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門前の繁栄の面影 ――巌殿観音参道

2023.07.30

 不要不急の外出は控えるようにと言われても、熱中症よりも家に閉じこもらされることのほうに危険を感じるワタシ。
家は小さく狭い。
閉所恐怖のケがある ( 〃 ̄ω ̄〃ゞウーム

1週間前はまだマシだった。
栃木県佐野市に出かけた7月23日、家から最寄りのアメダス練馬観測所の最高気温は34.2℃と、なんとか猛暑日を免れていた。
翌24日の35.7℃以降、連日このありさまだ。

出遅れたら家に閉じこもらざるを得なくなりそうで、Googleマップで必死に脱出先を探すワタシ。

東松山市に巌殿山正法寺(通称:岩殿観音)という寺院があり、その東方に延びる道に“巌殿観音参道”というピンが立っている。
ピンが立つ参道というのもなかなか珍しい。

――仁王門から東にまっすぐに延びる表参道の両脇には家が建ち並んでおり、かつての正法寺と門前町の繁栄の面影を残している…「正法寺 (東松山市)」Wikipediaより、最終更新 2022年12月12日04:15)

参道、門前、繁栄、面影… といった連想ワードに弱い。
Googleマップの写真を見ると緑豊かな山寺という風情で、涼しげでもある。


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県道343号岩殿岩井線からトンネルを抜けて観音堂へ下る裏参道。トンネルの上に駐車場がある


岩殿観音正法寺公式サイトには丁寧かつわかりやすい交通アクセスの説明があり、裏参道側の駐車場へ。
駐車場脇のトンネルをくぐって少し下ると観音堂。
その先の石段上からの眺めが素晴らしい。


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山門(仁王門)越しに表参道をはるか先まで望むことができる。
ここはやはり正式なお参り順を踏まねばなるまい。


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ということで、表参道入り口の惣門橋へワープ。


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ここから仁王門まで約630m。


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――…門前町の繁栄の面影を残しているが、実際に商店の建物のまま残っているのは丁字屋旅館(江戸時代から昭和初期まで営業していた)と向かいのうどん屋(2000年頃に丁字屋が運営していた)のみである。(Wikipedia)


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――門前通り:岩殿観音の表参道。かつては六十六の僧坊が並び、その後は門前町として栄えた。軒に掲げられた屋号は明治期のもの。(岩殿観音正法寺公式サイト)


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商店や宿坊の面影はほぼ残っていないが、軒に掲げられた表札の屋号から各家のかつての生業が知れ、寺院と門前町の往時のにぎわいに想像を巡らせることができる。


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正法寺“四万六千日(しまんろくせんにち)”の縁日に当たる8月9日、門前町の各戸が灯籠を奉納する「岩殿とうろうまつり」が催される。


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かつて縁日にはそうやって参道に灯籠が灯されていたといい、15年前から岩殿自治会により“復活”開催されている。
四万六千日に参拝すれば一生分の御利益があるとされ、とうろうまつりは多くの参拝客でにぎわうそうだ。

夏の夕べ、訪れた人を幽玄の世界へといざなう。


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表参道のいちばん奥、唯一かつての建物のまま残されているという「丁字屋」


それにしても暑い。
夏の夕べならともかく、炎天下の門前巡りは、幽玄ならぬ朦朧の境地。
この日全国の最高気温は埼玉県鳩山町の39.6℃。
ここは東松山市だが、裏参道駐車場から200m足らずで鳩山町なのであった😅

(つづく)


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仁王門


[DATA]
巌殿観音参道
埼玉県東松山市岩殿1473





[Today's recommendation]


https://youtu.be/YoMRp3P8d_g



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次号予告


お供つかまつる ――関東ふれあいの道~杉の木陰のみち

2023.07.02

 例によって朝起きてから行き先を決め、バタバタと出発。
本当は山登りでこういうのはよくないが、何度か計画したことがあって天候条件で実現できていない案件で、いろいろシミュレーションはできているので問題ないと思う。

コースは関東ふれあいの道(首都圏自然歩道)の東京都コース⑥「杉の小道のみち」。
秋川の支流・養沢川から上り、多摩川の御岳渓谷に下る。
同じ関東ふれあいの道の埼玉県コース②「奥武蔵の古刹を訪ねるみち」で体感した分水嶺を越えるダイナミックな感覚にハマりつつあるのかも。

バタバタしたのは電車とバスの時刻調べ。
コース起点はあきる野市の上養沢バス停で、行き先を決めた時点(7:30ころ)で間に合いそうないちばん早い便が武蔵五日市駅9:35発。
逆算すると東村山駅発が、えーと… やばっ!


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シロートの僕らは事情に疎く、武蔵五日市駅を降りてのんびり向かったバス停はすでに登山客風の長い列。
バス会社職員が臨時便に誘導したりして僕らの列はだいぶ短くなって、まあ座れないことはないだろうと思っていたが、来たバスがチョー小さい。


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結局、31のバス停のうち21番目の「秋川国際マス釣場」まで僕一人、座れずにいたのであった (ーー ;) ウーム


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上養沢は終点で、バスを降りれば別天地。
ここ、本当に東京都ですか? 、( ̄▽ ̄)V


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しばらく舗装道路を上る形だが、車の通行はほとんどなく、並行して流れる養沢川のせせらぎの音に身を委ねる癒やしのひととき。


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地図の目印になっている分岐点のトイレ(柿平園地便所)を使ったあと、周辺の写真を撮っていると、女子トイレのほうから相方の切迫した声が…!


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ヘビでも出たか!? と慌てて駆けつけると、相方の足元にでっかい鳥がいる。
はじめキジかと思ったが、近寄ってみるとヤマドリである。


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野生のヤマドリを見るのは初めてかも!
興奮冷めやらぬまま分岐先の山道に踏み込み、さっきのヤマドリどうしただろう… と周りを見回すと、なんと目の前にヤマドリ君。


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その先ずーっと、僕らの前に後ろに、右に左にと、ヤマドリはお供してくれたのである。
理由は知らないが、イヌとネコ以外にここまで人に慣れている生き物を初めて見た。


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だいぶ上って、ヤマドリがいないな… と思って振り返ると、下のほうにうずくまってこっちを見てる。
もう少し上って振り返っても、同じ場所にいる。
サヨナラを言ってる気がした。

その光景が忘れられない。


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養沢鍾乳洞(閉鎖中)手前の橋で左に折り返してからはやや上りがきつくなる。


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次に右に大きく折り返す石組みの階段は、鬼の城のごとき堅固な要塞を思わせ、下から見上げてけっこう怖い。
ヤマドリ君が先導してくれれば心強かったかも。

――長野県に伝わる「八面大王」という鬼を坂上田村麻呂が退治する物語では、「三十三節あるヤマドリの尾羽で矧いだ矢で無ければ鬼を退治出来ない」という描写がある。「ヤマドリ」Wikipediaより、最終更新2022年12月8日00:53)

ヤマドリは僕らの目には見えない鬼(災厄)を追い払ってくれていたのかもしれないな…。
今度行くときはきびだんご持っていこう。
…それはキジか💦


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さらに少し上って、ようやく上のほうが明るくなってきた。
この間、ヒトには一度も会っていなかった。

(つづく)


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[DATA]
柿平園地
東京都あきる野市養沢





[Today's recommendation]


https://youtu.be/cDkpf4GgRDg


https://youtu.be/5XoauIbRwzk


https://youtu.be/hwmRQ0PBtXU



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次号予告


一日楽しめる巨大ミュージアム 【東京国立博物館】

2022.11.19

 朝のニュースで面白そうな展覧会のことをやっていた。
週末、さっそく行ってみることにした。
場所は上野。

例によって概要をろくに頭に入れずに現地へ。
国立博物館? 科博と違うの?


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「東京国立博物館」は、上野公園中央通りを上って大噴水の先の信号を渡ったところ。
「国立科学博物館」はその手前の右手。
“科博”と“東博”は道を挟んで斜向かいの位置関係にある。


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1872年創立で、現在、創立150年記念特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が開催されている。
雪舟「秋冬山水図」、菱川師宣「見返り美人図」、尾形光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」… と、美術愛好家垂涎の目録であるが、今回の目的はこれにあらず。
同じく“国宝”を冠する展覧会だが、国宝は国宝でも…。

というように、同時並行的に多くの催しが行われている巨大ミュージアムである。


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まずは博物館の概要。

――1872年、東京・湯島聖堂大成殿で開催された博覧会。東京国立博物館の歴史はここからはじまりました。文化財を収集し、調査し、そして修復する。その成果を展示を通してご観覧いただき、教育に活かし、みなさんに触れていただくことで、文化の保護と継承を続けていく。これが私たちの使命です。「東京国立博物館とは」


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本館

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東洋館

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表慶館


公園の大噴水池と対をなす池を囲んで、正面に本館、左右に表慶館東洋館がシンメトリーに配置されている。
本館の左うしろには続きとなっている平成館、表慶館の背後に法隆寺宝物館、道を挟んでその向こうに黒田記念館
主要展示施設は以上6つ。


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平成館

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法隆寺宝物館


本館の後ろには古民家を備えた庭園。
レストラン2店、カフェ1店。


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庭園

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東洋館にあるレストランとカフェ


とにかく展示品が多く、いくつもの企画が併設されているので、何を見てるんだか途中でわからなくなる ゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ

本館に入って最初の「近代の美術」という企画は一応ちゃんと見た。

――明治・大正の絵画や彫刻、工芸を中心に展示します。明治5年(1872)の文部省博覧会を創立・開館のときとする当館は、万国博覧会への出品作や帝室技芸員の作品、岡倉天心が在籍していた関係から日本美術院の作家の代表作など、日本美術の近代化を考える上で重要な意味を持つ作品を数多く所蔵しています。これらによって明治、大正、そして昭和にかけての日本近代の美術を概観します。「近代の美術」


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下村観山「白狐」

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土田麦僊「明粧」

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3代德田八十吉「燿彩鉢」

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海野清「埃及猫置物」

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初代魚住為楽「銅羅」

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高村光雲「老猿」(重要文化財)


これは、本館・平成館の膨大な展示のほんの序の口。
このまま写真を張っていってもとりとめがなくなるだけなので、以下ざっくりと。


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突線鈕3式銅鐸(平成館「日本の考古~弥生時代の祭りの道具―銅矛、銅剣、銅戈と銅鐸―」)

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慶長大判・慶長小判・慶長丁銀(平成館「日本の考古~掘り出された江戸の金貨」)

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根付 高円宮コレクション(平成館 企画展示室)

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金銅灌頂幡=レプリカ(法隆寺宝物館)

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庭園 九条館

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黒門(重要文化財)


さて、これら貴重な文化財を差し置いても見てみたいと思わせるものがある(と僕が思った)展覧会とは?

(つづく)


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[DATA]
東京国立博物館
東京都台東区上野公園13-9
https://www.tnm.jp/
https://www.facebook.com/TokyoNationalMuseum
https://twitter.com/TNM_PR
https://www.instagram.com/tnm_pr/





[Today's recommendation]


https://youtu.be/8mTiw3TQ2BI



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https://youtu.be/WFI3a2xZAD0
次号予告


掘り出されたタイムカプセル 【かつ秀】

2017.03.27

 1月にふらっと入ってとても気に入った店。
いつの時代の建造か、店内のつくりの古さは相当で、その時代のまま残っている感じ。そういう場所へ踏み入ると、一瞬クラッとくる。その感覚が僕は好きだ。
この店は掃除が行き届いており、テーブルやカウンターはピカピカに磨き上げられている。クラッときてピカッとなるのはもっと好きだ。


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外観、店内の状況から予想されるとおり、この店も高齢のたぶんご夫婦で回している。おとうさんは寡黙な職人タイプで、おかあさんは話し好き。
このおかあさん、ラジオのニュースの項目一つ一つにご自身の見解をもっている。トランプ次期大統領、トヨタ自動車からマニー・ラミレスまで、いちいち何か意見を言う。すごい博識、というか好奇心の強い人なんだと思う。おとうさんも別にうるさがるでもなく、ときどきニコニコと相づちを打っている。
こうやって何十年もこの小さな店を2人仲よく切り盛りしてきたんだろうな。


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ニュースが終わって次の番組のテーマ音楽が流れだした。
『ひるのいこい』
えっ… まだやってたの? 懐かしすぎでしょう。
あとで調べたら昭和27年放送開始だから65年番組だ。テーマ曲も変わらず。


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古関裕而作曲のこの曲が素晴らしい。
ちなみに同様に昭和の農村風景を想起させる名曲『新日本紀行』後期のテーマ曲(冨田勲作曲)は昭和44年だから、それよりさらに17年さかのぼった曲想ということになる。
このお店にして、この曲。その偶然の一致はほとんど奇跡に近い。鳥肌ものの体験をした。

――ここまでが1月の話。


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そのとき食べたロースかつ定食1000円がおいしかったので今回もそれにした。チキンかつという手もあったのだが、ロースかつで『東京とんかつ会議』の基準で採点してみようと考えたのだ。
このお店は肉、ご飯、お新香が秀逸と前回感じたが、今回もその感想は変わらない。


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〈採点〉 肉3、衣2、油1、キャベツ2、ソース2、御飯3、新香3、味噌汁2、(特記:ポテトサラダ3)の計21点。

山本益博氏採点の高田馬場「成蔵」上ロースカツ定食と並んでしまった(笑)。


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[DATA]
かつ秀
東京都東村山市萩山町1-2-3





[Today's recommendation]


https://youtu.be/pE-MaH03k0E


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