゃら比というか、コンサート本体1600円に対し電車賃往復1000円ではバランス悪すぎ。
交通費等を削ってこそ1600円の価値が生きてくるというもの。



https://youtu.be/eC-l4yH4zmw


で、当日――
結局、金曜日までに仕事は終わらず、土曜の10時半まで頑張ってもやっぱり終わらず、もう月曜日でいいや…! と開き直り、渋谷まで26.5kmのチャリ旅へ。

10:40出発で、開場13:00にも余裕である。
問題は昼ごはんをどこでどうするか。
渋谷近辺の土地勘がないのと時間が読めないのとで、とっとと現地近くまで行ってしまいたい。
そういえば先月、NHKホール前の代々木公園内にキッチンカーがたくさん出ていたので、最悪それでもいいか。


20230520 parks-yoyogi-31


結局、食べるところを見つけられないままに代々木公園、12:50着。
しょうがないからキッチンカーで簡単に済ませるか… と横断歩道橋を渡ると、とんでもない光景が広がっていたのであった。


20230520 parks-yoyogi-32


「タイフェスティバル2023 代々木」だそうです ( ̄- ̄;) ンー

そういえば久米川「サワディー」さんのインスタ投稿で上がっていたか…。
まあ、タイ料理でもいいんだけど、この行列は無理でしょ。


20230520 parks-yoyogi-33


途方に暮れさまよっていると、行列のないブースがある。
ブースというか、都立公園売店「パークス」。


20230520 parks-yoyogi-34


通常のカウンターのほかに、店頭で焼きそばなどのパックを売っている。
これは本当に助かった。


20230520 parks-yoyogi-35


タイフェスど真ん中、パッタイならぬフツーのソース焼きそばを食すの図。


20230520 parks-yoyogi-36

20230520 parks-yoyogi-37


NHKホールは目の前にあるが、これからクラシックコンサートを聴きに行く人には絶対見えなかったと思う。

(つづく)


20230520 parks-yoyogi-40
後ろの建物がNHKホール


[DATA]
パークス代々木 野外ステージ前店
東京都渋谷区神南2-2-1





[Today's recommendation]


https://youtu.be/QAuCFrkH8rQ



wachat230520.jpg



20230520 parks-yoyogi-41
次号予告


穴場的ツツジの名所は…? ――吉野山園地

2022.04.29

 自分のInstagram投稿に“GW、泊まりがけはまだちょっとアレなので、毎日#近場観光 かな…”と書いている。
自宅を観光地の宿と見立てて名所を巡っているイメージかなぁ…

川越に続く2日目は、青梅の愛宕神社へ。

インスタのフォロイーさんの投稿で最近知ったんだが、こちらはツツジの穴場的スポット。
同じ青梅市のツツジの名所・塩船観音寺を訪れた3週間前にはまだ花には早かったので、ちょうどいいころかと思った。


20220429 yoshinoyamaenchi-1120220429 yoshinoyamaenchi-12


事前に調べたところ、このエリアは“吉野山園地”という名勝で、無料の駐車場もある。
その駐車場のすぐ横に立派なお寺さんがあるので、まずそちらにお参りに。


20220429 yoshinoyamaenchi-1320220429 yoshinoyamaenchi-14
即清寺山門

20220429 yoshinoyamaenchi-15
鐘楼

20220429 yoshinoyamaenchi-1620220429 yoshinoyamaenchi-17
本堂


即清寺は平安時代に神域の守護のため愛宕神社とともに創建されたとされる。
正面の山腹を歩けそうなので登り口に行ってみる“山内新四国霊場 第弐番”と書いてある。


20220429 yoshinoyamaenchi-18


あとで調べたところ、こちらの愛宕山には江戸末期の慶應年間、即清寺住職により山内新四国八十八箇所霊場が開創されたと。
その二番から三番の途中で挫折して早々に下山した軟弱なわしらって… ( ̄ω ̄;)


20220429 yoshinoyamaenchi-1920220429 yoshinoyamaenchi-20
二番と三番の間から見下ろす景色もすでに雄大


庭の手入れをしている女の方にお話を伺うと、「京都の景色に似ているらしくて、京都ということで撮影に使われたこともあるんです(笑)」と。
たしかに鐘楼などはかなり絵になると思う。


20220429 yoshinoyamaenchi-21


愛宕神社への裏のルートを教えてもらい、ぶらぶら向かう。
途中、「吉川英治記念館」の裏手にセッコクのような香りが漂っていて、気になってしつこくのぞき込んだがわからずじまい(記念館未訪問)。
お寺の女の方が「山が赤く見えますから」と言っていた愛宕山だが、残念ながら花の盛りは過ぎたもよう。

参拝は吉野街道の一の鳥居から。


20220429 yoshinoyamaenchi-2220220429 yoshinoyamaenchi-23
吉野街道に面した一の鳥居

20220429 yoshinoyamaenchi-2420220429 yoshinoyamaenchi-25
実相寺昭雄監督作品に出てきそうな二の鳥居

20220429 yoshinoyamaenchi-2620220429 yoshinoyamaenchi-27
三の鳥居

20220429 yoshinoyamaenchi-2820220429 yoshinoyamaenchi-29
愛宕神社の急階段を今年2回も登ったので、出世間違いなし?


20220429 yoshinoyamaenchi-3020220429 yoshinoyamaenchi-31


塩船観音とは同じ青梅市だが多摩川に隔てられだいぶ地域が異なるとはいえ、塩船ではまだほとんど咲いていなかったツツジが愛宕神社では散っている。
諸行無常と申しましょうか。

ムジョーに、ハラも減る。。。

(つづく)


20220429 yoshinoyamaenchi-3220220429 yoshinoyamaenchi-33


[DATA]
吉野山園地
東京都青梅市柚木町1丁目





[Today's recommendation]

wacha220429.jpg




https://youtu.be/OkAe0xmvczI


ずっしりお得なミックス弁当 【いとう屋 本店】

2019.02.16

 土曜日。ときどき家族の予定がややこしい。
11:30~13:30、14:30~と埋まっているので、昼ごはんは狭間の1時間で食べることになる。
慌ただしいので弁当を買うことにする。


190216 kitayamkoen-11


午前中、自分は久々に余裕があるので(時間というより気持ち的に)、散歩に出かけたい。
東村山駅から西に向かい松林庵観音堂を右折、シチズングラウンド脇を前川沿いにさかのぼり突き当りを左岸へ移動、住宅街を少し戻ってそば屋「喜作」の裏からバス通りへ抜け、野口町二丁目交差点を左折。正福寺の西を下り、日本茶カフェ「茶 かわせみ」の前を通って北山公園へ。


190216 kitayamkoen-12190216 kitayamkoen-13
190216 kitayamkoen-14


これは予想外のコース取りで、途中前川で相方がカワセミを見かけたことから、じゃあカワセミ探しに北山公園行こうか? となった。
残念ながらカワセミは見つからなかったが、野鳥の声や冬枯れの八国山にもどことなく春の気配が感じられる。


190216 itoya-34


帰る道すがら弁当を買えるお店を探す。
うどん弁当の「きくや 駅前店」に行ってみると開店11時で、まだ30分ほどある。11時ころまでには帰宅していたいので、ちょっと厳しい。


190216 itoya-33


ふらふら迷っていると… というかたしかフェア期間中だった気がする「なごやか文庫」に向かうという迷走の途中、「すし・和菓子司 いとう屋」の庇が目に留まる。
20年くらい前にはご近所さんなどもよく買っていて名前を聞く店だった。周りもみんな子どもが小さく、休日の昼ごはんに使われていたんだろうと思う。


190216 itoya-55190216 itoya-56


久しぶりに店先をのぞく。
いつもぱらぱらとお客さんがいる印象だけれど、今日も何組か注文しているところだった。


190216 itoya-53190216 itoya-54


ミックス弁当350円×3、山菜いなり75円×3を購入。
和菓子もおいしそうなので、ひがっしーどら焼き 抹茶あん・つぶあん(各120円)を1個ずつ買う。
「どこで作ってるんですか?」と相方が聞くと、「売っているものは全部ここで作ってるんですよ」とおばちゃん。

ずっしりと重たい袋。ごはんがたっぷり、正直に作っているんだと思った。だからお客さんがしっかり付いているんだろう。


190216 itoya-51


「福祉作業所 なごやか文庫」(東村山市諏訪町1-3-10)では初売り大古本市が開催されていた。福祉施設の運営のこちらでは、寄付された本やCD、レコードが売られている。今日は半期に1度の蔵出しフェアといったところで、案外掘り出しものがあったりして楽しめる。
『Richter & Oistrakh Franck / Brahms: Violin Sonatas』を200円という破格で購入。
*社会福祉センター大規模修繕のため「なごやか文庫」営業停止(2019年2月18日~11月30日予定)


190216 itoya-57190216 itoya-58


お弁当の稲荷は甘くしっかりした味付けで、昔ながらの味を感じる。


190216 itoya-20


おにぎりの具はさけ。
お赤飯がついてうれしい。


190216 itoya-59


午後の間ずっとフランクのヴァイオリンソナタ第4楽章がイヤーワームしていた。


190216 itoya-32


[DATA]
いとう屋 本店
東京都東村山市諏訪町1-3-27





[Today's recommendation]

wachat190216-111.jpgwachat190216-222.jpg



Franck Violin Sonata 222
『Richter & Oistrakh, Franck: Violin Sonata / Brahms: ViolinSonata No.3』
https://youtu.be/Vnbps8Q-Yc8


https://youtu.be/wLhQhRc9mZk


海馬を刺激する甘辛麻婆とVnソナタ 【秀永】

2018.12.01

 「さくらい」「中野大勝軒」に続く青春探訪シリーズ第3弾。
「懐かしい…」と思い出されるのは1980年代の出来事が多いが、これらのお店に通っていた年代も「さくらい」が80年代前半、「中野大勝軒」が後半。
今回取り上げる「秀永」は80年代初頭と、これまででいちばん遠い記憶となる。
ただし、高田馬場のこの店にはたぶん1~2回しか入っていない。僕がもっぱら使っていたのは早稲田にあった店。


181201 shuei-19
地下鉄早稲田駅前交差点。左端の緑の店のあたりに「秀永 早稲田本店」があったように思う。奥の木立は穴八幡宮


地下鉄早稲田駅2番出口を出て、大学に向かう人波と反対方向に進んですぐ。夏目坂の上り口に「秀永 早稲田店」はあった。
この“人波と反対方向”というところがポイントで、駅チカなのに隠れ家感がある。学生のたまり場的雰囲気も薄く、1人のときにコソコソ利用した。
意外だったのは、こっちが本店だったらしいこと。ずっと馬場のお店の早稲田支店だと思っていた。2010年に閉店したらしい。


181201 shuei-12


ということで、現存の「秀永 高田馬場店」へ。
早稲田通り沿い、早稲田松竹の向かい。
ラーメン激戦区・高田馬場にあって最古参の部類じゃないかと思われる。


181201 shuei-13


とりめし、ほんこん飯という“のっけライス”がこの店の人気筋だが、学生時代、僕はそれとは違うもの一点勝負だった。
それが麻婆麺。

田舎から上京してきたばかりの少年は、ラーメンと麻婆豆腐という好きなものどうしを合体させたメニューに出会い、東京って素晴らしい! と感激したという w ( ̄△ ̄;) w オオッ…


181201 shuei-14


店頭のサンプルケースにそういう品は見当たらなかったので、ちょっとドキドキしながらメニュー表で探す。
ありました。麻婆らーめん700円。


181201 shuei-15


先客3組4人、後客3組6人、客層は幅広く、活気がある。
炒飯やほんこん飯、おすすめの定食… と、オーダーもけっこう幅広い。


181201 shuei-55


さて、麻婆らーめん。
第一印象は、器でかいな…。昔、こんなに大きかったか…?


181201 shuei-20


でもこのシンプルなルックスには見覚えがある。ほぼ茶色。
そりゃそうだ。
木綿豆腐以外に、具はひき肉のみ。ネギやシイタケの青みや黒みはなく、唐辛子片の赤がちらつく程度で、ほぼ茶色。


181201 shuei-21-2


とろみは緩めで、しょうゆベースのスープと餡がすぐになじむ。麺は中くらいの太さのほぼストレートで、モチッというかみ応え。
ラー油と豆板醤の辛みはけっこう強いが、花椒のしびれ感はない昔の和式マーボーである。


181201 shuei-22-2


甘さが懐かしい。
覚えていたのではなく、思い出した。


181201 shuei-18-3


この街にはいろいろ思い出がある。
卒業式をさぼって時間つぶしに入った早稲田松竹で、コンタクトレンズを入れてなくて『明日に向って撃て!』の字幕が読めなかったこと、その隣の名曲喫茶「らんぶる」ではセザール・フランクのヴァイオリンソナタをかけてもらったこと…。
今日のように、これから先も、もうちょっと思い出すことがあるかもしれない。


181201 shuei-11


[DATA]
秀永
東京都新宿区高田馬場2-8-5





[Today's recommendation]

wachat181201-22.jpg




https://youtu.be/VXF_gnEwEvQ

ちなみにアンネ=ゾフィ・ムターは前記事のアンドレ・プレヴィンの元奥さま。年の差、実に34歳!


30年ぶりの営業再開 【とん亭】

2018.07.02

 東村山市役所の東側の道を空堀川のほうへ下り、本町商店街のかつての中心街を天王橋に差しかかる手前、現役のたべもの屋でいうと「昭和軒」「木村屋」「亀屋」と続いて家並みが途切れる。
その端っこの「亀屋」よりさらに川っ縁に、春ごろから建物の建設が始まった。


180702 tontei-55180702 tontei-56
ちょっとわかりにくいが、春先にはまださら地だった(左、自販機の後ろ)


亀屋の裏庭ぐらいにしか見えない狭い敷地で、はじめ物置き程度の掘っ立て小屋としかみていなかったが、あるとき散歩の途中にできあがりつつある物件をのぞいていた相方が、「カウンターみたいになってる」と言う。
こんなさびれた商店街の端っこに飲食店の新築は考えにくいが、やがて立派な無垢一枚板の看板が掛かった。
「とん亭」と書いてある。どうやら、ちゃんとした飲食店のようだ。


180702 tontei-11


しかし、とん亭の“とん”が“豚”なら豚肉料理か豚骨料理ということになるが、時流からして豚骨料理すなわちラーメン屋の公算が大きいだろう、と、まだ他人事のような反応。
最近になって「“とんかつ”とん亭」の張り紙を見るに至り、「これはナニゴト!?」と、ようやく正面から向き直ろうとしていたところである。


180702 tontei-58180702 tontei-59


今日の昼、川沿いを天王橋に向かっていると、「とん亭」からワイシャツ姿が数人出てきた。
不動産会社の物件引き渡し? とか思ったが、どうも様子が違う。
店頭には生花が飾られ、よく見ると“営業中”の札がかかっている。


180702 tontei-57


“近日開店予定”の張り紙からトントンと急だったので驚きはしたが、「あ、やってる」くらいの感覚で、そのまま店の横のアンダーパスを抜けようとした。

アンダーパスに面したサイドの壁に“7月2日開店”の張り紙。
え、7月2日って、今日?
今日というか、ついさっき開店しましたって感じ?


180702 tontei-60180702 tontei-61
左は6月29日撮影


オープン当日のお店に入ったことはないし、今後もそんな機会はめったにないと思う。
このチャンスの逃す手はないんじゃないか?
いったん久米川駅の南口側に抜けたものの、そんな気持ちが膨らみ、踏切を北口側に戻り地下駐輪場に止めて天王橋のほうに下った。


180702 tontei-62


お店の人はご夫婦かな、60代くらいのあたりの柔らかい男女。
店内はカウンター4席と、意外にもテーブル席のスペースもあり、2人用2卓で先客はそちらに2組4人。2階への階段もあり、10畳ほどのスペースの使い道を検討中とのこと。

ランチメニューからロースカツ定食850円を注文。


180702 tontei-63


定食は、みそ汁、お新香、冷ややっこが付いてバランスがよい。
コスパもよい。


180702 tontei-66180702 tontei-67


カツは小ぶりで、やや揚げすぎ感があるが、ロースの脂身の甘さが際立つ肉質のよさを感じる。脂だけでなくどの部分も良質の甘味が広がるとてもおいしいトンカツだ。
実は僕が入った時点でご飯を切らしてしまっていて提供に少し時間がかかったが、おかげで炊きたてのおいしいご飯をいただけた。


180702 tontei-68


少しお話をさせていただいて驚いた。
こちらの店主は以前同じ場所でトンカツ屋をやっていて、本日、実に30年ぶりの“営業再開”なのだという。


180702 tontei-64180702 tontei-65


「さ、30年ですか…!?」
「そうなの、30年(笑)」とおばさま。「まだ生まれてなかったんじゃない?」

え…?
“30年前+生まれていない= ”
に、20代に見られたと?
うーん、あまりにすさまじい誤差(笑)。

こちらのおばさま、30年ぶりに動きだした時計のゼンマイがまだ本調子じゃないのかも。
現在と過去の時の刻みが入り乱れて、目の前のおっさんの30年前の姿がチラついていたりして…。


180702 tontei-16


30年前といえば、まだ昭和。ほぼ平成いっぱい“旅”をして帰ってきたということ。
その間、いろんなドラマがあったに違いない。
“昭和食堂本日開店”または“30年ぶりの営業再開”
――図らずも奇跡のような瞬間に立ち会っていたのかな…。


180702 tontei-13


[DATA]
とん亭
東京都東村山市本町4-2-13





[Today's recommendation]


https://youtu.be/6aeXNP2p47c



chat180702-22.jpg


再開発特需の定食屋 【だるまや】

2017.03.18

 妻が国分寺のリサイクルショップに行くというので自転車で同行。
昼ご飯に妻は「フジランチ」をまず候補に挙げたが、二日酔いの僕は揚げ物はきつい、量も多いという理由で却下。それでいろいろあって「だるまや」になった。

揚げ物きつい、量問題… はどこいった?
しかも頼んだのがトンカツ定食と若鳥の唐揚げ定食って、この人たちは何をやっておるのだろう。


darumaya21.jpg


この店は女性だけで運用されているようだ。厨房におばちゃん2人、ホールにアルバイト風おねえさん。
8人テーブルに男子学生風8人、なぜか全員コカ・コーラ レギュラー瓶を飲んでいる。150円とサービス価格だ。いまどきの若者がレトロ感を演出してる。内装も相当年季が入っている。


darumaya22.jpg


出てきたお盆を見てわれに返った。
トンカツが分厚い、ご飯が多い、唐揚げが数えきれない。ついでにみそ汁が具だくさん。大根、にんじん、油揚げ、ワカメ。僕は確認できなかったが、サツマイモも入ってる、と妻。
いつものように、まずわしの茶わんに自分のご飯を移すかーちゃん。半分ぐらいはくれたから、僕の茶わんはものすごいことになった。家で食べる1食分の3倍はある。唐揚げも3~4個くれる。


darumaya28.jpg


これは休んだらアウトだ、と気合を入れて急ピッチで食べ進めた。ご飯がやわい。トンカツの衣が異様に厚い。カリカリの下のしっとり部分が分厚い。腹にずっしりくる。
もうすぐフィニッシュというところで箸が止まる。キャベツがのどを通らない。いつもはそんなにかけないソースをダバダバにしてなんとか口に押し込む。


darumaya25.jpg


妻の様子を見て愕然とする。ご飯が減ってない。っていうか、わしの茶わんに半分よこしたところから事態が進展しているようには見えない。
「全然食べてないじゃん」
「食べてるよ!」
焦りからいらだつ2人。
12時近くになって店は混んできていた。はじめ学生だけだった店内は、気がつけば肉体系に占領されていた。

そうなのだ。ここは北口再開発の大事業の現場と目と鼻の先。「土方さんは鼻が利く」とかーちゃんはよく言う。うまい・安い・多いのこういう店を肉体系は見逃さない。以前、日本橋の中華屋で同じような状況に遭遇した。あれは高島屋裏の再開発工事だった。


darumaya26.jpg


この先、バイトちゃんには荷が重く、おばちゃん1人ホールに出動してきて交通整理を始めた。どんどん詰めさせて相席させていく。これが徹底している。1席たりとも空きを許さない勢いだ。
われわれの狭い4人掛けテーブルにも当局の手が及ぼうとしていた。

かーちゃんの状況は一向に好転しない。唐揚げ5~6個残っている。わしはもういっぱいいっぱいだ。
隣の4人テーブルの2人組に強制執行がかけられた。

僕は観念しておばちゃんを呼び止めた。
「ラップもらえますか?」


darumaya27.jpg


唐揚げ5個お持ち帰り。食べ残しを持ち帰るのは初めてだが、せっかく作ってもらったものを残すわけにはいかない。
僕らと入れ違いに、後から後からお客さんが入っていく。いままさに特需が起きている現場なのであった。

唐揚げは晩ご飯に食べた。冷めてもおいしかった。


darumaya23.jpg


[DATA]
だるまや
東京都国分寺市本町2-9-8







https://www.youtube.com/watch?v=2OadepLbsqc


Latest Articles
ラーメンと幸せの距離感 【九州ラーメン いし】 Jun 02, 2023
至れり尽くせりな酒蔵ツアー 【石川酒造】 Jun 01, 2023
第1回? 玉川上水ウォーキング🚶‍♀🚶‍♂ 【下の川緑地せせらぎ遊歩道公園】 May 30, 2023
トーホクの車窓から 【駅弁屋 旨囲門 ecute大宮】 May 28, 2023
80’s tasted 吉祥寺ブランド 【レモンドロップ 本店】 May 27, 2023
価値観の混迷する時代に 【天下一品 吉祥寺店】 May 26, 2023
衰え問題と中盛り問題と… 【ラーメンショップ YAMANAKA】 May 25, 2023
ちゃちゃっとクラシックコンサート!(後編) 【NHKホール】 May 23, 2023
ちゃちゃっとクラシックコンサート!(前編) 【パークス代々木 野外ステージ前店】 May 22, 2023
ポストコロナのカオス 【昇龍】 May 21, 2023
国際博物館の日 【国立科学博物館】 May 19, 2023
吉祥寺の隠れ家料理店 【うな鐡】 May 18, 2023
Ranking
          
          
Category
Category-2